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【介護予防の目的】予防方法と介護予防サービスの種類

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「この頃、台所にずっと立っているのが億劫」「食が細くなった」
それは、体や口が衰えてきているサインかもしれません。

要因にもよりますが、徐々に介護の状態に移行するケースもあります。
介護のお世話になるのは、まだまだ、先…
そう思いがちですが、元気なうちから介護の予防をする心がけが大切です。

この記事では、介護リスクを早期に把握するチェックリストや予防方法と、介護予防サービスについてご紹介します。

【目次】
1.介護予防とは?
2.要介護までの3ステップと予防の考え方
3.早期発見に役立つチェック項目
4.生活中で取り入れられる介護予防
5.介護予防のサービス
6.まとめ

介護の予防とは?

元気な人は、その健康を維持すること。そして、要介護の人は介護度が上がらないように取り組むことを介護予防といいます。

自分でできることは可能な限り自分で行い、住み慣れた環境で自立した生活をする。
そして、もし介護が必要になっても進行を食い止め、改善を目指すこと。

これが介護予防の目的です。

急速な高齢化社会を迎え、介護保険の利用が急増している中、介護予防の必要性は年々高まっています。

介護予防には、「健康なうちから健康寿命を伸ばす取り組みをすること」と「サポートが必要になっても制度を利用して、介護度を改善・維持すること」の2本柱が必要です。

つまり、本人自身でも健康でいるための意識や行動と、要介護の状態になってもリハビリや保健福祉の制度を進んで利用する意識も求められているのです。

この記事では、家で実践できる健康づくりの取り組みと、制度を利用して介護予防を図る取り組みについて説明していきます。

要介護までの3ステップと予防の考え方


高齢者は、いくつかの過程を経て要介護状態になることが分かっています。
そして、それぞれの段階ごとの対策をとることで現状悪化を防ぐことができると考えられています。

一つずつ見ていきましょう。

まず最初に、健康な状態があります。
自分の力で日々の生活を送っている状態です。
散歩に行ったり、趣味の集まりに参加するなどの健康づくりと、生活習慣に気を付けて病気や体の衰えを未然に防ぐ段階です。

次は、認知機能の低下や体が弱くなり、生活に支障が出始めている状態です。
要介護や病気の一歩手前の段階で「フレイル」とも呼ばれる段階になります。
病気をはじめ、生活能力や身体機能の低下の早期発見と早期対応が重要な段階です。

最終段階では病気の発症や、認知機能、心身の機能低下によって要支援・要介護の状態に至ります。
生活の工夫や、制度を利用して介護状態の維持と改善を目指す段階です。

注意すべき兆候が分かれば、その分、早期介入ができますね。

以下に、その兆候を知る手がかりを説明していきます。

早期発見に役立つチェック項目

利用者さんと話していて「最近、椅子から立ち上がるのが億劫で…。歳かしらね」「物忘れが最近あって…」
このような声を聞いたことは、ありませんか?

体力や認知機能の変化がゆっくりだと、今、目の前で起きていることが注意すべきことなのか、何か対策をしたほうが良いレベルなのか分かりにくく不安に思うこともありますよね。

ここでは、体の弱さ(虚弱状態=フレイル)と、認知機能が低下しているかどうかを知る手がかりを紹介していきます。

現在、要支援などの支援を受けている方をはじめ、介護認定を受けていない65歳以上の方すべてが対象のチェックリストです。

1バスや電車で一人で外出していますか
2日用品の買い物をしていますか
3預貯金の出し入れをしていますか
4友人の家を訪ねていますか
5家族や友人の相談にのっていますか
6階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
7椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
815分くらい続けて歩いていますか
9この1年間に転んだことがありますか
10転倒に対する不安は大きいですか
116か月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか
12BMIが18.5未満ですか

BMIの計算式
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
13半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか
14お茶や汁物などでむせることがありますか
15口の渇きがきになりますか
16週に1回以上は外出していますか
17昨年と比べて外出の回数が減っていますか
18周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われますか
19自分で電話番号を調べて電話をかけることをしていますか
20今日が何月何日かわからない時がありますか
21(ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
22(ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
23(ここ2週間)以前は楽にできていたことが今では、おっくうに感じられる
24(ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
25(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
図1 出典:厚生労働省「介護予防について:基本チェックリスト」

    
図1の基本チェックリストの各項目から、以下の傾向を予測できるようになっています。

項目傾向
①〜⑤生活に必要な動作全般
⑥~⑩運動する力について
⑪⑫栄養が不足していないか
⑬~⑮口腔器官の動きについて
⑯⑰閉じこもり傾向について
⑱~⑳認知機能について
㉑~㉕うつについて

以下の①~④の、いずれかに当てはまる場合は、介護支援が必要な可能性があります。
包括支援センターや市区町村の介護福祉課に相談してみましょう。

1~20までの20項目のうち10項目以上に該当する者
6~10までの5項目のうち3項目以上に該当する者
11及び12の2項目すべてに該当する者
13~15までの3項目のうち2項目以上に該当する者

当てはまらない場合でも、「介護はまだまだ先」と思うだけではなく、次に説明する予防方法を生活で実践する意識をもつことが大切です。

生活の中で実践したい介護予防

介護予防には、生活のなかでの実践が何よりも大切です。
何か特別なことをしなければ!と思うと、気が滅入ってしまい継続しません。
手軽なものは習慣化しやすいので、できることから始めてみましょう。
また、他の人と一緒に行うことでモチベーションの維持や、会話そのものが脳や口腔の活性化につながります。
レクリエーションや、趣味の集まり、地域での健康増進のイベントなど参加しているのも良いですね。

具体的な体操やレクリエーションについては、介護予防体操介護予防レクリエーションで紹介しています。

また、レクシルホームページでも豊富に紹介されていますので、是非、活用してみてください。

介護予防のサービス

ここからは、介護予防サービスの種類について説明していきます。

介護予防サービス

●対象者:要支援1・2
●使い方:地域包括支援センターにて、ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って実施
●在宅支援が中心
●「自分でできることは、なるべく自分で」
●少しでも長く住み慣れた環境で自立して生活が続けるようにする

【受けられるサービス】

●介護予防通所介護
●介護予防通所リハビリテーション
●介護予防訪問介護

地域密着型予防サービス

●対象、使い方は「介護予防サービス」と同様
●その地域に住んでいる人だけがサービスを利用できる
●サービスの内容が地域ごとに違う

【受けられるサービス】

●介護予防小規模多機能型居宅介護
●介護予防認知症対応型サービス(認知症を発症している方が対象)

地域支援型予防サービス

●対象は要支援・要介護ではない65歳以上の高齢者
●要支援、要介護にならないように健康を保つことが目標
●市町村が主体となってすすめていく

【サービスの種類】
①介護予防特定高齢者施策

対象:要支援・要介護になりうると判断された「特定高齢者」65歳以上

②介護予防一般高齢者施策

対象:介護保険を使っていない健康な高齢者、65歳以上、全ての高齢者

まとめ


健康を保ち、要介護にならないために、そして要支援、要介護になっても介護度が重症化しないようにする工夫が大切です。
体をはじめ、脳、口の健康に役立つ手軽なエクササイズを習慣にすると、機能低下を予防できます。
地域の介護予防サービスも必要に応じ利用して、住み慣れた場所で長く暮らせるようサポートしていきましょう。

【参考文献】
介護予防・日常生活支援総合事業 ガイドライン(概要) 厚生労働省老健局振興課
「介護予防について:基本チェックリスト」厚生労働省
介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)厚生労働省
「基本チェックリストとは」公益財団法人 長寿科学振興財団

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