認知症の方の介護の現場で経験を重ねていると、「もっとより良い認知症介護について知りたい。技術を身に付けたい」「スタッフ同士で解決方法を話し合うとき、もっと案が出せればいいのに」と感じることはありませんか?
認知症介護実践研修では認知症の疾患についての理解をはじめ、より現場で活かせる実践的なスキルを身に付けることができます。
この記事では、認知症介護実践者研修の概要や期間、研修内容など詳しく説明していきます。
【目次】
1.認知症介護にかかわる研修の種類と特徴
2.認知症介護実践者研修について
3.まとめ
認知症介護にかかわる研修の種類と特徴
研修名称 | 目的 | 受けられる人 | 期間 |
認知症介護指導者養成研修 | ・認知症の介護研修などの研修に かかわる企画や立案、講師を 行う指導者を育成する | ・定められた資格をもっている ・介護業務に5年以上従事しているなど定められた要件に該当する ・認知症介護実践リーダー研修・ 認知症介護実践者研修を修了 など | 講義・実習など9週間 |
認知症介護実践リーダー研修 | ・認知症の人の能力に応じた「自立した生活」を支援するためのチームリーダーとしての力を身に付ける ・地域での事業者連携、社会資源活用の実践力を身に付ける | ・経験5年 ・認知症介護実践者研修修了し1年以上 ・介護や看護のリーダーや指導する立場にある ・市区町村や地域において認知症ネットワーク作りや支援者の人材育成に携わっている など | 演習・講義8日間 他施設実習5日間 自施設実習4週間 |
認知症介護基礎研修 | 認知症に関する業務に従事する初任者向け。 認知症介護における基礎的な知識技術、チームアプローチ概念の習得 職場において同僚やリーダーに説明や報告が適切ができる力を養う | 介護職員であれば誰でも受講可能 | 演習・講義1日 |
認知症介護にかかわる研修は複数あります。(図1)
それぞれの目的に沿って受講を比較、検討してみましょう。
認知症介護実践者研修については、この後の章で詳しく解説します。
都道府県・政令指定都市ごとに受験要件や期間などに違いがあります。
詳細は、都道府県のホームページまたは、認知症介護情報ネットワークの専門職ページをご覧ください。
認知症介護実践者研修について
認知症介護の実践研修には複数の種類があります。
図2のように、認知症介護基礎研修から各研修を修了していくと認知症介護指導者養成研修を受講でき、認知症ケアのスペシャリストを目指してステップアップできる仕組みとなっています。
認知症介護実践研修は、そのうちの一つの重要な研修です。
では、詳しく見ていきましょう。
※図2の内容は、東京都を参考にしています。都道府県や政令市例都市ごとに詳細が違うため、受講を希望する方は、都道府県ホームページなどで確認をしましょう。
概要・目的
高齢者の介護実務をしている人が、認知症の介護業務をより良く行えるようにする目的で進められている研修です。
認知症介護基礎研修に比べて、より実践的な内容となっています。
認知症介護には、認知症の病態理解をはじめ、生活習慣や環境などの状況に応じた工夫が必要です。
アプローチをする対象は、ご本人をはじめご家族や、ときにはその他関わる人に対しても必要なことがあります。
認知症介護実践者研修では、ご本人やご家族などの介入が必要な方々に対して、生活の質の向上を図ることができるように、そして生活の持続に必要な技術や実践的な対応方法などを習得していきます。
加算について
介護施設や事業所を運営するためには、資格をもった人の人数や広さ、利用する方の人数などさまざまな条件をクリアする必要があります。
それが施設基準です。
認知症にかかわる資格は、この施設基準に関係があります。
この記事で説明している「認知症介護実践者研修」を終えると、計画書の作成を担当する役割や、管理をする者として所属することも可能です。
この役割を担う研修修了者が事業所や、施設にいることが施設の基準として必要となり、これは介護報酬で決められています。
また、認知症の加算をとっていくときも、認知症介護実践者研修を終えた人が必要になります。
令和3年の介護報酬改定により、認知症介護業務に就いている資格をもっていない職員に対し認知症介護基礎研修を受けることが義務付けられるようになりました。
その他にも、訪問系の介護サービスでも「認知症ケア加算」の導入が始まっています。
認知症ケア加算をとるためには、「認知症介護実践リーダー研修修了者」が事業所に配置されていることが必要です。
認知症介護実践リーダー研修をうけるには、この記事で取り上げている認知症介護実践者研修を修了していることが受講条件となります。
認知症介護にかかわる研修を修了すると、認知症の病態理解や、ご本人ご家族への対応方法を習得できるだけではなく、認知症介護にかかわる方たちの中でのチームリーダー的な役割を果たすスキルが習得できます。
さらに、介護報酬加算にも影響をするため転職や、職場内でのキャリアアップにもつながると言えそうです。
受講要件
受講要件は、各都道府県などによって詳細が異なりますが、この記事では東京都を例として説明していきます。
●勤務している事業所や施設の長から推薦が必要
●約2年ほど、認知症の方の介護経験が実際にある者
●都内の介護保険施設あるいは居宅事業所を除く事業所で勤務している介護職員など
以上のすべてを満たしていることが研修受講の条件です。
研修にかかる期間
研修は演習と講義、実習に分けて行われます。
講義と実習は、合計6日間実施。
実習は2週間実施されます。
実習を行う場所は、自分が勤務している施設や事業所です。
以上の日数は、毎日連続して行われるわけではなく、ひと月に数回のペースで行われるため実習も含めると約3か月前後の期間が見込まれます。
研修の内容
●認知症ケアの根本となる考えを持ち、生活の支援を基本として実践につながなる講義・演習の実施
●実習として、認知症の人の生活の質の向上につながる実習計画に基づき、記録と評価を詳細に行う
●実習の最終段階では報告書を提出する
以上のように、実習では、実際に自分の働いている施設や事業所を利用している認知症の方にご協力していただく必要があります。
修了にあたって試験はありません。
日程にもよりますが、報告書の作成や、仕事と講義の両立が大変と感じる場合もあるかもしれません。
申し込み
都道府県、政令指令都市の担当部署を通じて申し込みをします。
管轄によって詳細が変わるため、希望する方は問い合わせをして確認が必要です。
費用
各地域によって値段が異なります。
価格帯としては大きく幅があるのが特徴です。
まとめ
認知症介護実践者研修は認知症介護基礎研修に比べると、やや難易度が上がり、研修と業務の両立が大変な事もあります。
しかし、認知症介護にかかわる実践的な内容を学べるだけではなく、キャリアアップにもつながる材料となりますので、興味のある方は是非、検討しても良いのではないでしょうか。
【参考文献】
「認知症介護実践研修情報」認知症介護情報ネットワーク専門職向けページ
「東京都認知症介護研修の概要」東京都福祉保健局
「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」厚生労働省