高齢者の人口増加にともない、今後も認知症の罹患率の上昇が予測されています。
こうした時代背景をふまえ、求められているのは「認知症になっても、ご本人やご家族の生活の質を保ち安心して生活できる」取り組みです。
医療・介護職だけではなく、地域住民の方や銀行窓口業務などに向けた認知症関連の資格も増えています。
この記事では、認知症ケアを深めたいと感じている介護職の方に役立つ資格を中心に紹介していきます。
【目次】
1.認知症ケアが求められる時代的背景
2.認知症ケア専門士
3.認知症ケア上級専門士
4.認知症ライフパートナー
5.認知症介護指導者
6.認知症介護指導者養成研修
7.認知症介護基礎研修
8.まとめ
認知症ケアが求められる時代的背景
急速な高齢化社会を迎えている日本。
65歳以上の認知症患者数は、今後も増加の一途をたどると予測されています。(図1)
高齢になると、脳の器質的な変化などの要因から認知症の罹患率は自然と高まります。
認知機能の低下が進行するほどに、生活全般に支障があらわれてくるため、ご本人だけではなく、ご家族や、かかわる方たちが安心した生活を送れるようサポートをする必要があるのです。
その対策の一環として、さまざまな資格の制定がすすめられるようになりました。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、認知症ケアについての高度な知識とスキル、そして高い倫理観をっていることを認定する資格です。
試験は、筆記試験、論述試験と集団面接)を実施。
合格率は50%前後と、難易度は高めとなっています。
合格したあとも、5年ごとに定められた単位を取得しなければ更新ができません。
受験できる要件としては、認知症専門である必要はありませんが、認知症ケアに関連する施設・団体・関連機関において、試験実施年の過去10年間において3年以上の認知症ケアの実務経験がある人が対象です。
詳しくは、認知症ケア専門士公式サイト「認知症ケア専門士」をご覧ください。
認知症ケア上級専門士
認知症ケア専門士の経験が3年以上になると、認知症ケア上級専門士の受験資格が得られます。
認知症のケアに関わるチームリーダーや、地域におけるアドバイスなどで力を発揮する資格です。
受験できる条件など複数あるため、受験を希望される方は認知症ケア専門士公式サイト「認知症ケア上級専門士」をご確認ください。
認知症ライフパートナー
認知症の方へのかかわり方や、その方の症状や心に寄り添えるコミュニケーション手法と、アクティビティケアの選択力を身に付け、それらの普及目指すことができる資格です。
資格は1~3級にレベルが分かれています。
詳細は日本認知症コミュニケーション協議会公式ホームページをご覧ください。
(1)認知症ライフパートナー1級
専門性に特化した知識の習得、そして認知症を診断されたご本人や、そのご家族に対する心理面の支援を行うためにコミュニケーション力やマネジメント能力も身に付ける内容となっています。
2級3級に比べ、リーダーとしての役割と、ケアの実践に必要な企画・運営・評価を行えるスキルが求められます。
受験資格としては、認知症ライフパートナー2級に合格していることが条件です。
試験は、マークシート式試験と記述式試験が行われます。
(2)認知症ライフパートナー2級
知識やコミュニケーションスキル、認知症の方に重要な住まいや環境の知識、介護保険やその他の制度の活かし方について学びます。
認知症ライフパートナー3級に比べて、より実践的な内容となっていて現場での即戦力になるだけではなく、認知症の方本人をはじめ、ご家族にも包括的な生活支援ができる力を養います。
受験資格は、学歴・年齢・性別・国籍など制限はなく、どなたでも受験することができます。
試験は、マークシート式で100点満点中70点以上が合格ラインとなります。
(3)認知症ライフパートナー3級
認知症ライフパートナー3級では、ケアに関わる専門職だけでなく誰もが身につけておくべき基本的な知識の習得を目指します。
認知症のケアに役立つアクティビティケアの活用法についても、基礎から学ぶことがでるのが特徴です。
受験資格は、学歴・年齢・性別・国籍など制限はなく、どなたでも受験することができます。
試験は、マークシート式で100点満点中70点以上が合格ラインとなります。
認知症介護指導者
質の高い認知症介護を行う専門職員を養成するための研修です。
実践的な認知症介護の知識やケア技術を習得していきます。
認知症介護指導者は、地域にお住まいの方の認知症ケアの質向上に向けた教育やアドバイスを担います。
この後に詳しく説明しますが、「認知症介護指導者養成研修」の受講が必要です。
詳細は認知症介護情報ネットワークホームページをご確認ください。
認知症介護指導者養成研修
(1)(2)の順に研修をすすめ、最上位に位置するのが(3)認知症介護指導者養成研修です。
(1)認知症介護実践者研修
認知症の原因となる病気に応じ、ご本人やご家族のQOL(生活の質)を改善できるような対応やスキルを習得します。
(2)認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践研修で習得した知識やケア技術をさらにふかめ、チームで効果的に認知症介護を進められる指導者です。
ケアチームにおける指導能力、そしてチームマネジメント能力を身に付けます。
(3)認知症介護指導者養成研修
認知症介護基礎研修と、認知症介護実践研修などの自治体が行う公的研修の企画・立案を行い講師を務める能力を養います。加えて、地域全体における介護の質の改善について指導する能力を身に付け、地域のさまざまな取り組みに貢献できる力を養います。
認知症介護基礎研修
介護の現場で勤務している新人の方向けの研修です。
認知症の介護に必要な知識や認知症介護技術を習得できる内容になっています。
厳しい受講資格は不要で、試験はなく講義と演習で構成された研修期間は1日です。
認知症介護基礎研修を修了すると「認知症介護実践者研修」「認知症介護実践リーダー研修」「認知症介護指導者養成研修」などのスキルアップを目指すことができます。
まとめ
高齢者増加にともない、認知症罹患数の増加が避けられない日本。
認知症の方や、ご家族などの不安や戸惑い、生活上の困難さを支えるためには、適正な知識とケア技術が大切です。
目的に応じた資格を取得することで、認知症ケアに役立てることができるでしょう。