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利用者さんにおける入浴介助の2つの目標

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介護施設などでは様々な動作を介助するかと思いますが、業務との一つとして入浴介助が挙げられます。
漫然と入浴介助を行うのもいいと思いますが、できるADLからしているADLへ繋げることも大切なことです。

この記事では入浴介助における利用者さんへの目標について解説をしていきたいと思います。

入浴の目的

入浴は人が人らしく日常を営む上で最低限の行為であり、尊厳や生活の質(QOL)を保つためにも必要となります。
入浴することで、全身の血流が改善され、筋疲労を改善させ、全身のリラックス効果を得ることができます。

また入浴の目的は「綺麗・さっぱりする」「1日の疲れを癒す」などが挙げられます。

身体を綺麗にすることで様々な感染から身を守る

入浴することで身体に付着した汚れや皮膚から出る汚れ・油分などを取り除くことができます。
皮膚に付着している汚れは、傷口などに入ると様々な感染症を呈する危険性があります。

そのため、入浴を行うことで様々な感染から身を守ることが期待できます。

リラックス効果

入浴には、血液循環をリンパの流れ促進し、身体の緊張や疲労を和らげたり、胃腸や腎臓などの臓器の機能を高めたりする効果があります。
そのため疲労回復につながりリラックス効果を得ることができます。

利用者さんにおける入浴介助の1つ目の目標

介助だからといって介助者が全てを行ってしまっては、利用者さんの身体機能の改善につながっていくとは考えにくいです。
できるADLとしているADLの乖離を減らしていくことが、利用者さんのQOL(生活の質)を高めるには必要になってきます。

そのため、利用者さんがリハビリなどの場面で行うことができる動作に関しては、介助せずに利用者さん本人に行っていただく方が機能回復には有効です。

入浴介助における利用者さんの目標は、できるADLをしているADLへと向上させることだと言えます。

できるADLとしているADLについて

ADLは利用者さん・患者さんの自立度を測るものさしとなっています。
要介護認定調査やリハビリテーションの効果判定などに用いられたりしています。

ADLには「できるADL」と「しているADL」があります。

できるADLとはリハビリなどの場面では一人で行うことができるが、自宅などの環境では一人で行うことができなADLのことを指します。
しているADLとは、そのかたが普段生活をしている中で行うことができているADLのことを指しています。

できるADLがしているADLに向上することで、そのかたの日常生活での動作が増えていきます。
また、しているADLとできるADLの乖離が大きい場合には、一見すると一人で動作が行えているように見えても、転倒リスクが潜んでおり、在宅生活などでは注意が必要になってきます。

ADLの種類

ADLにはBADLとIADLの二つがあります。

BADLとはBasic Activity of Daily Livingの略で基本的日常生活動作と言います。
IADLはInstrumental Activities of Daily Livingの略で手段的日常生活動作のことを指します。

IADLはBADLよりも高度で複雑な生活動作となっています。

例えば、BADLが「歩くことができる」だとした場合に、IADLは「歩いて買い物にいくことができる」「一人で公共交通機関を利用して外出することができる」などとなります。

BADLで行うことができない動作はIADLに繋げることはできません。
そのため、BADLの能力を高める必要が出てきます。

利用者さんにおける入浴介助の2つ目の目標

2つ目の目標は利用者さんにリラックスして入浴してもらうことです。

入浴にはリラックス効果があるため、利用者さんが安心して入浴できるような介助が必要になってきます。
よく高齢者の方が入浴を拒否することがありますが、安心して気持ちよく入ることができる入浴環境を整えることで、拒否なく入浴が可能になることがあります。

拒否する理由を把握して、原因を改善することで心身のリラックスにもつながります。

入浴介助での注意点

入浴介助を行う上で注意しておきたい点をいくつかご紹介していきます。

1.介助者が全てを行わない

できるADLからしているADLへと向上させていくためには、介助者が全てを行わないようにする必要があります。
利用者さんや患者さんが自らできそうな動作は、なるべく自分自身で行ってもらうようにしましょう。

私が病院で勤務している時に気にしているのは、時間をかけても患者さんが自分自身で行うように働きかける、ということです。
理学療法の時間は限られているので、ずっと待つことはできませんが、患者さん自らが動作を行おうとするまでは待つようにしています。

そのほうが患者さんのADL向上に繋げることができるためです。
利用者さんが目的動作を行うまで少し待ってみるのもいいかもしれません。

2.安全第一

介護施設などで入浴介助を行う際にはバリアフリー対応になっていたり、福祉用具が用意されているため、安全性は保たれているかと思います。

もしご自宅で行う場合には、段差に注意をしたり、シャワーチェアを用意するなど安全に配慮して行う必要があります。
水場は滑りやすく、転倒してしまう可能性が高いです。

大腿骨頚部骨折の多くは転倒による受傷なので、転倒には十分に注意しておきましょう。

3.体調チェック

入浴の前後で血圧や脈拍などの体調チェックを行っておきましょう。
血圧が高すぎる低すぎる場合には入浴は控え、清拭などに切り替えるといいでしょう。

また、普段と異なる様子である場合には医師・看護師に報告を行いましょう。

4.ヒートショック

入浴前にはヒートショックが生じやすくなります。
冬場になると頻繁に生じるため、脱衣所などは暖かくしておくことが大切です。

まとめ

この記事では入浴介助における利用者さんへの目標について解説を行いました。
入浴介助は大変でとても疲れる業務かと思います。

しかし、利用者さんや患者さんがその人らしく生活を送る上でとても重要な行為です。
少しでも利用者さん・患者さんに寄り添った入浴介助が行えるといいですね。

また、介助といっても介助量には全介助から軽介助までさまざまなレベルがあります。
中介助の方は軽介助に、軽介助の方は見守りで入浴が行えるように機能回復を図りながら入浴介助を行えるとよりいいかと思います。

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