デイサービスや老健などの介護施設では、塗り絵が取り入れられることが多くありますが、介護施設で塗り絵を行う理由や塗り絵の効果とは一体どういう意味があるのでしょうか?
この記事では介護施設で塗り絵を行う理由や塗り絵の効果についてご説明していきたいと思います。
介護施設で塗り絵を行う理由
介護施設ではレクリエーションの一環として塗り絵が行われることがあります。
他にもレクリエーションには体操やクイズなどさまざまなものがありますが、塗り絵を行う大きな理由は「認知症予防」の意味合いが強いです。
塗り絵の一つに「思い出塗り絵」というものがあります。
思い出塗り絵は「回想法」と呼ばれる治療的要素と塗り絵を組み合わせた方法のことを言います。
利用者の方の思い出が深いと思われる写真を用意し、画像処理を行った後に塗り絵にするというものです。
1ヶ月半・週一回、思い出塗り絵を行ってもらい、その後の脳機能を評価した研究があります。
その結果、思い出塗り絵を行うことで、対象者の認知機能に対して効果がある可能性が示唆された、と報告されています。
この結果は、どういった場面・どのときの場面だったのかなど、過去の出来事を思い出しながら思い出塗り絵に取り組んだからだと言えます。
思い出塗り絵を行う際には、過去の出来事を思い出しながら行なっていただくのが、より良い方法だと思います。
塗り絵の効果とは
また、介護施設などで行う一般的な塗り絵の効果は以下の3つです。
- 脳の活性化が期待できる
- 集中力up
- ストレス発散効果
次からは3つの理由について細かく紹介していきます。
塗り絵で脳の活性化が期待できる
一枚の塗り絵を完成させるためには、
- どこから塗り始めるか
- どの色を使うか
- 色の濃淡をどうするか
など、さまざまなことを考えながら塗り進めていく必要があるため、塗り絵は脳の活性化が期待されています。
塗り絵で活性化される脳の部位は「前頭前野」と呼ばれる領域が活性化されることが報告されています。
前頭前野の働きとしては、想像力や記憶力、感情の制御、行動の抑制を担っています。
脳の部位にはさまざまな部位がありますが、塗り絵は前頭前野をはじめとして、後頭視覚野、側頭連合野、頭頂連合野など多くの脳部位を活性化することが期待できます。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」や「脳が活性化する大人の塗り絵」などの開発に協力をしている東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、ただ単に色を塗るだけでは、脳は活性化しないと報告をしています。
塗り絵を行う際には、一つの色で色の濃淡を表したり、ぼかしなどの技法を用いることで、前頭前野が活性化されるということが報告されました。
そのため、ただ単に色を塗るというよりも、どのように塗り絵を表現するか?といったことを介護職員が利用者さんと一緒に考えることで、塗り絵による脳の活性化効果に期待することができます。
集中力up
塗り絵の柄の一つに曼荼羅(まんだら)があります。
曼荼羅はサンスクリット語で円(丸)・本質を得るという意味がありますが、塗り絵などのアートの世界では、全ての柄が左右対称に描かれている柄を曼荼羅と呼びます。
曼荼羅には、書き進めることで精神的な安定感がもたらされ、心を癒すという効果があると言われています。
また、曼荼羅の柄は細かい柄が多い反面、同じような柄の反復なのでテンポ良く塗り進めていくことができます。
さらに色を塗る際には枠線からはみ出さないように塗るため、集中力upの効果が期待できます。
曼荼羅柄の塗り絵を行なったことがある方からは「何も考えずに集中できた」「スッキリした気分になった」などの声が数多く寄せられているそうです。
動物や花などの塗り絵では、実在しているもののため、色合いなどを実在の色に近づけなくてはいけませんが、曼荼羅柄は実在しているものではなく、見本がないため利用者さんそれぞれの美的感性によって塗り進めていくことができます。
そのため同じ曼荼羅柄でも、その日の気分や体調によってさまざまな表現方法があり、10種10通りの作品が完成するのが曼荼羅塗りの特徴です。
曼荼羅の柄を活用したものでは、「点描画」「糸かけ」などもあります。
点描画は黒い台紙に曼荼羅模様を描いて、曼荼羅模様の中をゲルボールペンなどを用いて、点で色をつけていきます。
糸かけでは台にピンを打って、ピンに糸をかけていくものです。
いずれも介護施設で行いやすいものなので、ぜひ試してみてください。
ストレス発散
曼荼羅柄をはじめとした、大人の塗り絵では細い柄の塗り絵が多いです。
フランスではコロリアージュという女性に人気の大人の塗り絵があります。
このコロリアージュはフランスではアートセラピーとして定着しています。
コロリアージュなどの大人の塗り絵では、色つけをしていくことに集中するため、結果的にストレスが軽減している、と報告されています。
また、完成した作品を眺めることでのリラックス効果も期待できます。
アートセラピーとは
フランスではコロリアージュがアートセラピーとして取り入れられていますが、アートセラピーとはそもそも何なのでしょうか?
アートセラピーを中心に取り扱っている、クエスト総合研究所では以下のように言われています。
「アートセラピーとは、主に欧米の精神医療の中で研究された、心のケアに役立つ心理療法です。心理的な病を持った人や、様々な障害を持つ方の治療に役立ちます。また、治療を目的としたものばかりではなく、健康な人の悩みや苦しみを癒し自己成長や自分らしさを取り戻すことにも役立ちます。」
つまり、アートを通じて精神的・身体的により良い方向に進めて行く、というのがアートセラピーということです。
元々はアメリがやカナダなどで福祉・教育・医療現場などで取り入れられていた治療技法の1つです。
アメリカやカナダではアートセラピーの資格が存在しており、日本国内でもその需要は高まりつつあります。
塗り絵を取り入れる際の注意点
塗り絵と言っても難易度はそれぞれ異なります。
同じ高齢者であっても身体機能や精神機能などが異なり、身体機能などが低下している方の場合には「大人の塗り絵」のような細かい作業はストレスになってしまう方もいます。
塗り絵の効果は塗り絵に集中して取り組むことで得られるので、各利用者さんの身体機能や精神機能に合った絵柄を選ぶ必要があり、注意が必要です。
まとめ
この記事では介護施設で行う塗り絵について解説を行いました。
塗り絵は手軽に始められ、認知症予防にも効果があります。
ぜひ利用者さんが楽しみながら塗り絵を行えるよう進めてみてください。
「レクシル」には塗り絵が豊富に用意されています。
プリントアウトすればすぐに始めることができるので、ぜひこちらも活用してみてください。
→レクシル公式ページへ