食事介助の手順でお悩みではありませんか?基本の手順を「食べる前の準備」「食事介助の方法」「食後にすること」の順に紹介します。そして、誤嚥予防に大切な介助量の目安と姿勢も詳しく説明!高齢者介護における食事介助で多くみられる認知症への対応も解説します。
【目次】
1.【食事介助】基本の手順3つ
2.【介助量】4つの目安
3.姿勢の調整が誤嚥予防に!
4.【認知症の食支援】対応方法
【食事介助】基本の手順3つ
1.食べ始める前の準備
・排泄を済ませる
・口腔体操、口腔ケア
・集中しやすい環境
・「今日はお魚ですね」など献立を伝えながら配膳
・椅子、テーブルの高さ、距離を調整
・姿勢調整
・飲み物につけたとろみの濃度の確認
2.食事介助をする
・介助者と利用者さんの目線の高さは同じ
・一口目は飲み込みやすい食物を選ぶ
・主食、副食、水分を三角食べをする(喉に残りにくくなる)
・一口量はティースプーン軽く1杯程度
・スプーンは水平に口に入れ、少しだけ斜め上に引き抜く
・次の一口を口に入れるのは、ゴックンと喉ぼとけが上がったのを確認してから
・声が変化したら(うがいをするようなガラガラ声)咳払いをする。または、通過の良いゼリーやお茶を飲む
・飲み込んだあとも、口をモグモグしている時は喉に残った食物を嚥下したい状態。ゴックンを待って再開する
・疲れてきた、むせが多くなってきたら無理をして続けない
3.食後にすること
・口腔内に残っていないか確認(食物・薬)
・摂取量、飲水量をチェック
・口腔ケア
【介助量】4つの目安
サポートが必要な場合は「見守り」「部分介助」「全介助」などを検討してみましょう。摂食・嚥下の状態は体調や睡眠状況などによって1日の中でも変動します。状態変化に合わせた食事介助量を柔軟に選べると誤嚥予防にもなり安全ですね。
【例】
自立
・セッティングをすれば、利用者さん一人で完食可能。むせない。
見守り
・手が止まってしまうが、声を掛ければ再開できる
・食事形態を変更後、評価の一環として。(むせ・食べにくさの有無)
部分介助
・早食いだが、配膳を少量、小分けにすればむせずに食べられる
・途中から介助に入れば食べきることができる
全介助
・スプーンから食べ物が落ちてしまい、食事の摂取量が低い
・早食いで口に詰め込み過ぎ、声掛けでも修正できず誤嚥の危険性が高い
姿勢の調整が誤嚥予防に!
椅子
・テーブルの高さは腕を乗せて肘が90度に曲がる程度
・足の裏は床または足台につく高さ
・テーブルと体の間は、こぶし1個分の距離
・お尻が前方にずれないように、しっかり奥まで腰をかける
・顎は引き気味
車いす
・左右に崩れやすい場合は、クッションなどで安定させる
・車いすのフットレストは使用しない
・他は「椅子座位」と同様
リクライニング
「リクライニング車いす」「ベッド」:リクライニング角度が30度程度の場合
【リクライニング位のメリット】
・リクライニングの角度が30度だと喉の構造上、気管が上、食道が下になる
・気管が上になることで、重力で食物が食道に流れ込みやすくなる
・舌の動きが悪く、喉に食べ物を送り込めない場合は、重力で送り込みやすくなる
・疲れにくい
・寝たきりの方で、ベッド上で食事を食べる場合にも利用できる
【姿勢調整のポイント】
・寝た姿勢だと首がのけぞりやすい。クッションなどで軽く顎を引いた姿勢にする
・円背の場合は、背中が浮かないようにクッションを複数個入れる
・頭部だけではなく、膝が軽く曲がるように足も少し上げておく
・腰がベッドの折り目にしっかり合うことで、下の方にずりさがりにくく姿勢が安定する
・足がずりさがらないように、足の裏にクッションをつける
・言語聴覚士、作業療法士、理学療法士が在籍している場合、角度や姿勢を相談する
【認知症の食支援】対応方法
介護での食事介助では認知症の方への対応が求められます。認知症の方の摂食・嚥下障害は、先行期に表れやすいのが特徴です。
先行期の役割
・食べられるものか判断する
・口に入れる適量を判断する
・使う道具を選ぶ
・汁物、固形物によって口への運び方を変える
・熱いもの、冷たいもので口への入れ方を変える
・大きさ硬さに合う咀嚼・嚥下の仕方をする
・誤嚥しないようにタイミングよく嚥下する
認知症では、先行期の一部または全てがスムーズにいかず問題が生じます。誤嚥のリスクが高まるだけではなく、低栄養や脱水にもつながるので対応が必要です。
注意力「集中が続かない」「中断してしまう」への対応
食事動作が止まるだけではなく、口の動きも止まることで咀嚼・嚥下が不十分になり誤嚥しやすくなります。視界を横切る人や物、音に注意が向いてしまうため、集中しやすい環境調整が大切です。
・テレビやラジオを消す。または小さい音にする。
・人が歩き回る入り口や動線の席は避ける
・にぎやかな利用者さん、介護者の近くは避ける
環境を整えても食事動作が止まったまま口を開けてくれない、または咀嚼が止まってしまうことがあります。その場合以下の工夫をしてみましょう。
・【自力摂取の場合】介助者がスプーンですくい、利用者さんの手に持たせ、口もとまで運ぶのをサポート。動作が連続して続くようになったら利用者さん自身で食べていただく
・【全介助の場合】スプーンですくった食物を下唇に数秒あてておく、トントンと刺激を与えてみる
・改善せず口腔内に食物が溜まったままの場合は、誤嚥しやすいので介助者が手袋をした指でやさしく掻き出す
・溜め込みが重度で危険な場合は、食事を中止する場合もある
まとめ
介護の食事介助では、利用者さん一人ひとり食べる状態が違うので対応も難しいですよね。複雑そうに感じる食事介助も、基本の手順、介助量の設定や姿勢調整の種類を知ると、状況に応じた選択ができるようになるのでおすすめです。介護の食事介助でよくある認知症への対応をおさえ、サポートの選択肢も広げていきましょう。
【参考資料】
聖隷嚥下チーム(2011)『嚥下障害ポケットマニュアル』医歯薬出版
日本嚥下障害臨床研究会(2002)『嚥下障害の臨床』医歯薬出版
ExpertNurse(2011)『あたながはじめる摂食・嚥下・口腔ケア』照林社