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誤嚥する理由〜食事介助に必要なポイント5選~

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「誤嚥(ごえん)予防ができる食事介助は?」介護施設や高齢者の食事介助で、特に気になる疑問にお答えします。よく使われる「誤嚥」の本当の意味と、誤嚥性肺炎との関係を分かりやすく説明。

誤嚥の要因のひとつである介助側の要因と、具体的な食事介助のポイントを詳しく紹介します。むせた時の対応を再確認してあわてず対処できるようにしましょう。

【目次】
1.高齢者の誤嚥性肺炎
2.誤嚥と誤嚥性肺炎の関係
3.誤嚥が生じる介助側の6つの要因
4.誤嚥・誤嚥性肺炎予防3つのヒント
5.むせた時の対応
6.まとめ

高齢者の誤嚥性肺炎

肺炎患者を年齢別にみると約7割が高齢者で、そのうち、7割以上が誤嚥性肺炎です。死亡数にも関係してきています
高齢者の嚥下障害の主な原因は脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症です。嚥下障害が誤嚥性肺炎の発生率に大きく関係していることが分かってきています。

誤嚥と誤嚥性肺炎の関係

そもそも誤嚥とは何だろう?

いざ「誤嚥を説明してみてください」と言われるとうまく説明しにくいですよね。介護では良く使われる「誤嚥」の意味を、確認してみましょう。

誤嚥は飲食物が食道ではなく気管に入ってしまうことです。吐き出そうと強い咳(むせ)がでます。気管の入り口には、声帯がありますが、その付近に飲食物があるときもむせがでます。

むせがあるときは「気管に入った」だけではありません。「気管に入りかかってる」状態でもむせます。そのため、しっかり咳を出し切ることが大切です。

脳卒中の後遺症や、高齢者では喉の感覚センサーが弱まっていて誤嚥しかかったり誤嚥してもむせの防御反応がでない場合があります。これを「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」と言い、注意が必要です。

誤嚥性肺炎はなぜ起こる?

誤嚥物が肺に到達して、炎症が生じることを「誤嚥性肺炎」と言います。

誤嚥性肺炎は条件が重なると生じる

・胃酸など酸性が強いほど炎症が起こりやすく治りにくい
・口腔内の汚れていて常在菌を多く誤嚥している
・食事以外でも唾液を誤嚥している
・誤嚥を繰り返している
・栄養不良や免疫力が低下している
・誤嚥性肺炎を繰り返すと、再発しやすく治りにくい

条件を減らすことで誤嚥性肺炎に移行しにくくなる

・食べ物(胃酸)の逆流をおさえるため、食後しばらくは上体を起こす
・口の中が汚れていたら放置しない。特に入眠前、食前。
・適切な介助をする
・誤嚥しそうな兆候を察知したら、すぐに対処する
・体力が弱って口から食べきれないときは、少量で栄養補給ができる補助栄養を検討してみる
・気管の誤嚥物をしっかり吐き出せる咳の力を落とさないようにする

誤嚥が生じる介助側の6つの要因

1.食事前の準備が足りない

・声掛けせず急に口に入れ始める
・口腔内汚染や痰が付着したまま
・姿勢を調整しない
・集中しやすい環境ではない

2.介助方法が合っていない

・ゴックンと飲み込んだのを確認せず、次の一口を入れる
・利用者さんより高い位置から介助、スプーンを上から差し込む
・口に運ぶペースが速く、言葉で急かす
・介助方法が統一されていない
・疲労があるのに無理に続けてしまう
・咀嚼・嚥下している最中にたくさん話しかけてしまう

3.食事形態や提供方法が合っていない

・嚥下の状態に合わない食材の種類や大きさ、調理法
・水分でむせやすいのに、飲み物、汁物、おかずの汁はサラサラのまま口に入れてしまっている
・お粥のサラサラした水分を切らずに、米粒と水分がスプーンに一緒に乗った状態で口に入れてしまう
(※スプーンに付着した唾液がお粥に混ざると、ドロッとした成分が分解されてサラサラの水分になりやすい)

4.介助量が合っていない

・疲れて食べられないにもかかわらず、自力摂取にこだわる
・食べこぼしが多量でも介助せずにいて、体重が減ってしまう
・誤嚥しやすい食べ方をしているのに、食事の介助や見守りをしない

5.誤嚥の兆候に気付かず食事介助し続けてしまう

・気管に入りかかっていても、咳払いで吐き出さないでいる
・呼吸が荒い、ぼーっとしてきても口に入れてしまう
・食事中くしゃみが頻回に出る・鼻から飲食物がでる・むせが頻回でも介助方法や食形態の見直しをしない
・微熱や汚い色の痰が増えても、嚥下状態や誤嚥を疑う兆候が出ていないか確認をしない

6.むせた後の対応が合っていない

・むせが出ていたり、呼吸が整っていないのに食事を再開してしまう

誤嚥・誤嚥性肺炎予防3つのヒント

1.食事介助

誤嚥兆候に注意した適切な食事介助をする
レクシルメディア「誤嚥予防のための食事介助」にて詳しく紹介)

2.肺炎の原因菌をできるだけ少なくする

歯ぐきや、頬の裏側など食べかすが残りやすい部分では細菌が多く繁殖しやすい環境です。口腔ケアで肺炎の原因になりやすい細菌を減らすことができます。

3.口腔機能を維持して、嚥下障害の進行を遅らせる

リハビリや口腔体操だけではなく、口腔ケアや会話、笑顔なども口腔・嚥下機能につながります。咀嚼嚥下と咳を出す呼吸機能は、全身と密接なかかわりがあるのです。そのため、日常生活の動作能力維持が大事なポイントになります。

むせた時の対応

むせが起きたときは、気管に食物が入りかかっているか、気管に入ってしまっている状態です。そのため、我慢せずにすぐにしっかりと喀出(かくしゅつ)するのが重要です。

・「しっかり咳をして大丈夫ですよ」と、利用者さん周りを気にせず、むせられるように声掛けをする
・前傾姿勢をとってもらい、咳をさせる
・「咳をする」声掛けが理解できない場合がある。その際は「えっへん!!」の声掛けや、介助者が強い咳をして見本を見せる
・むせが止まらず、苦しそうであれば食事を中止する
(※看護師がいれば報告し血中の酸素濃度計測や吸引などの処置をする)
・むせが頻回にある場合は、特に日々の発熱や痰の有無などに注意をする

まとめ

高齢者における肺炎の原因は誤嚥性肺炎が多いといわれています。適切な食事介助と、口腔ケアやADL(日常生活動作)を少しでも維持・回復して誤嚥性肺炎の予防にも努めましょう。

【参考資料】
2019年:人口動態統計月報年計(概数)性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合
2016年:厚生労働省第2回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2:「高齢化に伴い増加する疾患への対応について」
2020年:年間4万人の命を奪う「誤嚥性肺炎」は、高齢者ほどかかりやすい!口腔ケアで予防を!https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no866/
2017年:一般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=11
2018年:死亡につながりやすい誤嚥事故!介護士が義務違反となるケースは?https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/law/no17/
ExpertNurse(2011)『あたながはじめる摂食・嚥下・口腔ケア』照林社 

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