介護施設では集団体操を介護職員が行う機会が多くあります。
介護職員が集団体操を行う上でポイントとなる点がいくつかありますので、今回は集団体操を行う際のポイントを理学療法士として病院勤務している筆者が紹介していきたいと思います。
最後には実際の集団体操例もお伝えしますので、明日からの業務に使うことができますよ。
介護施設で集団体操を行う際のポイント
介護施設で集団体操を行う際のポイントには以下の点があります。
- 転倒に注意する
- 適宜休憩を入れる
- 飽きない内容にする
- 状態悪化に注意する
- 椅子に座ってできる体操を行う
ポイント1.転倒に注意する
集団体操は椅子に座ってできる内容にしましょう。
立った状態で運動を行うと転倒のリスクが伴い、場合によっては骨折を引き起こしてしまいます。
また、椅子もできることなら肘掛け椅子の方がいいです。運動に夢中になっているあまり、横から転びそうになるなんてこともあり得ます。
今ではyoutubeが当たり前のように普及していますが、youtubeには座ってできるラジオ体操も動画がアップロードされているので、それを参考にするのも○です。
ポイント2.適宜休憩を入れる
集団体操では介護職員などが前に立ち、先導して運動を行なっていきますよね。
職員の体力をベースで運動を進めていくと利用者さんにとっては過負荷になってしまう可能性があります。
「ちょっと休みすぎかな?」くらいがちょうどいいと考えています。
利用者さんによっては、負荷が軽すぎる場合もあるので、そういった場合には重水や500mlのペットボトルに水を入れて重りの代わりに持ってもらいましょう。
そうするだけで負荷量がグッと上がります。
ポイント3.飽きない内容にする
集団体操を毎日のように行なっていると、体操の内容がマンネリ化してしまい、利用者さんが飽きてしまいます。
またマンネリ化した運動は患者さんの脳にとってもマイナス効果しかありません。
外部からの刺激によって脳は活性化するため、マンネリ化しないよう、集団体操のバリエーションを増やしておきましょう。
体を使った脳トレなんかもおすすめですよ。
ポイント4.状態悪化に注意する
集団体操をしていると、気づかないうちに状態が悪化してしまう利用者さんもいます。
一人で複数の利用者さんを相手にしているので、なかなか気づきにくいこともあります。
そういった場合には、事前に気をつけておくべき利用者さんを看護師などから聞いておきましょう。
あまりにリスクが高すぎる利用者さんは集団体操の参加をストップする場合もあるので、聞いておいて損はありません。
ポイント5.椅子に座ってできる体操を行う
ポイント1でも書きましたが、立って集団体操を行うと転倒の危険が伴います。
そのため、立って集団体操を行いたい場合には、理学療法士などに相談して、一人で立って運動させても大丈夫な利用者さんなのかどうかを把握しておきましょう。
また平行棒などの支持物などを使って運動をするのも○です。
集団体操の目的とは?
集団体操を行うからにはそれなりの理由があります。
ここからは集団体操を行う3つの目的についてご紹介していきます。
目的1.グループで行うことで脳の活性化に期待できる
まず一つ目の目的ですが、集団体操を行っている利用者さんを小さなグループに分けてゲーム感覚で運動を行うことで、他者との協調を図り、脳の活性化が期待できます。
他者に配慮することで、自分一人で運動を行うよりも考えなくてはいけないことが増え、
その結果、脳の活性化が期待できます。
目的2.低負荷の運動で血流量を上げる
二つ目の目的ですが、低負荷の運動でも使った筋肉の血流量を上げることができます。
筋肉の血流量が増加することで、関節可動域制限の予防・酸素消費量増加に伴う心肺機能の改善などが期待できます。
そのため、集団体操でも身体機能にはメリットしかありません。
全身の血流量が上がれば、脳への血流量も増加し、認知機能維持・向上も期待できますよ。
目的3.QOL向上を図ることが可能
3つ目の目的は、集団体操を行うことで利用者さんのQOLを上げるということです。
QOLとはQuality Of Life:生活の質のことを指しますが、高齢者に対して集団体操を行うことで、集団体操を行った高齢者のQOLが短期的に向上した、という報告があります。
QOLを上げることは利用者さんがその人らしく生活を送っていくためには必要なことです。
そういった面にアプローチできる集団体操はとても魅力的ですよね。
簡単にできる集団体操例
最後に、簡単にできる集団体操の具体例をご紹介していきます。
明日からの集団体操にも使える内容なので、ぜひ使ってみてください。
集団体操例1.座ってラジオ体操
ラジオ体操といえば、立ってやるのが普通だと思っていましたが、NHKの番組では座って行うラジオ体操も紹介されています。
NHKの放送時間に合わせて行えない場合には、Youtubeにも動画があるので、それを参考にラジオ体操をやってみてください。
ちゃんとやるとラジオ体操も結構な運動になりますよ。
集団体操例2.【タオル体操①】上半身と下半身を動かす全身体操
身近にあるタオルを使った上半身と下半身を動かす全身体操です。
タオルを使うことで普段は動かさない部分の筋肉もしっかりと動かすことができます。
実際の動画はこちらを参考にしてみてください。
【タオル体操①】上半身と下半身を動かす全身体操
集団体操例3. 【脳トレ】片方グーと片方数字数え
手の指と頭の両方を使った運動です。
両手で別々の動きをすることは多くの人が苦手としています。
右手と左手を別々に上手に動かすには、よく考えながら運動を行わないといけないため、脳の活性化につなげることができます。
意外と職員もできない方もいるかも…?
やり方はこちらを参考にしてください。
【脳トレ】片方グーと片方数字数え
まとめ
今回は介護施設で集団体操を行う際のポイントや実際の具体例についてご紹介しました。
理学療法士である筆者の思いを少し書かせていただくと、
理学療法士一人では運動を行える利用者さんの人数が限られてしまいます。
そのため介護職員の方々に利用者さんと体操を行っていただき、運動量を確保していただくのは、大変助かります。
職種関係なく、利用者さんの身体機能を向上していくことができると良いですよね。
ぜひ今回の記事を参考に、引き続き集団体操に取り組んでみてください。
参考文献
玉利 光太郎. 高齢者に対する集団体操がQOLに与える短期的効果と予後予測因子の検討―3ヶ月間の集団体操は効果的か?―.生活環境支援系理学療法.2009;36(2).