介護施設などで働いていると、介護レクの一環で工作を行うことがあります。
長く働いている方や、過去に何度も介護レクで工作を行っている方であれば、
工作のレパートリーも多いかと思います。
しかし、介護レクで工作を任されても、「何をしたらいいかわからない」「工作じゃなくてもいいんじゃない?」
そんな風に思う方もいます。
今回は介護レクで工作を任されたけど、どういったことをやればいいのかわからない人や工作をやる意味がいまいちわからない人に向けて、介護レクで工作がおすすめな理由や工作の具体例をご紹介していきます。
介護レクで工作がおすすめな理由
介護レクで工作がおすすめな理由には
- 手先を動かすことで脳が活性化される
- 細かい作業なので集中力が必要とされる
- 職員一人で多くの利用者さんを見ることができる
などが挙げられます。今回はこの3つの理由について解説を行っていきます。
手先を動かすことで脳が活性化される
脳には手足に対応した領域が存在しています。この領域は「感覚」と「運動」の2種類が存在しています。
詳しく知りたい方は「ホムンクルスの小人」と検索すれば画像が出てきますので、ご覧ください。
ホムンクルスの小人で表されているのは、脳において手の領域が占める割合がかなり多いということです。
これは感覚も運動もどちらも、手がかなりの割合を占めています。
つまり「手をたくさん動かせば動かすほど脳に刺激が送られ、脳の活性化につながる」ということになります。
そのため、手をたくさん動かすような介護レクの工作がおすすめなのです。
細かい作業なので集中力が必要とされる
手の機能として必要とされるのは「巧緻性(こうちせい)」と呼ばれる機能です。
針に糸を通すことや折り紙を折る、靴紐を結ぶなど、細かい作業を行う時に巧緻性は必要とされます。
細かい作業であればあるほど、作業に集中することができます。
この時、工作を行う内容によって活動する脳領域に差が出てきます。
また「健常者における手指巧緻動作と認知機能の関連」という報告があります。
この報告の中では、巧緻性動作を必要とする運動を行なった際、
判断や注意・集中力、運動コントロールなどの中枢である前頭前野機能の活動が必要とされる。
と報告されています。
手指を用いた介護レクでの工作は脳活動に大きな影響を与え、集中力なども向上することが考えられます。
そのため介護レクで工作を行うのことはかなりおすすめと言えます。
職員一人で多くの利用者さんを見ることができる
上記2つの理由は介護レクの工作が脳に与える影響についてという観点から説明しましたが、
3つ目は現場で働く職員の方にとって嬉しい理由です。
介護レクで行う内容は工作の他に集団運動などがあります。
しかし、集団運動では転倒・転落などのインシデントの関係から職員一人が対応できる
利用者さんの人数が限られてしまいます。
実際、私が働いていた老健では集団体操を行う時に、他の職員に声をかけて集団体操を行なっていました。
そうなると他の業務に時間を割くことができなくなり、残業してでも業務を終わらせる必要が出てきてしまいます。
しかし、工作であれば利用者さんは座って作業に集中するため、転倒・転落の危険が低く、
職員一人でより多くの利用者さんに対応することが可能です。
そのため、介護レクで工作を行うのは、利用者さん・職員双方にとっておすすめなのです。
介護レクの工作例
介護レクで工作を行う理由がご理解いただけたかと思います。
ここからは実際にどういった工作をしていけばいいのかについてご紹介していきます。
明日からの介護レクにも使える内容なので、ぜひ活用してみてください。
アイロンビーズ
まずはアイロンビーズをご紹介します。皆さんも小さい頃に遊んだことがあるのではないでしょうか?
小さいビーズをプレートにはめていく作業であるため、手の巧緻性を必要とし、脳の活性化につながります。
アイロンビーズのデザインは無数にあり、私が働いていた老健ではディズニーキャラクターを作ったりしていました。
牛乳パックで小物入れ
牛乳パックで小物入れを作るのは介護レクの工作で鉄板とも言えます。
こちらの工作は細かい手指の機能はそこまで必要としないので、アイロンビーズが難しい方にはおすすめの工作です。
完成した小物入れに和紙などを貼り付ければ、牛乳パックで作った小物入れとは思えない出来栄えになります。
また作り方をアレンジすれば、ティッシュボックスを作ることもできます。
いろいろ工夫して牛乳パックで工作をしてみてください。
竹細工
竹細工は刃物を使うので結構難易度が高いのですが、利用者さんで作っている方がいました。
手指機能が必要なのはもちろんですが、危機管理能力を有している利用者さんにはおすすめの工作です。
平竹ひごを用意してそれを編み込んでいくことで竹製のボックスが完成します。
見た目はもちろん美しく、機能性にも富んでいます。高い身体機能・認知機能を有している方にはおすすめです。
また、刃物を使う時には職員が代わりに行えるのであれば、より多くの方が竹細工を行うことができます。
貼り絵
貼り絵は多くの施設で行われている工作だと思いますが、王道なだけにとてもおすすめな工作です。
手先の機能はもちろん、完成形をイメージする能力も必要となってきますので、脳の活性化が期待できます。
色や絵の構成など、考えなくてはいけない部分がたくさんあり、一見難易度は高そうですが、取り組みやすく、
利用者さんの受けも良いレクです。
完成した貼り絵を施設に飾ってみると、利用者さんのやる気アップにもつながります。
まとめ
今回は介護レクの工作がおすすめな3つの理由や実際の工作の具体例をご紹介しました。
介護レクでの工作は脳活動を高めるだけではなく、手指の巧緻性改善にもつながります。
さらに少ない職員数でも対応しやすいのでかなりおすすめです。
貼り絵や牛乳パックを使った工作は簡単に始めることができるので、介護レクの工作が初心者の職員にもおすすめですし、利用者さんも取り組みやすい工作かと思います。
工作のレパートリーを増やしていって介護レクで取り入れてみてください。
利用者さんごとに好きな工作も変わってきますので、利用者さんが楽しむことができる工作を見つけるのも職員の大切な仕事の一つです。
ぜひ利用者さんの好みを見つけて、工作を行ってみてください。
手を動かすことで他者とのコミュニケーションも生まれると言われています。利用者さんが工作を通して健やかな時間を送れるといいですね。
参考文献
坪井章雄ら.健常者における手指巧緻動作と認知機能の関連.厚生 の指標.2013;60(1):10-16.