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【音楽療法士とは?】音楽のチカラで心と体に働きかけるエキスパート

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音楽は、場の雰囲気作りや、リラクゼーションに用いるなど身近な存在ですよね。
音楽療法士は、障がい者施設の現場や、認知症の介護において注目を集めている資格です。

この記事では、音楽が人の心と体に与える影響と、音楽療法士の資格取得方法や仕事の内容について詳しく説明していきます。
現場での音楽をセレクトする際や、認知症の方の心身の反応を引き出すヒントとして、是非チェックしてみてください。

【目次】
1.音楽がもつチカラとは
2.音楽療法士の仕事とは
3.音楽療法士になるには
4.まとめ

音楽がもつチカラとは

音楽は私たちの生活において身近な存在です。
例えば、カフェではリラックスを促したり作業の集中力を高める音楽、
スーパーマーケットのBGMは高揚感を促して購買意欲を高めるなどの効果があるでしょう。

音楽は人の心に、そして行動にも、さりげなく影響を及ぼしているのです。
音楽を聞いて涙を流したり、感動したり、リラックスをする。

誰もが経験したことのある、音楽のもたらす効果は心身の健康にも役立っていると言えるでしょう。

では、介護の現場での音楽には、どのようなチカラがあるでしょうか?
以下、説明していきます。

気持ちに作用する

静かな音楽は心が穏やかになり、リラックスした状態になります。
興奮を鎮め、心と体の痛みなども鎮めることもあるでしょう。

脳や体の活性につながる

音楽のリズムによって、動作を引き出す、または心拍が増加することで体の活性につながります。
そして、耳から脳に届き、音楽は脳の活性にもつながるのです。

記憶に作用する

視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚などの五感は人の記憶とも結びついています。
みなさんも子供のころに馴染みのある曲を聴いて、当時のエピソードを思い出した経験はあるのではないでしょうか?
エピソードを思い出したときに、懐かしい気持ちや、切ない気持ち、または、その頃を思い出して「よし、また頑張ろう!」と感情が動くこともあるかもしれません。

認知症の方は、新しい記憶の保持は難しくても、古い記憶ほど保たれている傾向があります。
懐かしい音楽を聴くことで、当時の記憶がよみがえることもあるでしょう。
個人差はありますが懐かしい記憶をたぐりよせることで、安心感や、会話が生まれるきっかけになり、また脳の活性化にもつながります。

ただし、辛い記憶を想起させる音楽を中心に流し続けるのは心に負荷をかけてしまうので、様子に配慮しながら取り入れると良いでしょう。

言葉に替わる表現手段になる

認知症の症状のひとつに、言葉を思い出せない、または言葉がでてこないなどの失語症のような症状があります。
言葉を話そうとしても、スムーズに話せずに孤立してしまう傾向にあります。
そのような症状があっても、メロディに合わせて歌詞を口ずさむのはスムーズな場合が多いようです。

言葉での交流が乏しいなかで、誰かと一緒に歌うことは貴重なコミュニケーション機会のひとつと言えます。
リズムに合わせて手拍子をする、体を動かす、歌うなどで感情の表現にもつながるでしょう。

認知症の周辺症状に作用する

音楽療法が認知症に対しての効果は研究段階ではあるものの、認知症に由来する心理・行動症状に改善がみられたとされる結果もあるようです。
認知症による気力の低下、集中力の低下などの改善や、その他、周辺症状に影響があることが分かってきています。

音楽療法士とは

音楽療法士は、国家資格ではなく民間資格です。
音楽の演奏を通じて障がいのある人や、病気や認知症のある高齢者等に対してアプローチをするプロフェッショナルです。
活躍の場は、病院、介護や福祉施設、特別支援学校など多岐にわたります。
楽器を演奏するスキルはもちろんのこと、音楽のチカラを最大限に利用して心身に働きかける能力が求められます。

そのため専門性の高い知識や技術を身に付ける必要があり、学会認定の団体などで音楽療法士を目指すのが一般的なルートです。
実際の現場では、病態や状況を理解したうえで「治療」として音楽療法を行う意識が求められます。

通常の演奏会であれば、音楽に興味がある人たちに向けて演奏しますが音楽療法では「心身が辛い状態」「心が動かない状態」などの人を対象にすることが少なくありません。

そのため、繊細な変化を見過ごさずにキャッチできる感受性や、粘り強い関わりが必須です。
また、リハビリや介護、養護などの専門職の人たちとの連携も重視される仕事です。

音楽療法士になるには?

音楽療法士の認定を受けられる団体はいくつかあります。

代表的な団体は、日本音楽療法学会全国音楽療法士養成協議会です。
いずれも、高校を卒業してから、学会や協議会が認定する学校へ進むのがスタンダードなコースです。

学会や協議会が認定する学校以外を卒業する方法もあります。
まず、認定校以外の大学や短大、高等専門学校、専門学校を卒業します。
その後、医療・教育・福祉・心理の現場で直接対象者とかかわる実務経験が3年必要です。

試験は、音楽試験と講習会受講、面接となります。
実務経験などの条件を満たし、専門的な内容のカリキュラムを履修、そして試験。
その中には研究発表や、講習会への参加も必修である場合があります。

よって、資格取得の難易度は決して低くはありません。
しかし、人の心や体の治療にあたるための専門知識を身に付けることができ、実践で活かせることができます。
大変ですが、その分やり甲斐も大きい仕事です。

資格の種類

日本音楽療法学会での資格取得は「学会認定音楽療法士」。
全国音楽療法士養成協議会での資格取得は「協議会認定音楽療法士」です。

協議会認定音楽療法士は専修、1種、2種があります。いずれも、この協議会の定める専門的なカリキュラムを一定単位修めることが条件となります。

通信での資格取得

専門学校やスクールなどのうち、通信制をメインにしたカリキュラム受講が可能な養成機関もあります。
資格取得までの期間や、必要な過程がそれぞれ異なるため、自分の生活スタイルにあった得方法を選びましょう。

6.まとめ

認知症の症状緩和には薬剤による治療や、接し方や環境の調整など多岐にわたります。

どれかひとつだけを取り入れるというよりは、複数のアプローチを実践していくことが多く、その中のひとつの手段として音楽療法も注目を集めています。
音楽療法士になるのは簡単ではありませんが、「音楽が好きで演奏に携わっていたい」「人に変化に役立ちたい」そう感じている方には、とてもやりがいのある仕事です。

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参考文献・サイト

「補完代替医療としての音楽療法が認知症に及ぼす効果」日本補完代替医療学会誌第11巻
日本音楽療法学会
全国音楽療法士養成協議会

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