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目的を知れば口腔ケアが楽しくなる

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口腔ケアはきれいにする役目はもちろん、「リハビリの役目」「疾患の予防」にも関わっています。

衛生を保つだけではなく、心と体の健康を支えるのに重要な口腔ケア。
口腔ケアの目的4つを紹介していきます。

【目次】
1.口をきれいにする
2.発熱や他の疾患から守る
3.お口の元気を取り戻す
4.その人らしさを支える
5.まとめ

目的1.口をきれいにする

道具を使ってきれいにする

口腔ケアといえば、歯磨きが代表的ですね。
その他にも、口を掃除するさまざまな道具があり、それぞれ用途があるので個々に合わせてサイズや形態を選ぶことをお薦めします。

特に意識したいことは口腔内を傷めず、しっかり洗浄できるかどうかです。
以下のときは痛みを感じたり、出血しやすいので軟らかい材質を選びましょう。

・あまり口腔ケアをしてこなかったため、汚れが強い
・口が乾いてしまっている
・自分の歯がなく粘膜の掃除がメイン
・歯肉や粘膜が赤らんで、炎症を起こしている

口の中に傷つきやすくデリケートなときは、頬の裏や歯肉などには口腔ケアスポンジを利用すると安心です。

自浄作用をよみがえらせる

口はもともと、自分できれいにする働きをもっています。
自浄作用で代表的なのは唾液です。

私たちも、忙しくてなかなか水を飲めなかったり、長時間話し続けると口の中が乾きますよね。
その時には口臭が気になったりしませんか?
口臭は、口の中の細菌が増えているサインでもあるのです。

唾液は、口の中の汚れや細菌を洗い流し、口の中を潤すことで口腔トラブルを防いでいます。
高齢になると唾液量も減り、口の中が乾きやすくなってきます。
その結果、口腔の問題が生じやすくなっているため小まめなケアが必要です。

歯ブラシや、口腔ケアスポンジを使用した粘膜清掃では唾液腺が刺激され、唾液分泌量が増えていきます。
自分の体に備わった自浄作用で口の清潔さを保つことができるのです。

経管栄養のみで栄養をとっている場合は、口を動かす機会が少ない分、この自浄作用が低下してきます。
口腔ケアは、経口摂取が可能な人だけではなく、経口摂取をしていない場合も非常に重要なことを覚えておきましょう。

目的2.発熱や他の疾患から守る

食べ物だけではなく、空気の入り口が口です。
口の細菌や汚れ、空気や食べ物が胃や肺に届きます。
口のなかにある血管は全身につながっています。
そのため、口腔内衛生は感染や発熱をはじめ、他の疾患にも関係してくるのです。

代表的なのは、誤嚥性肺炎やインフルエンザですね。
その他にも、心疾患や脳血管疾患にもかかわりがあると言われています。

病気から体を守るためにも、口のケアは大切なことが分かります。

目的3.お口の元気を取り戻す

読者のみなさんも、歯磨きをするときに「口を開く」「こぼれないように唇に力を入れる」「歯磨き粉が混ざった唾液を飲みこまないように舌の奥を持ち上げる」など唇や舌を自然と動かすと思います。

腕や指も、とても精密にコントロールして細かい動きを実現しています。
ざっと考えてみても、歯磨きという行為だけでもさまざまな動きをしていることがわかりますね。

口腔ケアの役割で大切なのは、掃除してきれいにすること。
そして、もう一つは、筋肉を動かしたり、刺激をすることでリハビリ効果があることです。
口腔体操にも通じるものがありますね。

口の筋力が弱くなりやすい高齢者にとっては、口腔ケアが口や体の元気につながります。

目的4.みんなの笑顔を支える

ここまでお話ししたように、口腔ケアは口の筋力向上につながることがわかりました。
口の健康が改善すると、どのようなメリットがあるでしょうか?

・しっかり咀嚼、飲み込めることで栄養がきちんと摂れる
・滑舌が良くなり、会話を楽しむことができる
・体と心が元気になる

このようなメリットをみると、口腔ケアは高齢者の心身の健やかさには必要不可欠なことがわかりますね。

お話しができなくなっても口腔ケアは大切

私たちは笑顔や悲しい顔などの表情から、色々な情報をくみ取ります。
人のコミュニケーションには、言葉を使った「言語的コミュニケーション」と、表情や身振りを使った「非言語的コミュニケーション」があります。
コミュニケーションは、言葉だけではないのですね。

読者の皆さんも、日々、さまざまな利用者さんと沢山のコミュニケーションをしながら業務にあたっていることと思います。
その中で、「利用者さんの表情が乏しい。どのような気持ちでいるかもっと知りたい」と思うことはありませんか?

非言語的なコミュニケーションを支える表情。
表情が少しだけ豊かになるだけでも、利用者さんと介護者の気持ちのキャッチボールができるようになります。

いつも無表情の利用者さんに「大丈夫ですか?」「美味しかったですか?」と尋ねて、ニコッと笑顔が見られたら、介護者もほっとしたり笑顔になったりしますよね。
その介護者の表情を見て、また利用者さんもほっとしたり笑顔になるでしょう。

口腔ケアを通じて刺激を加え、口や顔の筋肉を動かすことによって表情変化が生まれることがあります。
傾眠や、表情が乏しく発語が少ないような利用者さんに対して口腔ケアは、重要な意味があるのです。

まとめ

口腔ケアには役割が2つあります。
まず代表的なのは、汚れを取ってきれいにする掃除の役割です。

汚れをとるのは、歯磨きなど道具を使う方法と、唾液量を増やして自浄作用を高める方法があり、口腔ケアによって促されます。

もう一つの役割は、筋力の刺激や運動によるリハビリの側面です。
口腔ケアは、洗浄と機能向上の2つの効果がありどちらも高齢者にとっては重要なものとなります。

口腔ケアは誤嚥性肺炎予防だけではなく、心疾患や脳血管疾患にもかかわりがあることが知られています。
そして、病気から守るだけではなく心の活性化にもつながります。

口腔ケアのリハビリ効果によって、表情や滑舌が豊かになりコミュニケーションの活性化につながるのです。
お話しできる利用者さんだけではありません。
傾眠がち、無表情の利用者さんにとっては表情が豊かになるだけでも、介護者や家族との気持ちのキャッチボールにつながります。

口腔の健康は、心と全身の健康を支える土台といっても過言ではありません。
口腔ケアを通じて、口腔の問題だけではなく、利用者さんの日々の健康をサポートできるようにしましょう。

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