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【寝たきりの方の口腔ケア】役立つ4つのコツ

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寝たきりの方の口腔ケアで役立つ、口腔内特徴やケアのコツを紹介します。
寝たきりの方は体力が弱いことも多く体に負担がかからないように効率的な口腔ケアをすることです。
安全で効率的な口腔ケアができるよう是非、参考にしてみてください。

【目次】
1.寝たきりの方の口腔内特徴
2.誤嚥しにくい口腔ケアのコツ
3.汚れを取りやすくするコツ
4.開口がむずかしいときのコツ
5.まとめ

寝たきりの方の口腔内特徴

寝たきりの方に多い口腔環境

認知症がある場合は、状況を理解するのに時間を要するため口の中や、顔に触れられるのを怖いと感じてしまうことも多いようです。
また、嚥下障害や全身の状態の影響で、口から食事をとらず経管栄養だけで栄養を維持している方もいます。

これらの要因から、自浄作用の低下や口腔ケアの自己管理が難しくなり、口腔乾燥や虫歯などの口腔内トラブルが生じやすくなるのが特徴です。
そのため、コツコツ毎日のケアが重要です。

口腔ケアの回数や頻度

口を動かす機会が少ないほど口腔内の環境は悪化しやすくなるため、「発語が少ない」「経口摂取していない」場合ほど口腔ケアの重要性が高まります。
また、口に触らない日数が触れるほどに、口や顔の刺激に過敏になりやすくなります。
汚れやすくなるだけではなく、刺激に過敏になると口腔ケアが難しくなってしまうのです。

その結果、口腔汚染が更に進んでしまうことがあるため、毎日のケアで口に触られることに慣れておく必要があるといえます。

口腔ケアの回数や頻度に決まりはありませんが、最低でも朝と夜は行いましょう。
できれば、1日3回または利用者さんの状態に合わせて小まめに行うのがおすすめです。

誤嚥しにくい口腔ケアのコツ

姿勢

側臥位

口の端から水分を口腔外に出せるよう、体は横に向けた側臥位(そくがい)にします。

顔の向き

仰向けにしかなれない場合、顔は横に向けます。
麻痺がある場合は、麻痺してる側を上、健康な側を下にします。
麻痺してる側を下にすると、誤嚥しやすく注意が必要です。

ギャッジアップ

ベッドの背もたれを上げることをギャッジアップといいます。
ギャッジアップは20~30度程度上げるようにしましょう。

水の注ぎ方

汚れを流す際、大量の水を一気に注いでしまうことは危険です。
歯列に沿って、少しづず流すようにしましょう。

吸引付き歯ブラシ

痰や老廃物としての粘液などの吸引は、看護師または喀痰吸引研修を受講した介護職員が可能です。
唾液吸引を目的とした、吸引チューブ付き口腔ケアブラシは誰でも使用が可能です。
販売しているメーカーの説明書を確認して使用してみましょう。

吸引チューブは、吸引機に接続して使用します。
吸引機の使い方を看護師に聞いてから始めましょう。
唾液の吸引をする際には、下の奥まで入れないようにします。
嘔吐反射や、傷、痛みなどが生じ危険や苦痛につながるため注意が必要です。

汚れを取りやすくするコツ

基本の手順

1.姿勢の調整
2.口の中を目で見てチェック
 観察項目は、汚れ、乾燥、炎症、虫歯など
3.義歯を外しブラッシング、ゆすぐ
4.水気を絞ったガーゼまたはスポンジで、口の中を頬の裏、歯肉をぬぐう
5.粘膜を傷つけないようにブラッシング
6.舌の上を舌ブラシ、またはスポンジなど軟らかいもので掃除
7.うがい、または水を流し汚れを落とす
8.姿勢の調整

注意点

・磨き残しやすい歯間、かみ合わせ部分、歯の付け根は念入りに
・うがいができない人は歯磨き粉が残りやすい。低刺激液体ハミガキや、緑茶を使用。
・小まめな声掛けで安心感を感じてもらう
・歯ブラシもびちょびちょではなく、水気を切って使う

汚れを取りやすくするケース別のコツ

乾燥

乾燥している場合の対処方法は、2つあります。

1.軽い乾燥:水気を絞ったガーゼやスポンジで清拭
2.強い乾燥:保湿ジェルやスプレーなどを、口腔ケア前と後にする

痰がこびりついている場合

・保湿ジェルを口腔内に塗り、数分おく。
・痰がふやけたら、喉に落ちないように細心の注意を払いながら除去する。
・スポンジや指で取りにくい場合は、看護師に相談をして傷をつけないよう医療用ピンセットなどで除去する。

注意点としては、保湿で置いている間に、誤嚥しないように姿勢や塗り過ぎに気を付けましょう。

歯がある場合

歯や義歯のヌルヌルは、虫歯や歯周炎の原因菌のあつまりです。
流水だけではなく、ブラッシングを必ずしましょう。
ただし、強すぎるブラッシングは歯肉を傷めるので注意が必要です。

歯がない場合

歯がない場合でも、口の中の歯周病菌は増殖します。
唾液分泌を促すメリットもあるので、是非、口腔ケアを行いましょう。

ガーゼやスポンジを使った粘膜の清掃がメインになります。

開口がむずかしいときのコツ

寝たきりの方の中には、口腔ケアの際に開口拒否があることが少なくありません。
そのため、口腔ケアに時間がかかったり、断念せざるを得ないこともありますよね。
難しいケースも多いとは思いますが、口を開けてくれない理由を考えることで、解決するかもしれません。

また、どうしても開口しない場合は関節トラブルや、歯科疾患が潜んでいるケースもあります。歯科医に相談をして、対処法を確認してみましょう。

決して、無理にこじ開けようとするのはやめましょう。

口が開かない理由を考えてみる

口を「開きたいけど開けない」

口を開くには、顔や頭部についている筋肉の働きが必要です。
そして、なめらかな顎関節の動きも必要です。

発語や食べる機会がなく、口を動かす時間が少ない場合はこれらの筋肉や関節の動きが制限されてしまうことがあります。
また、疾患の後遺症によって筋肉が緊張したまま動きが制限されることもあるでしょう。

いずれの場合も、急に動かすと痛みや損傷につながります。
マッサージや、時間をかけて少しづつ開口を試みるなど工夫をしてみましょう。

口を「開きたくない」

私たちも、歯科診察で口に触れられる時は緊張しますよね。
スタッフ同士で試しに口腔ケアをし合ってみても分かりますが、人は他人に口に触れられることが苦手です。

言葉の理解や、状況判断の理解に時間のかかる認知症の方にとってはどうでしょうか?
たたでさえ敏感な口なのに、声をかけなかったり、急に口の中に触られたらびっくりしてしまうことは想像できますよね。
手で払いのけるだけではなく、口もしっかり閉じようとするでしょう。

認知症の方への口腔ケアは、小まめに簡潔な言葉で声をかけ続けることと、顔や口の中など感覚が鋭い場所を最初から触るのは控えると安心感につながります。
不安感を軽減するような働きかけが大切です。

まとめ

寝たきりの口腔ケアで知っておくと役立つ口腔ケアのコツについてお話ししてきました。
寝たきりの方の口腔内は、嚥下障害や、食事機会の減少などにより口の自浄作用が低下し汚れやすい傾向にあります。
また、体力が落ちているため汚れを効率的に取り去る手順も大切です。

認知症の方に多くみられる「開口拒否」。
最初からバイトブロックなどで無理に開けようとするのではなく、開口できない理由を考え、場合によっては歯科医など専門家の意見を仰ぐようにしましょう。

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