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入浴介助における身体の洗い方について

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入浴介助は実際に入浴している時の介助だけではありません。
入浴後の衣服を用意しておき、脱衣所で衣服を脱ぎ、浴室に入り、そして出るまでが入浴介助になります。

また入浴介助で一番大変なのは、身体や髪の毛を洗うことです。
この記事では入浴介助における身体の洗い方についてご説明していきます。

入浴介助の準備

入浴介助を行う前に必要となるものを準備してから行いましょう。
事前に準備ができていないと、利用者さんをその場で待たせてしまったり、本来行えていたはずのケアができなくなってしまいます。
入浴介助は入浴中だけではないため、事前準備もしっかりと行っておきましょう。

バスタオル

入浴介助が終わった後に体を拭くために必要です。
多くの施設ではタオルをレンタルしているかと思いますが、そうでない場合には吸水性の高いタオルを用意しておくと体を拭く時間を短縮することができるので、利用者さんの負担も減ります。

また、体を拭く際には座って行うと利用者さんの負担を減らすことができます。
もし車椅子を利用されている場合には、車椅子にバスタオルをかけておき、一度車椅子に座ってから、身体を拭くことができます。

着替え

あらかじめ着替えを用意しておくことで、入浴後に利用者さんが体を冷やさずに着替えることができます。
オムツを利用されている場合には、オムツの準備も必要になります。

ボディソープやシャンプー

多くの介護施設ではボディソープやシャンプーを用意していると思います。
利用者さんの中には、自前で用意している方もいるため、自前で用意している場合にはそちらの準備もしておく必要があります。

ボディタオル・スポンジ

利用者さんの体を洗うときには、柔らかいタオルやスポンジで体を洗うようにしましょう。
高齢者の方の皮膚は刺激に弱く、硬めのタオルを使ってしまうと擦過傷ができてしまう可能性があります。
なるべく柔らかいタオルやスポンジを用意しておきましょう。

シャワーチェア

介護施設ならどこでも用意があると思います。
立った状態で入浴介助を行うのは、利用者さんにとって負担が大きいです。
なるべく座った状態で介助を行うようにしましょう。

転倒防止マット

お風呂場は大変滑りやすい状態です。
もし滑ってしまい転倒すると骨折の可能性が高いです。
そうならないためにも転倒防止マットを用意しておくといいでしょう。

爪切り

入浴後は爪が柔らかくなっているため、足先・指先の爪を切る絶好のタイミングです。
利用者さんの爪が伸びた状態では、介護職員の皮膚を引っ掻いてしまう可能性もあるため、できるだけ短い状態にしておくことをおすすめします。

入浴介助での洗い方

入浴介助では、いきなり頭からお湯をかけてしまうと、利用者さんの負担になってしまいます。
まずは足元から徐々にお湯をかけていき、最後に頭からお湯をかけるのがおすすめです。

最初に頭・体にお湯をかけてしまうと静水圧の影響で心臓への急激な負担になりやすいです。
そのため、毛細血管の多い足元からお湯をかけ、少しずつ体を温めていきます。

入浴介助で全身を洗う順番は、以下の順番で行うことが多いかと思います。
働いている施設などにマニュアルがある場合には、その順番でいいかと思います。

  1. 足元からお湯をかけていく
  2. 頭を洗う
  3. 頭を流す
  4. 上半身を洗う
  5. 下半身を洗う
  6. 身体を流す

利用者さんがこれまで行ってきた洗体・洗髪方法もあるかと思います。
そういった場合には、利用者さんの希望の順番で洗っていくことが大切です。

入浴介助での洗う順番

体を洗う順番は上半身から下半身が一般的ですが、下半身から洗い始めても大丈夫です。

上半身から洗い始める場合には、首周りから、腕-手先、背中という順番で洗っていきます。
次に下半身は太もも、ふくらはぎ、足先、臀部、肛門、陰部の順番で洗っていきます。
陰部や肛門は利用者さん自身で洗ってもらうように声をかけていきましょう。

体を洗う際には力を入れずに洗っていきます。
高齢者の肌は刺激に弱く、強い力で擦ってしまうと傷ができたり、痛みを感じたりすることがあるので、気をつけましょう。

身体を洗う際の注意点

全身状態の確認

利用者さんの全身状態を確認する機会は入浴時しかありません。
普段生活している時には、衣服を着ているため、手先や指先の確認程度しか行うことができません。

そのため、入浴時に腹部や背部、臀部などの状態を確認します。
特に臀部は褥瘡もできやすい部位のため、発赤がないか、擦過傷がないか、など細かく確認しておきましょう。

まだ創部がある場合には、創部から浸出液が出ていないか、発赤が生じていないかも確認できると良いでしょう。

皮膚状態のトラブルを早期発見することで、早期治療に繋げることができます。
入浴介助を担当する介護職員は異常を発見した際には、医師・看護師に報告するようにしましょう。

洗い残しに気をつける

入浴介助で多いのが、洗い残しです。
ある程度自分で動ける方は、手指・足趾や陰部など自分で流すことができますが、全介助・ストレッチャー浴などの場合には、同部位に洗い残しが出てしまう可能性があります。

洗い残しは皮膚トラブルを悪化させる原因にもなります。
洗い残しがないかを一度確認してから、浴室から出るようにしましょう。

身体の拭き方

入浴が終わり、浴室が出たら身体を拭いていきますが、この時も拭き残しに注意が必要です。
手指・足趾や陰部、脇の下などは拭き残しが起こりやすい部位です。
拭き残しがある状態では、気化熱によって体表面の温度が下がり、寒気を感じてしまいます。

50名の健常被験者について遠藤らが行った研究によれば、清拭直後に水分を拭き取ることで皮膚温の上昇が速まり、60秒後から180秒の間は、拭き取ったほうの皮膚温が高いという結果が出ています。
また、水分を拭き取った後は、速やかに綿毛布をかけて保温することも必要です。同研究によれば、体温の保持に最も有効なのは、清拭後30秒以内に被覆することだといいます。

まとめ

記事では入浴介助における身体の洗い方についてご紹介しました。
介護施設で入浴介助にあたる職員は大変だと思います。

しかし、入浴は利用者さんがその人らしく生きていく上で必要最低限の行為です。
入浴介助の注意点を身につけ、利用者さんが安心して安全に入浴することができる環境を整えていけるといいでしょう。

参考文献
遠藤芳子他:温湯清拭による前腕皮膚温変化の測定―清拭直後に乾布で水分を拭き取る科学的意義―.山形保健医療研究.2.p41-44,1999.

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