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目標を立てると口腔ケアが変わる!

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介護現場において口腔ケアは1日に何度も実施する大切な取り組みです。
毎日行っていると、どうしても漫然としてしまいませんか?
この記事では、そんな悩みに役立つ目標設定のメリットについてお話しします。
目標の役割と、目標の立て方を知って利用者さんの健康に活かしましょう。

【目次】
1.目標設定が役に立つのは、こんな時!
2.【口腔ケア】目標の立てかた3つのポイント
3.目標を考えるときの2つのポイント
4.まとめ

目標設定が役に立つのは、こんな時!

実習や、ケアプランに目を通したことがある方は「目標を立てる」ことの必要性を知っているかもしれません。
または、「そもそも、目標って何?」と思われる方もいるかもしれません。

まずは、介護現場における目標の例を、口腔ケア以外の例を使って分かりやすくご紹介します。

例えば「歩く」を目標にした場合

例えば、「寝たきりの方に歩く」という目標を立てたとします。
寝たきりの方が、歩けるようになるには、どのような準備や工夫が必要でしょうか?

おおまかに考えて
・足を曲げ伸ばしできる
・ベッドから体を起こし、座れる
・立ち上がり、足踏みができる
・少しずつ歩く距離を伸ばしていく

などの準備が必要ですね。

目標がなかったら

もし、目標がなかったら、このようなことがあるかもしれません。

・なんとなく「もう、歩けないだろうな」と決めてつけてしまう
・本当は、少しできる力があるのに介助し過ぎてしまう

悪い目標の例

・「よし!ベッドに座れるから、さっそく廊下の隅まで歩いてもらおう!」
・負荷が高すぎて、本人の体力とモチベーションがが下がってしまう

目標がなかったり、目標の内容があいまだと以下のようにうまくいかなくなる可能性があるのです。

・できる可能性を見逃してしまう
・できない部分ばかり着目してしまう
・体に負荷のかかりすぎてしまう
・過介助になってしまう
・準備や工夫の順番がちぐはぐになってしまう

目標の役割

では、どのような目標がいいのでしょうか?
その説明の前に、まずは、目標のもつ役割をお話ししていきます。

目標の役割

目標には主に以下の役割があります。

・目標までのステップアップの段取りを考えやすくなる
・計画を立てやすくなる
・かかわる介護スタッフ、看護師などと情報共有しやすくなる
・目標に到達するまでに、多職種で役割分担が明確になる

目標のメリット

・家族などに現状や、これからの方針を説明する際の根拠になる
・「今すぐできそうなこと」「その先にできそうなこと」をご家族や、利用者さん本人に説明することでモチベーションの維持や向上につながる
・かかわるスタッフのケアの見直し、あるいは続行の判断がしやすくなる
・医師や歯科医、リハビリスタッフに相談、アドバイスを求める判断材料にできる

【口腔ケア】目標の立てかた2つのポイント

ここからは、口腔ケアの目標についてお話ししていきます。
目標を立てるには、何が必要でしょうか。

1.今の状態を調べる

まずは、今の状態を把握するところから始めます。
施設独自のチェック表がある場合もあるでしょう。
その他には問診表や、検査、専門家の診察などもありますが、こういった評価をアセスメントともいいます。

例えば、口腔ケアでは以下のようなアセスメントがあると良いですね。

口腔状態のチェック

・汚れの多さ
・汚れの場所
・口腔内トラブルは無いか

入れ歯のチェック

・汚れや不具合はないか

口腔のセルフケア能力

・自分できれいにすることができるか
・セルフケアへの意欲

2.問題のある部分を理解する

次に、上記のアセスメントから発覚しやすい問題点の例を紹介します。

口腔内の状態

・汚れがひどく、口臭も強い
・汚れが一か所に顕著にみられる
・炎症や出血がある
・乾燥している
・歯のぐらつき、虫歯がある

入れ歯の状態

・汚れや損傷がある
・外れやすさ、痛みがある

口腔のセルフケア能力

・入れ歯を自ら掃除しようとしない
・入れ歯を軽く水で流しただけでお手入れを終えている
・歯ブラシや、うがいの方法がぎこちなく時間がかかっている
・口腔ケアで疲れやすく、おざなりになっている
・食べかすや、汚れが口にあっても無関心
・舌の上が舌苔(ぜったい)という汚れが堆積した状態でも無関心
・口腔のきれいさを保つ意欲が低い

目標を考えるときの2つのポイント

1.ステップアップで考えると無理が少ない

利用者さん本人、介護者に負担が大きいと無理が生じて継続が難しくなることがあります。
なるべく、本人の意欲や、介護者の時間的または人員的に無理のない目標を考えるのが良いでしょう。

そのためにお勧めしたいのが、いきなり最終目標に近づけようとするのではなくスモールステップで目標設定する考え方です。
最終目標に到達するまでに、小さな目標を設けるとモチベーションやアプローチ方法の修正に役に立ちます。

目標設定の例

アセスメントの結果

・口腔乾燥が顕著
・入れ歯がカパカパ外れてしまい、汚染も強い
・うがいが上手にできず、激しくむせてしまう
・自分できれいにすることが難しい

最終的な目標(大目標・長期目標)

・安全で適切な口腔ケアができるようにする
・誤嚥性肺炎を予防する
・安全に食事がとれる
・笑顔を取り戻し、コミュニケーションを楽しめるようにする

小目標・短期目標

・口腔ケアの前に粘膜清掃をして、口腔内の湿潤を図る
・一定期間ごとの歯科受診(口腔内トラブルを確認、治療、義歯の修正)
・自力では難しい部分だけ介助をうけながら、口をきれいにできる
・1日3回の口腔ケアを行えるようにする、時間になったら声掛けをする
・鏡を使って磨き残しを確認して、口腔衛生への関心を高める
・言語聴覚士などのリハビリや、口腔体操をして口腔器官の筋力アップを図る
・口腔や唾液腺のマッサージをして、唾液の分泌を促す



2.目標はスタッフ間で共有し、定期的に見直す

せっかく考えた目標は、かかわるスタッフや、リハビリ職、栄養士などと共有するのがお勧めです。
自分では考えつかなかったアイディアがひらめいたり、さまざまな面からのアプローチ方法を話し合うきっかけにもなるでしょう。

目標をたて、アプローチをはじめると改めて発見することや、状態の変化がでてくることがあります。
そのため、目標は「一度たてたら、絶対に変えない」のではなく、一定期間ごとに進み具合や、目標は今のままで無理はないかを考えられると良いですね。

まとめ

目標は、今ある困りごとをはっきりとさせ、何をしたらいいかを整理するときに便利です。
コツとしては、はじめから大きな最終目標をいきなり目指すのではなく、小さな目標をめざすようなスモールステップ方式の方がモチベーションの維持や無理が少ないのでお勧めです。
目標は多職種で共有し、日々の口の健康を守りましょう。

東京都福祉保健局 東京都南多摩保健所 要介護高齢者のための口腔ケアマニュアルhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/shikahoken/pamphlet/hokenjosakusei.files/07koukuukcaremanual.pdf
一般社団法人 日本老年歯科医学会 介護保険施設等入所者の口腔衛生管理マニュアルhttps://www.gerodontology.jp/publishing/file/manual_2019.pdf

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