老健やデイサービスなどの介護施設では業務の一環に入浴介助があります。
筆者は理学療法士として病院で勤務していますが、多くの高齢者の方が自宅で入浴を行うことが難しく、デイサービスなどの入浴介助を利用することを勧めたりします。
入浴は一人で行うには高度な身体能力が求められる動作の一つですが、入浴介助を行う際にいくつか注意点が挙げられます。
この記事ではデイサービスなどの入浴介助で気をつける3つのタイミングについてご紹介していきます。
入浴介助ついて
高齢者などの在宅では一人で入浴を行うことが難しい方のために介護保険サービスで訪問介護員による入浴介助や訪問入浴介護を利用することができます。
訪問入浴介護は、入浴介護のために利用者さんの自宅に看護師1名介護スタッフ2名で訪問するサービスです。
普段入浴することができない・人の手を借りないと入浴できない場合や寝たきりの方でも安心して入浴することができます。
訪問介護員による入浴介助は、訪問介護員が1名で自宅にある浴槽を利用して入浴介助を行います。
そのため、利用者さんもある程度動くことができる方が対象になります。
デイサービスなどの入浴介助では1-2名の介護職員がデイサービスに通っている方の入浴介助を行っています。
デイサービスの入浴介助で気をつける3つのタイミング
入浴介助を行う際に気をつけるタイミングが3つ挙げられます。
それぞれ、入浴前、入浴中、入浴後になります。
入浴前
バイタル確認
入浴の前には血圧や脈拍などの体調チェックを行っておきましょう。
血圧が高すぎる低すぎる場合には入浴は控え、清拭などに切り替えるといいでしょう。
また、普段と異なる様子である場合には医師・看護師に報告を行いましょう。
ヒートショック
ヒートショックは急激な温度変化によって生じます。
特に高齢者に多く発生しやすく、冬場になると頻繁に生じるため、脱衣所などは暖かくしておくことが大切です。
ヒートショックを気を付けるタイミングは、
- 脱衣時
- 脱衣所から浴室に入るとき
- 湯船に浸かるとき
- 浴室から脱衣所に入るとき
などが挙げられます。
着替えの準備
準備せずに入浴介助を行ってしまうと、その後取りに行かなくてはならなくなります。
複数名で行っている場合には、利用者さんから目を離さずにすみますが、一人しかいない状況で利用者さんから目を離すのはリスクが高いです。
全身状態の確認
利用者さんの全身状態を確認する機会は入浴時しかありません。
普段生活している時には、衣服を着ているため、手先や指先の確認程度しか行うことができません。
そのため、入浴時に腹部や背部、臀部などの状態を確認します。
特に臀部は褥瘡もできやすい部位のため、発赤がないか、擦過傷がないか、など細かく確認しておきましょう。
まだ創部がある場合には、創部から浸出液が出ていないか、発赤が生じていないかも確認できると良いでしょう。
入浴中
転倒転落
水場は滑りやすく、転倒してしまう可能性が高いです。
大腿骨頚部骨折の多くは転倒による受傷です。
転倒に注意して入浴介助を行っていきましょう。
お湯のかけ方
いきなり頭からお湯をかけてしまうと、利用者さんの負担になってしまいます。
まずは足元から徐々にお湯をかけていき、最後に頭からお湯をかけるのがおすすめです。
最初に頭・体にお湯をかけてしまうと心臓への急激な負担になりやすいです。
そのため、毛細血管の多い足元からお湯をかけ、少しずつ体を温めていきます。
洗う順番
1.足元からお湯をかけていく
2.頭を洗う
3.頭を流す
4.上半身を洗う
5.下半身を洗う
6.体を流す
入浴後
足の裏までしっかりと乾かす
入浴後にはしっかりと乾かした状態で、浴室を出るようにしましょう。
また濡れた状態で歩行を行うと転倒の危険性があります。
足の裏までしっかりと拭いておきましょう。
爪切り・保湿ケア
入浴後は爪が柔らかくなっているため、足先・指先の爪を切る絶好のタイミングです。
利用者さんの爪が伸びた状態では、介護職員の皮膚を引っ掻いてしまう可能性もあるため、できるだけ短い状態にしておくことをおすすめします。
また、高齢者の方は水分摂取量が少なくなりやすく、乾燥しやすくなります。
そのため、クリームなどを使った保湿ケアを行えるといいでしょう。
水分補給
入浴に伴い発汗していることがあります。
発汗した状態を放置しておくと、脱水症状を呈する可能性があります。
そのため、入浴後には必ず水分補給を行うようにしましょう。
バイタル確認
入浴前と入浴後で血圧や体温などに変化がないかを確認しておきましょう。
入浴後に著しく血圧上昇や血圧低下があった場合には、医師・看護師に報告するようにしましょう。
入浴介助における入浴の効果
入浴には温熱効果と呼ばれる効果があります。
温熱効果は末梢血管を拡張させ、血流を増加させます。
血流が増加することで、体内の老廃物質や疲労物質が取り除かれ、疲労回復・痛みの軽減などに繋がります。
また、温熱効果の他に浮力効果というものがあります。
水の中では浮力が働くため、湯船に浸かっている時の体重は地上にいるときの体重の1/10程度になります。
そのため、地上にいるときには全身を支えるために活動している筋肉も、水の中に入ると活動しなくて済むため、全身の緊張がほぐれていきます。
湯船に浸かる時間
湯船に浸かることで、お湯に浸かっている部分には静水圧という圧力がかかります。
静水圧というのは水の重さのことです。
静水圧が身体の一部分にかかることで、静脈還流量が増加し血圧・心拍数・心拍出量が増加します。
この状態が長く続くことで、心臓への負担となる場合があります。
また、静水圧がかかっている状態から、急に湯船から出ると静水圧がなくなり血圧低下や心拍数が減少し、失神・めまいなどが生じることがあります。
そのため、高齢者では湯船に長時間浸からないよう気をつけ、急激に立ち上がらないように注意が必要です。
まとめ
この記事ではデイサービスなどの入浴介助で気をつける4つの注意点についてご紹介しました。
入浴介助は介護の仕事の中でも大変な仕事です。
その上でインシデントなどが生じてしまうと、疲労困憊してしまいます。
今回ご紹介した3つのタイミングで注意することを気にしながら、安全に入浴介助を行ってみてください。
入浴にはリラックス効果もあるため、利用者さんが安心してリラックスできる環境を整えるのも大切な仕事です。
施設などによっては日替わりで入浴剤を入れている場所もありますね。
ぜひ明日からの業務の参考にしてみてください。