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口腔ケアの手順~ケース別対応~

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口腔ケアには掃除と筋力を保つ両方の役割があります。口腔ケアに必要な必要な道具の種類と、基本の手順を知って効果的なケアを実践しましょう。ケース別の口腔ケア方法も詳しく解説していきます。

【目次】
1.口腔ケアの役割
2.口腔ケア用品と手順
3.口腔ケアの方法~ケース別対応~
4.まとめ

口腔ケアの役割

器質的口腔ケア

汚れを取りキレイにする役割です。歯ブラシなどを使って、汚れを取り除いていきます。

機能的口腔ケア

刺激や動きは筋力にも良い影響があり、筋力の維持などにもつながります。これを機能的口腔ケアと言います。

この役割は、高齢者や、経管栄養など口から食事をとらなくなった場合など、口腔機能が低下しやすい状態にはとても大切になります。

基本の口腔ケア用品と手順

口腔ケア用品

口に触れる口腔ケア用品などの道具は感染症対策の面から個別での使用が推奨されます。ガーゼ、スポンジは使い捨てタイプの使用が安心ですね。介助者が利用者さんの口に触れるときや、義歯に触れるときも使い捨ての手袋をすると衛生的です。

【基本の道具】
・歯ブラシ
・歯間ブラシ
・舌ブラシ
・手袋
・ガーゼ
・スポンジブラシ
・ガーグルベース(洗面台まで顔を前かがみに出来ない場合)など

手順

口腔ケアでは、しっかり時間をかけて行うことは大事ですが、体力がない場合など疲れてしまうこともあります。その場合は、手短にしっかりきれいにできるよう、手順を決めて疲労や苦痛に配慮することも大切です。

「歯磨きしましょう」「口に触れますね」など説明をして、利用者さんの同意があってから口腔ケアをはじめましょう。認知症がある場合は、声掛けせず突然始まると驚いてしまうことがあるので配慮が必要です。

【基本の手順】
・道具を揃える
・姿勢を整える
・口腔内をチェックする
・乾燥があれば潤す
・入れ歯は外して洗うようにする
・粘膜の清掃やブラッシングをする
・清拭(ぬぐう)や、含嗽(うがい)
・乾燥があれば保湿

一律に全介助してしまうのではなく、利用者さんごとの能力に応じて自力では難しいところを部分介助しましょう。

【磨きの残しの多い部分】
・歯間
・歯の付け根
・奥歯
・入れ歯の金具があたる部分

口腔ケアの方法~ケース別対応~

義歯

合わない義歯や、破損、不衛生な義歯を使用していると、口腔内のトラブルが起きてしまいます。義歯を付けたまま歯磨きをするのではなく、外して義歯も洗うようにしましょう。

ぬるぬるしている場合、細菌が付着していることが考えられます。水で洗い流しただけでは落ちません。必ずブラシを使って落とす必要があります。

汚れの残りやすいところは、入れ歯の端や、歯茎との接触部分、入れ歯の内面(くぼみ)や歯間です。しっかり磨きましょう。

入眠中や、義歯を外している間は洗浄剤を入れた水の中に浸けておきます。ただし洗浄剤だけでは、汚れは落としきれません。必ずブラシを使って磨いてから洗浄剤で保管しましょう。

食べてない(経管栄養・胃ろう)

介護では、経管栄養や胃ろうから栄養を維持しているケースも少なくなりません。口から食べていないほうが、唾液が減り口腔内環境が悪化しやすくなるため、口腔ケアは必ず行いましょう。
口腔内を清潔に保つだけではありません。唾液量を増やしたり、口腔器官の筋肉を刺激する効果も期待できます。

口腔ケアの刺激による嘔吐反射で嘔吐にもつながるので、栄養を注入した直後は避けて口腔ケアを行うようにしましょう。

含嗽(がんそう)

上をむいてガラガラうがいをすることを「含嗽」といいます。ただし、麻痺や筋力低下で口を閉じれない場合や、認知機能の低下によってガラガラうがいが出来ない場合はやめておきましょう。下を向いて口の中をゆすぐと安心ですね。

粘膜をきれいにする

歯がなくても口腔ケアは必要です。水気を絞った口腔ケアスポンジや、ガーゼで清拭します。

口の中や唇が乾燥していると切れて出血しやすくなるので、注意が必要です。湿らせたガーゼを乾燥部分に数秒から数十秒あてがい、しっとりするまで待ちます。すると、湿潤し皮膚が切れにくくなります。

乾燥した痰は硬くなり上あごにこびりつくやすくなります。保湿で痰をやわらかくしてから、やさしく取り除きましょう。その際、舌の奥に落とさないように注意が必要です。

噛んでしまう場合は、ガーゼやスポンジ誤飲の危険があるので「怖くて口をとじてしまうのか」「筋肉がこわばって口が閉じてしまうのか」など理由を考る必要があります。恐怖心を和らげる工夫や、ポキッと折れず軟らかい材質のものを噛んでもらうなどの工夫も考慮してみましょう。

麻痺がある

頬や唇、舌などが麻痺で動きにくい場合は、汚れが残りやすく注意が必要です。特に、感覚が鈍くなっている場合は、自分でも汚れや食べ物が残っていることに気が付けません。

口腔ケアを行う前と、行った後に口の中をチェックして残りがないか確認をしましょう。手鏡を使いながら歯磨きをしてもらうのも自分で確認ができるので良いですね。

また、口の中に水を流して洗浄する場合は、麻痺側から健側に向けて流すようにしましょう。むせにくくなります。

利き手に麻痺があると、歯ブラシをうまく持てません。電動歯ブラシは持ち手が太く握りやすく、細かい操作が不要なのでおすすめです。

寝た姿勢のまま

横たわったままの臥位(寝た姿勢のこと)口腔ケアは全介助で実施することも少なくないでしょう。

横たわったままの口腔ケア中の唾液誤嚥にも注意が必要です。ヘッドアップして顎を軽く引いた姿勢にする。ヘッドアップが難しい場合は、身体を横向きにして口腔ケアをしましょう。または、口の中の水分や唾液を吸引しながらすすめても良いですね。

ガラガラとうがいができない場合は、絞ったガーゼや、スポンジブラシできれいにするようにしましょう。

まとめ

誤嚥性の肺炎予防をはじめ、健康全体にもかかわる口腔ケア。掃除だけではなく、口の筋力維持にもメリットがあります。

口から食べていない口腔内はかえって細菌が増えやすく、口腔ケアを欠かさず行う必要があります。

口腔ケアはやみくもに長い時間をかければ良いわけではありません。汚れやすい部分を把握して、手順を決めて効率的にすすめられるようにしましょう。

【参考資料】
(2010)フランスベッド:口腔ケアとは?https://medical.francebed.co.jp/special/column/28_oral_care.php
日本訪問歯科協会:実践!口腔ケアhttps://www.houmonshika.org/oralcaremanual/m27/

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