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口腔ケアが高齢者にとって大事な理由

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高齢者では加齢変化によって口腔ケアの必要性が高まります。高齢者の口腔内に生じる特徴的な変化と、口腔ケアの利点を詳しく解説!注意したいポイントも説明します。

【目次】
1.高齢者の口腔内変化~3つの特徴~
2.高齢者の口腔ケアにおける利点
3.高齢者の口腔ケアのポイント
4.まとめ

高齢者の口腔内変化~3つの特徴~

1.口を綺麗にする働きが弱くなる

私たちは、口の中を唾液で綺麗にする「自浄作用(じじょうさよう)」があります。唾液を常に口に流すことによって舌や歯、粘膜に付着した汚れや細菌を減らすことができるのです。

【唾液の働き】
・粘膜の保護
・舌や口がなめらかに動くよう潤滑剤の役割
・抗菌
・消化
・組織の修復

唾液の分泌量は健康な成人で一日1~1.5リットルほどあると言われていますが、加齢変化によって唾液量が減ってしまいます。

【唾液減少による影響】
・虫歯、歯肉の炎症
・味覚の鈍麻や、変化
・入れ歯が合わなくなる
・飲み込みにくい
・口が滑らかに動かず話しにくい
・口臭
・消化力が低下する

2.虫歯などの口腔内トラブルが発生しやすくなる

唾液が減ると、食べカスが長時間とどまり細菌も増えやすい状態になります。そのため、自浄作用が低下してしまい歯肉の炎症や、虫歯になりやすくなってしまうのです。

また、高齢になると、歯の根本に隙間が生じてしまい、汚れが残りやすく、口腔トラブルも生じやすくなります。義歯に付着した汚れも、虫歯などの引き金になるため注意が必要です。

3.入れ歯が合わなくなる

「入れ歯をいつ作ったか思い出せないくらい、長く使っている」という利用者さんを時折みかけませんか?年齢とともに、歯肉・歯の向きや間隔が変わります。そのため、自分に合う入れ歯も年々変化していくのです。

合わない入れ歯を使っていると、痛みや違和感で食欲や嚥下にも影響がでてきます。

高齢者の口腔ケアにおける利点

「綺麗にする」役割だけではなく、「動きを向上させる」役割も口腔ケアにはあります。

高齢者は年齢を重ねるにつれて足腰だけではなく口の器官も筋力が低下することが増えていきます。そのため、口腔ケアの「筋力を保ち、向上させる」という面が大切な役割を果たすのです。

では、具体的にどのような利点があるのでしょうか?5つ紹介します。

唾液分泌を促す

口腔ケアは唾液腺の刺激になります。それにより、唾液が分泌され口腔内の自浄作用が高まります。

全身の健康にも影響する

口の中の細菌(歯周病菌)は、唾液だけではなく血液にのって全身に運ばれることがあります。すると、虫歯だけではなく、全身の疾患を引き起こしかねません。代表的な疾患のひとつに「誤嚥性肺炎」があります。高齢者の介護で関心の高い疾患の一つですね。

口腔ケアは口だけではなく、全身の健康にも良い影響があると言えるのです。

口腔器官の筋力低下を予防する

高齢者は、足腰が弱くなるのと同じように口や顔の筋力も弱くなる傾向があります。

加齢変化は止めることはできませんが、日々コツコツと続ける口腔ケアによって口腔機能の低下を遅らせることが期待できます。また、食べにくい・話しにくいなど問題が生じてしまっても口腔ケアを続けることで、緩やかに改善できることもあるでしょう。

認知症や寝たきりで嚥下障害が重い利用者さんは、口腔体操がスムーズにいかないケースもあります。そのような時も、口腔ケアの「機能維持改善」の働きが役立つでしょう。

脳の活性化

口の中は全身のなかでも敏感な器官です。動かしたり感じたりする働きは脳の運動野と感覚野が司っています。口、顎、舌などは「運動野と知覚野の1/3」という広い部分を占める重要な器官と言われています。

口を動かす、味や温度を感じる、触れると脳の広い部分を刺激することになり、脳の活性化につながるのです。「口腔ケアは認知症予防にも関係がある」と言われているのは、このようなメリットからでもあるでしょう。

心と体の活性化

口腔ケアを通じて口腔器官が動かせるようになるメリットは、食べやすくなり栄養がしっかりとれるようになるだけではなりません。口や表情が動かしやすくなることによって、会話や笑顔も豊かになり生活の質を上げることができるでしょう。

口の健康は、心と体の活性化にもつながるとも言えます。

高齢者の口腔ケアのポイント

問題があれば専門家に相談する

日々の口腔ケアは口腔内をチェックできる貴重な時間です。歯肉の腫れ・口臭・歯のぐらつきなどをチェックしましょう。もし、問題をみつけたら歯科医や歯科衛生士に相談をしてみましょう。

必要以上に介助をしない

介護では自分では出来ない部分をサポートするのが基本の考え方ですね。口腔ケアも同じように、必要以上に介助をしてしまわないように気を付けましょう。

拒否があったら無理をしない

高齢者の介護の現場では、「口を開けたがらない」「歯磨きを嫌がる」など拒否があることも少なくないでしょう。無理やり続けずに、理由を考えてケアの方法を工夫するようにしましょう。

状態に合った口腔ケア用品を準備する

歯肉や粘膜の炎症、口腔乾燥がある場合は、痛みを感じてしまいやすいので柔らかいスポンジブラシを使うなど、利用者さんに合った口腔ケアグッズを利用しましょう。

誤嚥しにくい姿勢をとる

口腔ケアの最中は、唾液が分泌されやすくなっています。そのため、飲食の時と同じで、顎が上がった姿勢は水だけではなく、唾液も誤嚥しやすくなってしまいます。軽く顎を引き、やや前傾がとれるよう姿勢を整えましょう。

まとめ

高齢者は「唾液が減る」「口の筋力が衰えやすい」などの特徴から、虫歯や全身の疾患を引き起こすなどの原因にもなります。「掃除」と「口腔機能を保つ」役割が期待できる口腔ケア。食事や笑顔のも増え、心身の健康にもつながります。

【参考資料】
(2019)健康長寿ネット:口腔ケアの重要性https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ha-kokushikkan/kokucare-hitsuyosei.html
(2012)厚生労働省:口腔機能の向上マニュアルhttps://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/tp0501-1.html
日本口腔保険協会:高齢者のお口の健康https://jfohp.or.jp/okuchikenko_navi/senior/index.html
厚生労働省eヘルスネット:唾液分泌https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-004.html
厚生労働省eヘルスネット:要介護高齢者の口腔ケアhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-08-003.html
(2011)ExpertNurse『あたながはじめる摂食・嚥下・口腔ケア』照林社

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