介護業務の上で欠かせないのが入浴介助です。
体を清潔に保つということは、人としての尊厳を保つ上で最低限の欲求です。
また、体を清潔に保つということは種々ある感染症などから身を守るためにも必要な行為です。
しかし、施設などでは自分自身で体を洗うことが難しい利用者さんなどもおり、そういった場合には入浴介助を行う必要が出てきます。
自身の体を洗うのとは異なり、他者の体を洗うのは難しい行為です。
この記事では、難しい入浴介助を行う上での4つのポイントをご紹介していきたいと思います。
入浴介助で用意するもの
まずは利用者さんなどの入浴介助を行う前にいくつか準備をしておきましょう。
- バスタオル
- 着替え
- ボディソープ
- ボディタオル・スポンジ
- シャワーチェア
- 転倒防止マット
- 爪切り
- ドライヤー
上記のものは最低限準備しておく必要があります。
準備せずに入浴介助を行ってしまうと、その後取りに行かなくてはならなくなります。
複数名で行っている場合には、利用者さんから目を離さずにすみますが、一人しかいない状況で利用者さんから目を離すのはリスクが高いです。
必ず用意しておきましょう。
介護職員が用意しておくと便利なのが以下の3つです。
- エプロン
- ゴム性の靴
- 手袋
介助者自身も濡れてしまうため、濡れても大丈夫なように防水性のエプロンや靴などを用意しておくといいでしょう。
入浴介助の4つのポイント
最低限の準備ができたら入浴介助を行っていきます。
ここからは入浴介助に気をつけたい4つのポイントをご紹介していきます。
体の状態を確認する
利用者さんの全身状態を確認する機会は入浴時しかありません。
普段生活している時には、衣服を着ているため、手先や指先の確認程度しか行うことができません。
そのため、入浴時に腹部や背部、臀部などの状態を確認します。
特に臀部は褥瘡もできやすい部位のため、発赤がないか、擦過傷がないか、など細かく確認しておきましょう。
まだ創部がある場合には、創部から浸出液が出ていないか、発赤が生じていないかも確認できると良いでしょう。
体調チェック
入浴の前後で血圧や脈拍などの体調チェックを行っておきましょう。
血圧が高すぎる低すぎる場合には入浴は控え、清拭などに切り替えるといいでしょう。
また、普段と異なる様子である場合には医師・看護師に報告を行いましょう。
安全第一
入浴介助を行う際にはバリアフリー対応になっていたり、福祉用具が用意されているため、安全性は保たれているかと思います。
もしご自宅で行う場合には、段差に注意をしたり、シャワーチェアを用意するなど安全に配慮して入浴介助を行う必要があります。
また、バスボードがあると浴槽に入りやすくなります。
水場は滑りやすく、転倒してしまう可能性が高いです。
大腿骨頚部骨折の多くは転倒による受傷です。
転倒に注意して入浴介助を行っていきましょう。
できるADLからしているADLへと
できるADLとしているADLという言葉があります。
できるADLとは、リハ場面では一人で行うことができるが、環境が変わると一人で行うことができないADLのことを指します。
またしていいるADLとは、その方が普段から行うことができているADLを指します。
入浴などの介助はできるADLをしているADLへと向上させていくことが大切です。
しているADLとできるADLの乖離が大きい場合には、一見すると一人で動作が行えているように見えても、転倒リスクが潜んでおり、在宅生活などでは注意が必要になってきます。
機能的には一人でできるのに、ついつい過介助になってしまうことも多くあります。
利用者さん自身が行うことができる内容は利用者さん自身に行ってもらうようにしましょう。
入浴に関わる動作である、着衣や脱衣も自身で行うことができる場合には自身で行ってもらいましょう。
入浴後のポイント
入浴後にもいくつかのポイントがあります。
1.体や頭部をしっかりと拭く
体や頭部が濡れている状態では体調悪化につながる可能性があります。
入浴後にはしっかりと乾かした状態で、浴室を出るようにしましょう。
また濡れた状態で歩行を行うと転倒の危険性があります。
足の裏までしっかりと拭いておきましょう。
2.清潔な衣服に着替える
入浴後には清潔な衣服に着替えましょう。
着替える際には椅子に座った状態で着替えることで、転倒のリスクを最小限にすることができます。
3.水分補給を行う
入浴に伴い発汗していることがあります。
発汗した状態を放置しておくと、脱水症状を呈する可能性があります。
そのため、入浴後には必ず水分補給を行うようにしましょう。
4.爪切り
入浴後は爪が柔らかくなっているため、足先・指先の爪を切る絶好のタイミングです。
利用者さんの爪が伸びた状態では、介護職員の皮膚を引っ掻いてしまう可能性もあるため、できるだけ短い状態にしておくことをおすすめします。
5.体調変化がないかを確認する
入浴前と入浴後で血圧や体温などに変化がないかを確認しておきましょう。
入浴後に著しく血圧上昇や血圧低下があった場合には、医師・看護師に報告するようにします。
入浴介助加算について
今年度の介護報酬改定で、入浴介助加算の疑義解釈が発表されました。
対象となるのは、浴室がなく住まいで入浴をできない利用者や心身機能を大幅に改善しなければ住まいでの入浴ができない利用者です。
以下の5項目を満たせば入浴介助加算Ⅱを算定することができるようになりました。
- 事業所の浴室で医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャー、機能訓練指導員などが利用者の動作を評価する。
- 福祉用具など自立した入浴に向けて必要な設備を事業所に備える
- 事業所の機能訓練指導員らが共同で、利用者の動作を評価した人とも連携し、利用者の身体状況や事業所の浴室環境などを踏まえた個別の入浴計画を作成する。
※ 個別の入浴計画を通所介護計画の中に書き込むことも可。 - 個別の入浴計画に基づき事業所で入浴介助を行う
- 入浴設備の導入や心身機能の回復などにより、事業所以外の場所での入浴が想定できるようになっているかどうか、個別の利用者の状況に照らし確認する。
まとめ
この記事では、難しい入浴介助を行う上での4つのポイントをご紹介しました。
入浴は人が人らしく生活を営む上で最低限の行為です。
ぜひ利用者さんや高齢者の方が気持ちよく入浴を行えるよう工夫をしてみてください。
また、入浴介助加算についての資料もリンク先を記載しておきますので、一度目を通しておくと業務に活かすことができますよ。