60歳代になると脳血管性認知症を発症する方が徐々に増えてきます。
また70歳代になるとアルツハイマー型認知症を発症する方が増えていきます。
脳トレを行うことで、認知機能や記憶力に対して効果的であることが報告されています。
そのため、認知機能の維持を図るためにも60歳代から脳トレを行うのがおすすめです。
この記事では脳トレの効果や60歳からの脳トレにおすすめな自宅でも簡単に行える内容を紹介していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
60歳から脳トレを始めて認知機能の維持を図る
これまで脳トレと脳機能の関係についてはいくつも研究がされてきました。
最近の研究だとIntellectual engagement and cognitive ability in later life (the “use it or lose it” conjecture): longitudinal, prospective studyという研究があります。
この研究では子供の頃に知能テストを行った498人を対象に、およそ64歳から15年間、計5回の認知機能テストを実施しました。
その結果、脳トレは認知機能に効果なし、と報告をしています。
しかし、知的活動を頻繁に繰り返している場合には、年齢を重ねてもある程度の認知機能は保たれていることもわかっています。
2019年にはAn online investigation of the relationship between the frequency of word puzzle use and cognitive function in a large sample of older adults.という論文で、クロスワードや数独などの脳トレを定期的に行っている50歳以上の人はより優れた認知機能を有している。ということを報告しました。
さらに、定期的に脳トレを行っている人は注意力や推論力、記憶力の機能が優れていたとしています。
また、脳トレに取り組んでいる人は取り組んでいない人に比べて、平均すると8歳程度脳の機能が若かったとしています。
否定的な報告もありますが、継続的に脳トレを行うことは脳機能にとって良い影響を与えることが考えられます。
何もしなければ、人の脳機能は20代後半をピークに徐々に低下していきますので、少しずつ脳トレを取り入れていく必要があるかと思います。
次からはおすすめの脳トレについてご紹介していきます。
どれも手軽に行うことができる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
簡単な計算
四則演算を使った簡単な計算は脳トレとして有効です。
単純に計算をするのではなく、一枚の計算問題を解き終わるのにかかった時間を測定しておき、次の日は昨日より速く、明日は今日よりも速く、ミスもより少なく、としていくことで、脳にプレッシャーがかかり、より一層脳の活性化が期待できます。
漢字クイズ
漢字は日本人にとって馴染みの深いものです。
その漢字を使って脳トレを行うことで、脳の活性化が期待できます。
レクシルにはことわざを使ったクイズも用意されています。
そちらもぜひ活用してみてください。
脳トレにはパズルもおすすめ
パズルにはクロスワードパズルやジグソーパズル、数独、工作パズルなどさまざまな種類があります。
いずれのパズルでも脳トレの効果が期待できるため、パズルはを使った脳トレはおすすめです。
パズルが脳トレにおすすめな理由は以下の4点です。
- 認知症予防
- レベルに合わせて難易度調整可能
- 手を使う細かい作業
- 細かい作業なので集中力が必要とされる
パズルなどの手遊びが脳トレに効果的な理由
「第二の脳」とも呼ばれる手。
手を使った運動を行うことで、脳は活性化されていきます。
脳には手足に対応した領域が存在しています。
この領域は「感覚」と「運動」の2種類が存在しています。
「ホムンクルスの小人」というもので表されているのは、脳において手の領域が占める割合がかなり多いということです。
これは感覚も運動もどちらも、手がかなりの割合を占めています。
つまり、手をたくさん動かせば動かすほど脳に刺激が送られ、脳の活性化につながるということになります。
認知症について
認知症には脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症があります。
レビー小体型認知症は認知症の中でも10~15%と頻度は少ないです。
もっとも多いのはアルツハイマー型認知症です。
ここからはそれぞれの認知症について詳しくご紹介をしていきます。
アルツハイマー型認知症
認知症の中でもっとも頻度の高いのがアルツハイマー型認知症です。
認知症全体の50~60%を占めると言われています。
アルツハイマー型認知症は徐々に進行していくため、自覚症状は乏しいです。
また、合併するその他の病気もないため、なかなか気づきにくいです。
アルツハイマー型認知症の主な症状としては、落ち着きがない・多弁・見当識障害などを認めます。
アルツハイマー型認知症が発症する前には、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる状態であることが多いです。
MCIは「最近疲れやすい・忘れ物をすることが多い」など、認知症ではない状態ですが認知機能の低下を認める状態です。
MCIを放置しておくと5年以内に50%の確率で認知症を発症すると言われています。
また、MCIの原因はアルツハイマー型認知症と同様、アミロイドβなどの過剰蓄積が要因であることが報告されています。
そのため、MCI→アルツハイマー型認知症発症となります。
MCI・アルツハイマー型認知症の対応は早期発見・早期治療が有効です。
自覚症状が乏しいため、同居人や親族が気付くことができるのが大切です。
「おや?」
と思ったら長谷川式スケール(HDSR)やミニメンタルステート試験(MMSE)の測定をしてみるのも良いと思います。
脳血管性認知症
脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症についで多く、20~30%を占めます。
アルツハイマー型認知症とは異なり、合併する病気に高血圧や糖尿病、脂質異常症などがあります。
また、段階的に症状も進行していき、ふらつきやめまい、脱力感などの自覚症状もあるため、気づきやすいのが特徴です。
主な症状としては、感情失禁やうつ状態、せん妄などがあげられます。
脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症は合併することもあり、混合型認知症とも呼ばれています。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症はパーキンソン症候群に合併します。
そのため、症状としてはパーキンソン症候群の症状に類似してきます。
動作緩慢や幻覚、昼間の眠気などです。
薬が効いている時間・効いていない時間などによって症状は変動します。
中核症状と行動・心理症状(BPSD)
認知症の症状には中核症状と行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状があります。
中核症状は記憶障害や見当識障害など、認知機能低下に伴い生じる症状を指します。
それに対してBPSDは中核症状に付随して発生する症状と言われています。
BPSDには以下のような症状があります。
- うつ・アパシー
- 徘徊
- 暴言暴力
- 易怒性
病院で働いていると認知症に伴うさまざまな症状を目にすることがあります。
患者さんそれぞれで生じる症状は異なりますが、本人を否定せず落ち着くのを待つのが大切かと思います。
身近に認知症の方がいる場合には、焦らずご本人が落ち着くのを待ってみるのも良いでしょう。
参考文献