レクリエーションは介護施設などで多く取り入れられています。
さまざまな種類のレクリエーションがありますが、レクリエーションの内容によっては簡単に認知症予防をすることができます。
この記事では高齢者向けレクリエーションで簡単に認知症予防を行うことができる内容をご紹介していきます。
認知症予防に効果的なもの
加齢に伴い認知症は進行していきますが、認知症の予防に効果的なものは以下のことが報告されています。
- 運動
- 生活習慣
- 他者交流
- 脳トレ
- 睡眠
今回は手軽に行うことができる運動と脳トレをご紹介していきます。
認知症予防のための運動
ボッチャのアレンジ
ボッチャは手で投げて行う競技ですが、足で蹴るのもOKです。
足で行う場合には、新聞紙で丸めたボールを使うのがおすすめ。
床に点数票を置いておき、2〜3m離れた位置からボールを蹴ります。
手で投げて行うボッチャに比べると難易度が高くなりますが、蹴る場合には得点を1.1倍〜1.2倍などとアレンジすると盛り上がること間違いなしです。
新聞紙やぶり
パンチやキックで新聞紙を破る簡単な体を使った運動です。
パンチでは上肢の、キックでは下肢の筋力維持・向上効果が期待できます。
高齢者の方のストレス発散にはもってこいです。
やり方は、介護職員が新聞紙を半分に切ったもとをピンと張って前に立つ。
利用者さんは新聞紙の真ん中に向かってパンチを打つ。
立ってできる方は立ってパンチ・キックをしてみましょう。
※キックをするときには、特に転倒に注意をしておきましょう。
介護職員が2人以上参加できる場合には、一人は新聞紙をもち、もう一人は利用者さんが転びそうになったときにすぐに支えられるように、近くで待機しておきます。
運動の効果
認知症予防のための運動では以下のようなことが報告されています。
- 運動は認知症発症数を減少効果
- 歩行量が多いほど認知症予防に効果
- 運動が認知機能を改善効果
- 週2-3回の運動が認知症予防に効果的
これまでに報告されてきた論文では、多くの文献で身体活動および運動が認知機能低下および認知症の発症に対して防御的な効果があることを報告しています。
またイタリアの研究では、よく歩く群では脳血管性認知症の発症リスクが有意に少なくなったが、アルツハイマー型認知症では、明らかな差は見られず、認知症のタイプにより運動の効果に差があることが示されています。
脳血管制認知症の予防にはたくさん歩くことがいい可能性があります。
運動と認知機能の関係をを報告している研究では、主観的および客観的に軽度の認知障害を呈する高齢者において自宅で運動プログラムを実施させたところ、認知機能が軽度に改善したことを報告しています。
運動プログラム中止12ヶ月間は効果が持続したと合わせて報告をしています。
運動の頻度に関する報告として、65歳から79歳の地域在住高齢者を対象とした研究では、中年期に週2回以上の身体活動を行うことは、認知症発症のリスクを有意に減少させ、アルツハイマー病のリスクも有意に減少させると報告しています。
またシアトルでの報告では、65歳以上の地域高齢者を対象とした場合、週3回以上の運動をした群では、そうでない群に比べて認知症の発症が少ないことを報告しています。
厚労省が出している資料では、高齢者は下肢や体幹の筋力トレーニングを週2回程度、レクリエーション活動や軽スポーツを週3回程度行うことをすすめています。
体を使ったレクは「レクシル」で多く紹介されていますので、ぜひそちらを参考にしてみてください。
認知症予防のための脳トレ
イントロドン
高齢者の方が馴染みのある音楽でイントロドンを行うと盛り上がります。
3〜4人程度のチーム制にして行うことで、他者との交流する機会が生まれます。
また音楽を使ったレクは、音楽を使わないレクよりも多くのメリットがあります。
ぜひ音楽を使うことができる介護施設ではイントロドンを試してみましょう。
字ぬき歌
あらかじめホワイトボードに歌詞を書いておきます。
歌詞の中に出てくる特定の文字は歌わずに手を叩く、というレクです。
例えば、「むすんでひらいて」の場合には「て」の文字は歌わずに、手を叩きます。
「むーすーんーでーひーらーいー(パン)」となります。
やってみると意外と難しいので、ぜひ取り入れてみてください。
脳トレの効果
脳トレの効果については2018年の老年精神医学の雑誌である「International Journal of Geriatric Psychiatry」で報告がされています。
この研究ではイギリス人の方を対象としています。
この研究によると、クロスワードパズルや数独などを定期的に行っている50歳以上の人は、より良い脳機能を持っていると報告されています。
対象者数は19,000人とかなりの大人数で、どのくらいの頻度で言葉と数字のパズルを行っているのかを聞き取り、認知機能のテストを実施しました。
その結果、定期的にパズルなどに取り組んでいる人ほど、注意力・推論力・記憶力を評価する能力が優れていたとしています。
パズルなどを取り組んでいる人は取り組んでいない人に比べて、平均して8歳程度若い脳機能を持っていることが報告されています。
何もしなければ人の脳機能は20代後半をピークに低下していくことも報告がされています。
しかしパズルなどの脳トレを行うことで、脳機能の維持・向上を図ることができます。
また、脳トレは正解することが目的ではありません。
間違えてしまっても「あぁ、そうか!」となることで、脳が活性化されることが知られています。
そのため正答数に重きをおくよりも、解説を踏まえ楽しみながら行うことをオススメします。
まとめ
この記事では高齢者向けレクリエーションで簡単に認知症予防を行うことができる内容をご紹介しました。
加齢に伴い認知症は発症・進行してしまい、完全に防ぐことはできませんが、運動や脳トレを取り入れることで、発症を遅くしたり進行を緩徐にする効果が期待できます。
ぜひ明日からの業務に取り入れてみてください。
参考文献
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