「食事介助をする時の注意点を知りたい」と感じていませんか?食事前、食事中、食事後に分けて、わかりやすく解説します。日々の体調に合わせた介助法や、観察ポイントも詳しく紹介!
食事を切り上げる目安、窒息の兆候や避けたい食材など、よくある皆さんのお悩みを解決します。
【目次】
1.食事介助で大切な視点
2.食事前の注意点
3.食事中の注意点
4.食事終了後の注意点
5.まとめ
食事介助で大切な視点
高齢者の食事介助では、加齢変化や片麻痺などの後遺症、また認知症などによって摂食・嚥下障害を抱えていることが少なくありません。
嚥下障害があると誤嚥のリスクが高まるので注意して進めることが大切です。注意するポイントは食事介助中だけではなく食事以外の時間にもあります。
1.食事前の注意点
体調が悪いとき
発熱があるときは体力が消耗し、体温の上昇は呼吸数の増加をまねきます。「食事の動作」はもちろんのこと「嚥下」も疲れやすくなってしまいます。
発熱は、身体の中で感染とたたかっているときなどに見られますが、高齢者では熱がグンと上がらないこともあります。微熱でも呼吸が荒い、ぐったりしする症状は要注意です。
喘息や、肺の疾患があると食事で疲れやすくなります。咀嚼が容易な食事形態に変更する、あるいは必要ならば食事の介助に入るサポートが必要です。
【ポイント】
・時間帯ごとの状態をみて臨機応変に半介助・全介助を検討する
・疲労や呼吸の状態次第では、誤嚥のリスクも高まる
2.食事中の注意点
見るべきポイント
・むせる
・喉に残る感じがする
・のどに詰まる感じがする
・食べ始めたら「ガラガラとした声」に変化する
・飲み込みやすいものだけを食べている
・食べたがらない
・口の中にいつまでも食べ物をためていて飲み込まない
・食事に時間がかかるようになった
・上を向いて飲み込もうとする
・ぼろぼろ口からこぼす
・食事中に疲れやすくなった
これらは嚥下障害を疑うサインです。また、そのままにすると誤嚥につながる可能性もあります。
必要な対策をスタッフ間で話し合い、情報を共有していきましょう。言語聴覚士や医師などに嚥下の評価を依頼するのも、対策を考える上では役に立ちますね。
・水分にとろみをつける
・食事の形態を見直す
・歯や入れ歯の状態が悪ければ、治療をする
・介助量を見直す
・食事の環境を見直す
対応の詳細はレクシルメディア『誤嚥予防のための食事介助』や『食事介助の手順』でも紹介しています。
切り上げどきの目安
食事にかかる時間
嚥下障害があると食事にかかる時間が長くなりがちです。しかし、時間をかけすぎると疲労を感じ、食欲や嚥下力の低下に繋がってしまいます。
むやみに急かすのは禁忌ですが、だいたい1回の食事にかける時間は30分、長くても45分を目安とすると良いでしょう。
「食事の摂取量が少ないままで心配」という場合は、以下を検討をしてみましょう
・咀嚼が容易な食事形態があるか
・少量で栄養素とエネルギーがとれる食品はあるか
・時間を小分けにして食事を提供するか
・看護師や栄養士などにも相談をしてみる
むせの量
「むせたら食事は中止?」「何回むせたら危ない?」疑問に感じることがありますよね。
窒息を疑うような兆候、激しいむせがある、または頻回なむせがあるようならそのまま食べ続けるのは危険です。医師や看護師に相談の上、食事を続けるか検討するのが安全対策としては良いでしょう。
目覚めない
目覚めが悪く「呼びかけに反応しない」「口を開かない」「口に入れても動きがない」場合、誤嚥と窒息の危険性が高まります。声掛けや身体に触れる、姿勢をしっかり整えてみましょう。それでも、変わらなければ食品が傷まない時間内で時間を改めるか、食事をやめておくか検討しましょう。
窒息の可能性
高齢者は、普段元気にしていても窒息の原因になりやすい食材には注意が必要です。口腔内が湿るよう水分をとりながら食べる、水分を食材に含ませて提供する、小さくするなど工夫をしましょう。
それでも、危険な場合は食材の提供自体を控える必要があります。嚥下障害や早食いの傾向がある場合は、目を離さず見守ることも大切です。食事介助も必要になることもあります。
窒息した場合、気道閉鎖のサインが出てから呼吸運動が止まるまで一般的に5~8分といわれています。そのため、発見したときは直ちに対応が必要です。
高齢者の食事介助にあたる場合は、日ごろから窒息を想定した対応(医師・看護師を呼ぶなどの流れ、喀出法)を確認・練習しておくことが重要になります。
【注意が必要なもの】
・粘り気が強い:もち
・加熱してもやわらかくなりにくい:イカ・タコ・きのこ・こんにゃく・かまぼこ
・硬いもの:ナッツ類
・噛み切りにくい:肉
・ペタっと張り付く:海苔・わかめ・もち
・ぱさぱさ:パン・ふかし芋・魚・米粒・豆・ゆで卵
・繊維質:根菜類・青菜類
【重篤な気道閉塞のサイン】ひとつでもあれば危険!
・呼吸がほぼできない、あるいは全くできない
・咳がかなり弱い、あるいはできない
・呼吸障害が悪化
・チアノーゼ(顔や唇、肌が青紫色になる)
・声を出すことができない
・チョークサイン(自分の手で首をわし掴みにする)
体調が悪い
嚥下や食欲が落ちやすくなります。無理はしないようにしましょう。
3.食事終了後の注意点
口腔ケアの注意点
誤嚥性肺炎の軽減や、口腔機能の維持にもつながる口腔ケアはポイントをおさえることが大切です。
・歯の表面(目ではみえない)の細菌除去には、歯ブラシが一番
・横たわった姿勢は水分が喉に入りやすい。横向きや背もたれを上げる
・痛みや知覚過敏には、スポンジブラシや、ガーゼを指に巻き付けケアする
・舌の表面の白っぽい(舌苔(ぜったい))汚れは、毎日コツコツのケアが大切。
・認知症や嚥下障害で、上をむいてうがいが出来ない場合は、下を向いて口をゆすぐ
・薬が口に残っていたら、そのままにしない。看護師に報告し、対応をする
・足裏は床か足台につくようにする
姿勢の注意点
食後すぐに横たわると、胃の内容物が逆流しやすく誤嚥にもつながります。食後しばらくは座るか、背もたれをゆるやかに上げた姿勢を保ちましょう。
まとめ
高齢者の食事介助では咀嚼や嚥下に問題があることが多く、誤嚥や窒息を防ぐために注意しながらすすめる必要があります。
体調不良時の疲労や、嚥下力低下の兆候を、食事前や食事中に感じたら誤嚥などの問題が出る前に状態に合った対策をとることが重要です。食事の切り上げ時を判断するのも大切でしょう。
喉を詰まらせやすい食材には注意を払い、もし窒息の症状があらわれたらすみやかな対応が必須です。
注意点をおさえ、安全に食事をサポートできるようにしていきましょう。
(2008)厚生労働省:薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会「食品による窒息の現状把握と原因分析に関する研究」(2008)食品安全委員会:食べ物による窒息事故を防ぐためにhttp://www.fsc.go.jp/sonota/yobou_syoku_jiko2005.pdf
ExpertNurse(2011)『あたながはじめる摂食・嚥下・口腔ケア』照林社
大宿茂(2014) 『摂食・嚥下障害のフィジカルアセスメント』日総研
日本嚥下障害臨床研究会(2002)『嚥下障害の臨床』医歯薬出版
藤島一郎 柴本勇(2013)『摂食・嚥下障害患者のリスクマネジメント』中山書店