スキル

【食事介助】姿勢が大事な理由~姿勢別のポイント~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

食事介助おいて姿勢は大切です。姿勢が大事な理由と、不良姿勢では何が起こるかを説明!
姿勢別のポイントも詳しく解説していきます。

【目次】
1.姿勢が大事な理由は?
2.悪い姿勢では何が起きる?
3.姿勢別の調整ポイント
4.まとめ

姿勢が大事な理由は?

読者のみなさんも、「顎を上げた姿勢」「椅子が高く足が床につかないままの状態」で飲食をすると、このようなことを感じませんか?

・飲みにくい
・身体が前かがみにできず、何となく食べにくい

普段、何気なく飲食していると気付きにくいのですが、実は正しく安定した姿勢は食べる動作や、嚥下を支えているのです。嚥下には、顔や首の筋肉がきちんと働くには背中や腰の筋肉の働きも重要になります。

悪い姿勢では何が起きる?

顎が軽く下がっていないまっすぐな姿勢

喉から気管まで食物の通り道が直線的になり誤嚥しやすくなります。顎と胸の間に指が3~4本入るスペースがあり、軽く前傾が理想の姿勢です。

顎が上がりすぎてる姿勢

飲食物がスッと気管に入りやすく危険です。喉仏が上がりにくくなることが原因のひとつで、嚥下反射が遅れてしまい誤嚥しやすくなります。顎と胸の間に指5本以上入るスペースがある場合は、顎が上がりすぎている状態です。

座面・体幹が不安定な姿勢

食べ物が喉を通過するタイミングと嚥下反射が合わずに誤嚥しやすくなります。誤嚥予防に重要な「強い咳」も出しにくくなるでしょう。スプーンを口元まで持っていく動作が不安定になり、こぼしやすく、疲れやすくなります。

具体的な姿勢の種類をみていきましょう。

姿勢別の調整ポイント

椅子座位

・上体は軽く前傾
・顎は引き気味
・身体とテーブルの間に握りこぶし1個分くらいの隙間
・足の裏は床、または足台につく
・座面の高さは膝が90度に曲がる程度
・テーブルの高さは、肘が90度に曲がる程度

車いす

・身体とテーブルの間に握りこぶし1個分くらいの隙間
・顎は引き気味
・足の裏は床、または足台につく(膝の角度が90度)
・フットレストよりは床や足台に足裏が接地したほうが必要な前傾をとりやすい
・テーブルの高さは、肘が90度に曲がる程度
・車いすの大きさ、座面サイズは身体寸法に合ったものを選ぶ
・座面からお尻がずり下がってしまう場合は、滑り止めシートを使う

円背の方への対応

円背(えんぱい)は、背骨のうち、特に胸の部分の骨が前に倒れることで、背中が丸まる状態です。見たり食べるために、頭を上げる姿勢になり必然的に顎が上がる状態になります。

円背は、姿勢の特徴により誤嚥のリスクにもなるため、姿勢調整が大切です。

・深く腰かけてしまうと、顎が上がってしまい嚥下しにくくなる
・背中の隙間にクッションを入れると顎が引きやすくなる
・頭が身体の延長上にくるような姿勢に調整を心がける

リクライニング


・足を軽く上げ曲げることで背中・お尻の圧迫、ずれ防止になる
・顎を軽く引けるよう、枕やクッションを入れる。胸と顎の間は指4本が入るスペース
・身体が左右に傾むく場合は腕の下や、両脇にクッションを入れ支える
・腰がベッドやリクライニング車いすの腰の折り目に合うようにする
・身体が下にずり落ちてしまう場合は滑り止めシートを使う
・頭だけを枕などで過度に上げていると筋肉が緊張しやすくなる
・肩甲骨周辺からリラックスした姿勢に調整する
・背抜きをする(背中の偏った圧を均一にする)

リクライニング位を検討するケース

【例】
・体力がない
・血圧が下がりやすい
・身体麻痺が重度で座っていられない
・舌の麻痺が重度で食物を喉まで送り込めない
・嚥下障害が重度で、誤嚥を軽減させるのに有効だと予想できるとき
・疲労がある利用者さんの食後姿勢として

寝たきりによる姿勢への影響

寝たきり、または、ベッドや車椅子のリクライニング角度が低いままで長期間過ごすと姿勢変化が生じてきます。
頭や肩甲骨周辺が重力でベッド側(背中側)に落ち込むことが原因です。

姿勢変化の特徴は、頭や肩甲骨周りの筋肉が背中側に引っ張られることにより、顎が上がります。首がのけぞった姿勢になってしまうのです。

首がのけぞると、喉ぼとけが上げるのに努力が必要になって、ゴックンと飲み込むのが大変になります。また、口を閉じにくくなり、口の中が乾燥しやすくなってきます。

日中ずっと寝た姿勢でいる場合、姿勢への配慮は大切です。具体的には「背もたれを上げておく」「背もたれを上げるのも難しければ、顎を引いた姿勢で寝る」です。姿勢変化による嚥下機能の低下させないためにも大事なポイントと言えます。

ただし、呼吸の状態や身体の状況によっては枕を入れない姿勢を優先する場合もあります。看護師に相談してみましょう。

角度ごとの良い点、気をつけたい点

60度

【良い点】
・30度に比べて口の中に食物を保持しやすい
・食事を目でみることができ、自力でも食べやすい
・疲れにくい

【気を付けたい点】
・うとうとしやすい
・座位に比べると自分で食べにくい
・首がのけぞりやすい
・腕の重さで首が緊張しやすいので、肘が軽くまがるようにクッションで高さ調整する
・「この角度でずっと変えられない」のではなく、スタッフ間で話し合い、座位で食べられる状態なら試してみる

30度

【良い点】
・舌の動きが悪くても、食物を喉に送り込める
・食べ物が通るルートが喉の壁沿いになり、食道に入りやすくなる
・60度でも姿勢が不安定な場合や、嚥下が難しい場合に検討

【気をつけたい点】
・流れの速い飲食物は、60度よりも喉に到達するのが早い
・首がのけぞりやすい
・腕の重さで首が緊張しやすいので、肘が軽くまがるようにクッションで高さ調整する
・30度を選択する場合は、体力がなく、嚥下障害が重度の場合が多い。食事介助では誤嚥の兆候に常に配慮する
・体調、嚥下状態の回復とともに60度をスタッフ間で話し合い検討する場合もある
・言語聴覚士が在籍している場合は、嚥下状態や介助方法を確認する
・誤嚥の兆候が多い場合は看護師に報告をする

まとめ

食事での姿勢は「食べやすい食事を提供する」と同じくらい大切です。不良姿勢によって誤嚥のリスクは高まります。姿勢別の調整ポイントをおさえ、安全な食事をサポートしていきましょう。

【参考資料】
(2018)埼玉県歯科医師会、誤嚥性肺炎予防のための食事姿勢と口腔健康管理
知っておきたい介護食の事、食事介助https://www.asahi-gf.co.jp/special/senior/foods/howto/assistance.html
誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承http://pott-program.jp/pott4.html
(2014)『VFなしでできる!摂食・嚥下障害のフィジカルアセスメント』日総研
(2011)ExpertNurse『あたながはじめる摂食・嚥下・口腔ケア』照林社 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加