老健やデイサービスなどの介護施設では、レクリエーションの一環としてさまざまな体操が行われています。
しかし、ただ単に体操を行うだけでは、マンネリ化し、利用者さんたちも飽きてしまいます。
笑うことは気分を前向きにしてくれるだけではなく、体にさまざまな良い影響を与えることが報告されています。
そこでこの記事では高齢者が笑顔になれる体操をいくつかご紹介していきます。
また、笑顔がもたらす健康への効果についても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
高齢者が笑顔になれる体操
体操というと、ラジオ体操や椅子に座って膝の曲げ伸ばしなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。
そういった体操を行うことも大切ですが、それが毎日だと利用者さんたちは飽きてしまいます。
私たちも毎日同じような体操を行っていたら、飽きてしまいますよね。
そのため、ここからは少し変わった体操をいくつがご紹介していきます。
ズンドコ節体操
ご高齢の利用者さんにおすすめなのが「きよしのズンドコ節」に合わせて体操を行う方法です。
多くの介護施設ではズンドコ節を流したことがあるのではないでしょうか?
ズンドコ節はリズムを取りやすいテンポなので、膝の屈伸をしたり、体を捻る運動など、全身の体操を行うにはおすすめです。
サザエさん体操
サザエさんはかなり昔から放送されており、一度は観たことがある利用者さんが多いと思います。
そんなサザエさんの音楽に合わせて、深呼吸・足踏み・膝の屈伸などを行っていきます。
慣れ親しんだ音楽で、座りながらでも行うことができるため、マンネリ化してしまった体操のレパートリーとしておすすめの一つです。
365歩のマーチ体操
「365歩のマーチ」も耳にしたことがある利用者さんが多いのではないでしょうか。
座った状態でも立った状態でも行うことができる体操です。
テンポのいいリズムなので、足踏みや手の運動などを行いやすいため、こちらの体操もおすすめです。
また、歌詞をホワイトボードに書いておけば、歌詞を歌いながら体操をすることもできます。
ソーラン節体操
ソーラン節も昔からある歌で利用者さんの多くは知っている曲なのではないでしょうか?
体操の合間に手拍子を入れたりしやすく、楽しみながら体操を行うことができます。
立って体操ができる方は、少し難易度を高くしてソーラン節の踊りを簡単にしたものを体操として行ってもらうのもおすすめです。
ソーラン節体操を取り入れた介護施設では、実際に体操を行った際に利用者さんが楽しみながら体操を行うことができた、と報告されています。
笑顔がもたらす健康への効果
笑顔がもたらす健康への効果はいくつもあります。
- 口腔機能の維持・改善
- ストレス発散
- うつ予防
- 腹筋の運動
- 血圧や血糖値の上昇が収まる
- 認知症の予防
それぞれ一つずつ解説をしていきます。
1.口腔機能の維持・改善
笑うことで表情筋と呼ばれる筋肉が鍛えられます。
表情筋には食べ物を噛む咬筋と呼ばれる筋肉も含まれており、噛む力などの口腔機能の維持・改善効果が期待できます。
また、口腔機能の維持・改善に行いたい体操が、「パタカラ体操」です。
パタカラ体操は「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音するだけです。
慣れてきたら少し早めに繰り返したりすることで、より口腔機能の維持・改善効果が期待できます。
2.ストレス発散
笑顔になることでネガティブな感情(抑うつや疲労)の低減などのリラックス効果が得られることが報告されています。
これは笑うことで交感神経の活動を抑制し、副交感神経の活動を優位にするためと言われています。
そのため、介護施設などでのレクリエーションや体操などで、笑顔になれる内容を行うことで、利用者さんたちのストレス発散効果に期待できます。
また、自発的に笑顔になることでも同様の効果が得られるという報告もされているため、笑顔の練習をレクリエーションで取り入れてみるのも面白いですね。
3.うつ予防
笑うことによって副交感神経が優位になると、セロトニンと呼ばれる物質が分泌されます。
セロトニンは人の精神面に大きな影響を与えることから、心身の安定を得ることができます。
また、笑顔になることでコルチゾールやクロモグラニンの分泌が減少することもわかっています。
コルチゾール・クロモグラニンはストレスを感じると分泌されるホルモンですが、笑顔になることでホルモンの分泌が減り、うつの予防に効果的であると考えられています。
4.腹筋の運動
腹筋は息んだり咳をするときなどにも必要な力ですが、加齢とともに筋力低下が生じてしまいます。
しかし笑うことで腹筋に力が入り、お腹の筋肉を鍛える効果が期待できます。
5.血圧や血糖値の上昇が収まる
笑うことで無意識のうちに腹式呼吸になります。
腹式呼吸を繰り返すことで、プロスタグランジンI2と呼ばれる物質が分泌されます。
この物質は、血管を拡張させて血圧を下げる効果があると言われています。
そのため、たくさん笑うだけで、高血圧に対して効果を発揮したり、高血圧の予防効果に期待できます。
また、2型糖尿病患者を対象とした研究では、「笑い」には血糖値の上昇を抑える効果が報告されています。
さらに笑いは血糖値上昇だけではなく、糖尿病合併症の進展抑制に有効であることも示唆されています。
6.認知症の予防
笑いの効果として、週一回の笑い療法が高齢者のうつ症状や睡眠症状、および睡眠の質の改善に有効であることが報告されています。
また、75歳以上の高齢者を対象とした研究では、ボードゲームや音楽、ダンスなどの余暇の過ごし方が、将来の認知症予防につながる可能性も報告されています。
この結果は、人とのコミュニケーションを増やすことが認知症予防につながる可能性を示唆しており、笑いの頻度が多いことは社会的ネットワークが多いことを反映している可能性がある、と結論付けられています。
まとめ
この記事では高齢者が笑顔になれる体操や、笑顔がもたらす健康への効果についてご紹介をしました。
笑顔は費用もかけずに簡単に増やすことができ、認知症に対する効果なども期待できるため、レクリエーションや体操で笑顔になれる内容を取り入れられるといいと思います。
自発的な笑顔でもリラックス効果が期待できるので、いつもの体操の前に自発的な笑いを取り入れたりするのもおすすめす。
また、今回ご紹介した体操以外にも「レクシル」にはさまざまな体操やレクが紹介されています。
そちらもぜひ参考にしてみてください。
→レクシル公式ページへ
参考文献
広崎 真弓.笑いと笑顔のス トレス解消効果.The Japan Society for Laughter and Humor Studies.158-159.
昇 幹夫.笑いの医学的考察.The Japan Society for Laughter and Humor Studies.26-30.
大西 淳之.「笑い」は笑いごとではない.生物工学:92.118.
Verghese J et al.:Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med. 348, 2508-2516, 2003.
Ko HJ et al.:The effects of laughter therapy on depression,cognition, and sleep among the community-dwelling elderly. Geriatr Gerontol Int. 11, 267-274, 2012.