歌や音楽を使ったレクリエーションは介護施設などでもかなり人気です。
皆さんも経験があるかと思いますが、10年前によく聞いていた音楽を今聴くと、その時の風景や記憶が思い起こされますよね。
過去の記憶が思い起こされるからか、高齢者からも大人気のカラオケ。
介護施設ではカラオケを使ったレクリエーションも行っている場所もあります。
この記事では高齢者に大人気のカラオケを使ったレクのメリットや効果について解説をしていきます。
カラオケや音楽を使ったレクリエーションの効果
歌を歌うということは、声をたくさん出す・大きな声を出す・口をたくさん動かしたりします。
大きな声をたくさん出すことで、腹筋に力が入りやすく、また息継ぎをすることから心肺機能の維持・向上を図れると考えられます。
歳を重ねるにつれて、胸郭周りの動きは硬くなっていきます。若い人でも硬い人はいますが、胸郭の動きが硬くなる(悪くなる)と一回で吸える空気の量・吐くことができる空気の量が減っていきます。
当然一度に吸える空気の量が減ってしまえば、それを補うために何度も何度も呼吸を行う必要が出てきます。
しかし、カラオケで歌を歌う際に息を大きく吸って・吐いてを行うことで、胸郭を動かすこととなり、呼吸のしやすさに繋がっていきます。
人が最も多く行う運動はなんですか?
と聞かれた時、あなたならなんて答えますか?
多くの人は「歩行」と答えるかもしれません。
しかし、人が最も多く行う運動は「呼吸」なんです。
なので、胸郭周りの動きが硬くなることで、一番行う呼吸運動に支障が生じてきてしまいます。
呼吸運動の不調は全身にも影響を与えますので、ぜひカラオケで胸郭周りの動きを改善してみてください。
また、口をたくさん動かしますので、口腔機能の維持改善も期待できます。
加齢に伴い口腔機能は衰えていくのが一般的です。
また口周りの筋肉は足や腕などと比べて、運動を行う機会が少ないため、カラオケや音楽を使ったレクリエーションを行うことは、口腔機能を向上させるためにはおすすめです。
カラオケは認知症予防にもつながる
昔よく聞いていた曲を今聴き直すと、その時の風景や記憶が蘇ってきますよね?
音楽は「記憶の扉を開けるカギ」とも言われており、音楽を聴いた際・カラオケを歌った際に、過去の記憶が蘇り、その時を思い出そうとすることで脳が活性化され、認知症予防の効果にもつながると言われています。
また、歌詞をそらんじて歌うことで記憶力の維持向上にもつながるため、介護施設などでカラオケをレクリエーションとして行うことはとってもおすすめなんです。
懐かしいメロディが聴こえてきたときに昔を思い出す、回想法という手法もあります。
回想法では、思い出を引き起こすために写真や絵画などを使うことがありますが、音楽もその一つです。
回想法は、他者とのコミュニケーションを深めたり、自己を再認識する、昔と今と未来をつなぐなど、さまざまな効果が期待されています。
そのため、カラオケを通じて昔を思い出すことで、回想法と同じような効果が期待できます。
また、合いの手を入れたり、マイクを交互に持ったりなど、他者との交流も生まれます。
少数でも利用者さんの中でカラオケが好きな人がいればその方々とコミュニケーションをとる機会も生まれます。
2018年の研究では、他者との交流は認知症予防に効果的であることが報告されています。
音楽療法というリハビリテーションもある
カラオケはストレス発散や認知症予防にとても効果的です。
音楽を使ったリハビリテーションの一つに「音楽療法」というものがあります。
音楽療法というのは、音楽がもつ特性を活用し、健康の維持や心身障害の機能回復、QOL(生活の質)の向上などを目的に行われています。
音楽は対象者を選ばないため、高齢者から若年者、子供まで音楽療法の対象となる方は幅広くいます。
音楽療法を中心に行う方を音楽療法士と呼びますが、音楽療法士は病院や高齢者施設、特別支援学校などさまざまな場所で活躍をしています。
音楽療法は歌うだけではありません。
歌詞作りを一緒に行ったり、実際に楽器を演奏したりもします。
またリハビリテーション中に即興演奏を行う場合もあります。
これらには、対象者の自信を回復させるや、役割を体験する、社会生活技能を高める、協調性を高めるなどさまざまな効果が期待できます。
音楽療法の効果
音楽療法の効果には不安や痛みの軽減、精神的な安定、自発性・活動性の促進、脳の活性化、身体の運動性向上などさまざまな効果を有しています。
私たちも音楽に救われたことがあるのではないでしょうか?
また音楽を聴くことで気持ちが落ち着き、気分が晴れることを経験したことがあるのではないでしょうか?
そのような音楽の特性を活かしているのが、音楽療法になっています。
バリー・キャシレスという方が書いた著書「代替医療ガイドブック」には「音楽療法は確証済みの補完療法であり、多く病状や問題に効果をあげている。治癒力はなく、いくつかの補完療法のように、重大疾患の治療法として勧められることもない。しかし、優れた補完医療法の例にもれず、幸福感や生活の質を高め、症状を軽減し、初期治療やリハビリテーションの効果を高めてくれる」と記載しています。
まとめ
この記事では高齢者に大人気のカラオケを使ったレクのメリットや効果について解説をしました。
カラオケを行うことで得られる効果は、認知症予防や口腔機能の維持改善、心肺機能の維持改善などです。
さらに音楽療法という代替医療もあるため、音楽は心身にとっていい影響を与えてくれます。
働いている介護施設などにカラオケセットがない場合には、youtubeなどで歌詞付きの動画を見ながら、利用者さんと歌う方法もあります。
病院でリハビリテーションを行っている際に、youtubeで音楽を流すときもあります。
そのほうが患者さんが興味を示し、活動的になったりするからです。
音楽には私たちが考えている以上の役割があります。
ぜひ、明日からの業務でカラオケをはじめとした、音楽を使ったレクリエーションを行ってみてください。
参考文献
松本 耕輔,澤田 辰徳. 認知症予防におけるわが国の作業療法効果の文献探索的研究. 日本臨床作業療法研究 No.5:47−54,2018.