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【食事介助】すぐに役立つ基本のポイント3選 

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食事介助の経験がまだ浅い。苦手意識がある。そんなあなたへおすすめの3つのポイントを紹介します。高齢者における飲み込みの変化や、食事介助で注意したいことなど基本のポイントを説明!基本をおさえれば実践に活かしやすくなります。ぜひご覧ください。

【目次】
1.食事はコミュニケーションのひとつ
2.加齢変化と飲みこみの関係
3.食事介助の基本ポイント3選
4.まとめ

食事はコミュニケーションのひとつ

誤嚥(ごえん)をせずに栄養や水分をとることは大事です。そして同じくらい大切なのは、食事の時間はコミュニケーションがうまれる時間でもあるという点です。

デイサービスや介護施設などで、食事をするときに隣の人や介護スタッフ・看護師と「今日はなにかしら?」「美味しそうですね」と言葉を交わす機会は、人との会話の機会や外出の機会が減りがちな高齢者にとって大事なこころが刺激される時間になっています。

介護の食事介助では、誤嚥を予防しながらコミュニケーションの楽しみを保つということを心がけていけたらいいですね。

加齢変化と飲みこみの関係

わたしたちは年齢をかさねると体に変化がでてきます。足腰が弱くなって歩くのがゆっくりになるなど高齢なほど、その変化があらわれるのは自然なことです。

飲みこみも同じで、高齢になるほど以下のような変化があらわれ飲み込みに影響がでてくるといわれています。

・歯が少なくなる
・喉の筋力がよわくなりゴックンがしにくくなる
・喉のなかの感覚が弱くなって、食べ物が気管に入ってもすぐにむせられない
・注意力や集中力が弱くなる
など

のどや、口だけに注目しがちですが口から食べる楽しみを保ちつづけるのには足腰の元気さ、姿勢を維持して咳をしっかり吐き出せる力、箸を口までもっていける腕の力などもかかわってきます。

そのため、立つ・歩く・座るなどの基本的な動作ができるようにしていくことも、飲みこみの力を維持するには重要なのです。

また、高齢者はそのときの状態にもよりますが、いったん体調を崩すと回復がおそい面があります。

例えば肺炎になってしまい食事がしばらく十分にとれず、ベッドから起き上がることができないと足腰の力だけではなく、飲みこみの力、咳をしっかり出す力も弱まってしまうことがあります。

誤嚥(ごえん)は肺炎の原因にもなります。飲みこみが弱くなった利用者さんの食事介助をするときは、誤嚥に気をつけながら食事介助をしましょう。それが、口から食べる力を保っていくことにもつながるのです。

食事介助の基本ポイント3選

1.食事の前にしておきたいこと

●食事の前に声掛けを
食事の時間ギリギリまで熟睡していた。ぼうっとしている日もあるかもしれません。声掛けをしたり、体をさわって刺激をして「これから食事だ!」気持ちの準備と目覚めをうながしましょう。

●口腔内をきれいにする
高齢になると唾液の分泌が減ってきます。口腔内乾燥により増えた雑菌を誤嚥をして、その雑菌が肺に入ると肺炎の原因になってしまうかもしれません。

食べる前に口腔ケアをして清潔にしましょう。口の中を口腔ケアで刺激することで、唾液の分泌にもつながります。

●姿勢を整える
姿勢は、ゴックンと飲むちからにも関係しています。姿勢が不安定だと飲み込みしにくくもなるのです。

足の裏全体が床(足台)に触れ、お尻がずるずる前にずれることなく深く座れている姿勢がいいでしょう。テーブルの高さは肘を曲げてちょうど乗るくらいを目安にします。軽く前傾の姿勢が食べやすく、飲みこみもしやすいでしょう。

テーブルと自分のお腹の距離は、こぶし1個分くらいが目安です。

2.食事がはじまったら

●食べはじめは気をつけよう
最初の一口目、二口目に誤嚥が多いと言われています。飲みこみの力が弱っているときは特に気をつけたいポイントですね。

●急がない
口に運ぶペースの目安としては、ゴックンと飲みこんだら次の一口を口に運ぶようにすると良いでしょう。

飲みこむ力が弱っていると、一回のゴックンで全部飲みこむことができずに口の中に残ってしまうことがあります。そこに、また次の一口が入ってしまうと、飲みこめずむせてしまいます。

●スプーンの角度~顎は上げない~
顎が上がっているとゴックンと飲みにくくなります。わたしたちも天井をみて飲んでみると分かると思いますが、喉ぼとけが上がらないと、ゴクンできないのです。

ゴクンがしにくいだけではありません。顎が上がっていると、水分がスルっと気管に入りやすいのです。スプーンを利用者さんの口に入れるとき、上から入れないようにしましょう。

抜くときに、上に引き抜くと上あごにこびりつきやすいく、むせやすくなります。抜くときは水平に抜くようにしましょう。

●立ったまま介助しない
顎が上がると、むせやすくなるので介助をするときは利用者さんと同じくらいの目線でしましょう。

●一口の量
スプーンは多量にすくってしまうカレースプーンを使うと、たくさん口に入ってしまい飲みこめずむせてしまうことがあります。

●むせたとき
むせたら、しっかり強い咳をして誤嚥したものをだすのが重要です。「しっかり咳していいですよ」と伝えるのもよいですね。むせがまだ出そうなのに、食べ始めてしまうとさらに誤嚥しやすくなってしまいます。呼吸が整ったら、また食べ始めるようにしましょう。

●とろみ
利用者さんの飲みこみの力に合ったとろみの濃さにする。合っていなくて濃すぎて硬かったり、薄すぎるとむせにつながります。

●食事の時間はつかれない範囲で
1食にかける時間の目安は40分程度がよいといわれています。ゴックンに必要な、のどの筋肉もずっと動かしていると疲れてきます。体力の弱い利用者さんならなおさらです。

食事開始後20分程度で満腹を感じるようになることが多いようです。満腹だと食欲も落ちるので、食事をつづけても食べられる量は限りがあるでしょう。

3.食後

食事が終わったら、歯磨きや口をゆすいできれいにしましょう。顔に麻痺があると、片方の頬の裏側に食べものが残りやすいことがあります。薬も残っていないか確認をしましょう。

食後は、胃から逆流するのを防ぐために2時間程度は身体をおこすように心がけましょう。ベッドの場合はお腹を圧迫しないようにして、リラックスした背もたれの角度をすこしゆるめておきます。

まとめ

食事介助では安全や摂取量に注目しがちですが、食事は楽しみやコミュニケーションの機会をつくるうえでも大切な時間です。食事介助では基本のポイントをおさえて、長く食事が楽しめるように援助していきましょう。

【参考書籍】
藤島一郎 : 口から食べる 嚥下障害Q&A.中央法規出版 1996.
大宿 茂 : VFなしでできる!摂食・嚥下のフィジカルアセスメント 日総研 2014

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