レクは介護施設で多く取り入れられている活動かと思います。
しかし、どうしてレクが取り入れられているのでしょうか?
「ただなんとなく?」
そんなふうに感じたことがある方もいるのではないでしょうか?
この記事ではレクの考え方と介護施設でレクを行う意味について解説をしていきたいと思います。
レクの考え方
レクとはレクリエーションの略称です。
レクリエーションはさまざまな活動を通して楽しいひとときを過ごしてもらうために行われています。
働き盛りの世代や若い世代では、旅行や友人との食事など、さまざまな活動を通して楽しいひとときを過ごすことができます。
しかし、介護施設などを利用している方は、何かしらの病気や障害によって、旅行や友人との外出が行えない方が多いです。
そのような方に対して、レクは気分転換や内面的な豊かさの向上を図るために欠かせない活動だと考えています。
レクの変遷
今でこそレクを通して楽しいひとときを過ごしてもらえる工夫がなされていますが、昔はそういった活動はありませんでした。
昔は高齢者や要介護者への援助は日常生活機能に重点が置かれており、食事・排泄・入浴・睡眠などだけでした。
しかし、QOL(Quality Of Life;生活の質)という概念が重要視されるようになってからは、日常生活機能という物質的側面だけでなく、精神的な豊かさや満足度などの内面的側面への援助も増えてきました。
レクリエーションの誕生は今から数百年も前に遡ります。
17世紀の哲学者「コメニウス」の著書「大学授業」の中で、レクリエーションは授業の後の休養と次の授業のための元気回復の時間として重要性を強調しています。
また、イギリスの哲学者「ジョン・ロック」の著書「教育に関する考察」の中で「気晴らし(レクリエーション)は、怠けていることではなく、仕事をかえて、疲れている体の部分を休ませることだ」と述べられています。
レクリエーション誕生時には、教育的に意味のある遊びであったと理解できます。
日本レクリエーション協会のスローガン
日本レクリエーション協会では以下のようなスローガンを掲げています。
「レクリエーションは人間の生きる喜びです
① レクリエーションで健康を高め、うるおいのある生活を築こう。
② レクリエーションの輪を地域に広げ、住みよい町をつくろう。
③ よりよいレクリエーション環境をつくるためにたちあがろう。」
このスローガンでは、レクリエーションの根源を「生きる喜び」と定義し、それを実現するための方策として、「心身の健康づくり」「まちづくり」「環境づくり」に定められました。
また、ダーキンは「レクリエーションとは、仲間と共にする遊戯活動である。(中略)交友を助け、親和の精神を発達させ、緊張を解きほぐす機会を与えて、誰もが快適な気分と幸福感を取り戻すように図るものである」と定義しています。
そのため、レクリエーションは元々は教育的に意味のある遊びから、他者との交流を通じて幸福感を得られる活動へと移り変わっていったと考えられます。
介護施設で行う意味
レクと一言でいってもさまざまな種類があり、以下の種類に分けられています。
開放機能:気晴らしなどの気分転換に役立つ。
身体機能:機能訓練や全身的体力の調整に役立つ。
精神機能:緊張から解放され、情緒的安定や高揚に役立つ。
交流機能:社会的生活技術(特に対人関係)の再開発に役立つ。
活性機能:生活活性、自己表現、生きがいづくりに役立つ。
こういった役割をレクは担っており、それぞれの機能に対してアプローチすることを目的に介護施設ではレクが取り入れられています。
ざっくりとした言葉で言い換えれば、
「身体・脳の機能を維持向上させ、他者と交流する中で気分転換を図り、その中で自分自身の生きがいを再発見していく」ということだと私は考えています。
それができるのが、介護施設でのレクであり、介護施設でレクを行う意味だと思います。
レクを行う際のポイント
介護施設でレクを行う意味は 「身体・脳の機能を維持向上させ、他者と交流する中で気分転換を図り、その中で自分自身の生きがいを再発見していく」とお伝えしました。
そのため他者と交流しつつ、身体や脳の機能を維持向上させるレクを行う必要があります。
ここからはレクを行う際に気をつけておきたいポイントをいくつか紹介していきたいと思います。
利用者世代が関係しているレクを行う
音楽に合わせてゲームを行ったりするレクなどもありますが、こういった時に流す音楽は利用者世代が知っている音楽を流しましょう。
今流行りの音楽を流したところで、「なんの曲?」「聞いたことない」などというリアクションになってしまいます。
なるべく利用者世代に関係している音楽などを使った方が、レクは盛り上がりやすいです。
参加を無理強いしない
レクは「誰もが快適な気分と幸福感を取り戻すように図るものである」という言葉から、無理強いはさせず、利用者さんが参加したい時に参加できるようにする、というのがポイントだと思います。
無理に参加させれば、参加させられた利用者さんは快適な気分とは言い難いです。
参加しない理由を把握して、その利用者さんが興味あるレクを行うのも一つの方法です。
決して無理にレクに参加させるようなことはやめておきましょう。
他者との交流を意識する
一人で行えるレクも多いですが、レクを行う際にはなるべく利用者さん同士の交流が生まれるように意識していきましょう。
チーム制でのレクなどは他者との交流が生まれやすく、おすすめです。
まとめ
この記事ではレクの考え方やレクの変遷、介護施設でレクを行う意味などについて解説をしました。
元々のレクの誕生は「遊び」に近いですが、そこから時代を経て、遊びの要素よりもレクを通して他者との交流や生きがいを再発見することなど、QOLの向上が図られるように重きが置かれるようになっていきました。
病院などでは機能回復に重きが置かれており、レクを行う時間は少ないように感じます。
介護施設の強みはQOL向上などにアプローチできる点です。
ぜひ、明日からのレクでは今回紹介したポイントなどを意識して、行ってみてください。
参考文献
奥野孝昭ら.レクリエーション活動の意義に関する一考察.四天王寺大学紀要.2013;56:471-498.