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誤嚥予防のための食事介助~4つのポイント~

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誤嚥(ごえん)予防に役立つ4つのポイントを分かりやすくお伝えします。誤嚥の知識と、誤嚥予防につながる食事形態・姿勢・環境の調整などを解説!嚥下機能維持にも役立つレクリエーションも紹介します。

【目次】
1.誤嚥って何だろう?
2.誤嚥を予防する5つのポイント
3.誤嚥になりやすい体にならない、つくらない
4.まとめ

誤嚥って何だろう?

食べたり飲んだりしたものが、食道ではなく気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。

どんな人が誤嚥するの?

飲みこむ力が弱かったり、口の中やのどの働きに必要な神経のはたらきが悪かったりすると起こりやすくなります。

誤嚥性肺炎ってなに?

誤嚥したものが肺に入ってしまい、肺の中で細菌が増えて炎症をおこすのが誤嚥性肺炎です。誤嚥をくりかえし、体力・免疫力が弱いなどいくつかの要因が合わさると誤嚥性肺炎になってしまいます。

食べたもの以外も誤嚥性肺炎の原因になる

口から栄養をとっていない(胃ろう・点滴だけなど)場合も誤嚥する場合があります。眠っている間にも起こります。

●痰や唾液などの誤嚥
口・喉の粘膜表面には細菌がいます。細菌を含んだ唾液などをくりかえし誤嚥すると肺炎になる危険が高まります。

●胃食道逆流(いしょくどうぎゃくりゅう)の内容物の誤嚥
胃の内容物が逆流したときに気管に入ってしまい誤嚥します。逆流した胃の内容物は、胃「酸」や、消化液を含んでいるので気管の粘膜を傷めやすく肺炎につながりやすくなるのです。

誤嚥性肺炎でみられやすい症状

肺炎の診断には病院での検査と医師の診察が必要です。介護では以下の兆候にきをつけて、発見したら看護師にも伝えましょう。

●症状
繰り返す激しいむせこみ・高熱・濃い痰が増えた・呼吸がしにくい苦しい・疲れやすい・ぼうっとしてる・失禁

誤嚥を予防する4つのポイント 

1.いまの嚥下状態を知ろう

誤嚥予防の対策は、どこに原因があるかを予想することが大切です。原因の予想に役立つ「嚥下のメカニズム・むずかしくなること」や「工夫の仕方」をこちらで紹介しています。

2.日常の生活場面でチェックしよう

食事中のむせのチェック以外に、日常の様子から「誤嚥しやすいかもしれない」「誤嚥したら肺炎につながりやすいかもしれない」状態にも注意しましょう。

●口臭・舌の上に汚れが目立つ・乾燥している
●とても痩せている
●日常の生活動作にかなりサポートがいる、または増えてきた
●かすれ声や声が弱々しくて、はっきり話せない
●咳が弱々しい、痰を出しきれない
●体の具合がよくない

3.状態に合った調整をしよう

食事形態の調整

食べる能力や体調などに応じて食事形態を変えることも、誤嚥予防には重要です。

例として、ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)の目安を紹介します。

区分1【容易にかめる形態】
硬いものや大きい食品は少し食べにくいものの、普通のごはんが容易に噛める人に向いている
例:焼き魚
区分2【歯ぐきでつぶせる形態】
歯ぐきで木綿豆腐をつぶせる程度の咀嚼力。硬いものや大きいものは飲みこみにくいことがある
例:煮魚
区分3【舌でつぶせる形態】
細くてやわらかければ食べられる咀嚼力。水やお茶がのみにくいことがある
例:魚のほぐし煮(とろみのあんかけで、口の中でばらけないようにのみこみしやすく)・全粥
区分4【かまなくてよい形態】
固形物は小さくしても食べにくい。水やお茶が飲み込みにくい
例:白身魚のうらごし・ぺーすとがゆ

嚥下しにくいもの
タコやイカなど弾力がありコリコリしたもの・ごぼうレンコンなど繊維が多く硬いもの・酸味がつよいもの・ばらつきパサつきやすいもの・だんご餅などべったりと粘りのあるもの

とろみの目安

嚥下が弱くゆっくり「ごっくん」しても、水分のながれをゆっくりにすると誤嚥しにくくなります。

薄いとろみ
トンカツソースくらいの濃さ。ストローで抵抗なく飲める濃度。
中間のとろみ
カスピ海ヨーグルトくらいの濃さ。8mm以上のストローなら飲める濃度。
濃いとろみ
蜂蜜くらいの濃さ。スプーンから落とすと、ぼとっと落ちる状態。ストローでは飲めない濃度。

つくりかたの注意点(詳しくはお使いの商品パッケージの裏を参考にしてください)
・すぐにとろみがつかない場合は時間をおいて濃さのチェックをする
・とろみの再調整は、濃いとろみを作って混ぜる(粉のとろみ剤を入れるとダマになり混ざらない)
・食材や飲み物の種類によっては、つきにくい場合も。少し時間をおき濃度を確認。
・硬く粘り気が強いと、喉に張りつきやすくなり誤嚥や窒息につながる

姿勢の調整

足の裏が床につかないと体がぐらぐら不安定になるので足台を入れましょう。テーブルの高さは、肩を自然におろした状態で、肘が台の上につく程度を目安にします。クッションを入れても姿勢が不安定な場合はリクライニングの車いすなどを検討してもよいでしょう。

環境の調整

口に入れる・噛む・飲み込むに注意が向いていないと誤嚥しやすくなります。食事に集中できる環境をととのえましょう。

介助方法の調整

嚥下の能力にあった食事介助が誤嚥の予防に重要です。食事介助の方法はこちらにご紹介します。


4.むせやすい人への対応

むせは誤嚥からからだを守る大事な反応です。前傾姿勢でしっかり咳をだしましょう。「がまんしないで、しっかり咳をだしてください」と声をかけてもいいですね。強く背中をたたかず、咳がおさまり、息がととのったら次の一口をいれましょう。

誤嚥になりやすい体にならない、つくらない

高齢になって加齢はとめられませんが、進行をゆっくりにできる可能性はあります。強い咳の力と嚥下の力を保つことも誤嚥予防のポイントです。口腔体操はもちろんですが口腔ケアで口の中や頬を刺激することも口の機能の維持に役立ちます。話したり声をだして笑う、首や肩の運動も良いですね。

おすすめのレクを紹介します。

まとめ

誤嚥予防には嚥下の能力に見合った調整が大切になります。食事形態・姿勢・環境調整などが有効です。そして、誤嚥しにくい体作りが進行をゆっくりにし、誤嚥の予防にもつながります。

誤嚥予防というと安全・注意点ばかりに注目しがちですが、食事はコミュニケーションを通じて人とかかわる大切な機会でもあるということを忘れないようにしましょう。

参考資料
嚥下困難とはhttps://www.balance-b.jp/sos/enge/enge03.html
食べる力に合わせて介護食の種類https://www.minnanokaigo.com/guide/life/meal/type/
井上登太著 基礎から学び実践に活かす!誤嚥性肺炎ケア 株式会社gene 2019年発行

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