食事介助に苦手意識をもつ介護スタッフでも安心して読める役立つ知識を紹介!誰でもわかる嚥下(えんげ)の仕組みの説明と、誤嚥(ごえん)を防ぐ観察ポイントや具体的な食事介助方法を詳しく解説します。
【目次】
1.食べるメカニズム~嚥下3つのステップ~
2.誤嚥を予防する観察ポイント
3.食事介助方法の基本
4.まとめ
食べるメカニズム~3つのステップ~
食べるメカニズムには「今から何を食べるか認識する」「かみくだく」「飲み込む」3つのステップがあります。「体感してみよう」を自分で試してみると「うまくいかない」を体感でき、食べるメカニズムがイメージできます。食事介助の工夫も考えやすくなるのでおススメです。
ステップ1.【口に入れる前】何をどのように食べるか判断する
うまくいかないと起こること
●食欲がわかない
●道具は何をどのように使うか分からない
●口に入れるタイミングが悪くてむせてしまう
●口からこぼれ出てしまう。
自分で体感してみよう
目を閉じまま食事を食べる、コップで水を飲む
必要なサポート
●しっかり目覚めるように声掛けする
●食器やスプーンを手を添えながらもってもらう
●「冷たいスープですよ」などと何を食べるのか声掛けをする
●落ち着いて集中できる席に移動する
ステップ2.【口の中】噛み、飲みやすい形にして喉へ送る
うまくいかないと起こること
●かみ砕けない
●奥歯ですりつぶせない
●ペースト状のまとまりにならない
●飲み込みたいのに、喉のほうに移動しない
●口の中に散らばったまま残ってしまう
●唾液や食べ物が唇からこぼれてしまう
●むせてしまう
自分で体感してみよう
顎を左右に動かさず上下にだけ動かして食べる。唇は開けたまま、舌は動かさない。
必要なサポート
●食事形態を見直す
●水分にとろみをつける
●歯に不具合がないか確認する
ステップ3.【のどの中】飲み込む
飲み込むとき、喉ぼとけが上にコクッとあがります。それが「嚥下反射(えんげはんしゃ)」が起きて食道に入っていく瞬間です。その時間はわずか0.5秒。摂食嚥下の中で最も命に直結する大切な瞬間です。
うまくいかないと起こること
●ごっくんが間に合わず、さらさらした水分が先に気管に入ってむせてしまう
●誤嚥してしまう食べ物の量が多いと、窒息につながる
●飲み込めず、口に残ったままになる
●疲れやすくなる
必要なサポート
●水分のとろみの濃さが合っているか確認する
●しっかり目覚めるよう声掛けする
●ペースが速すぎないか、一口の量が多くないか確認する
●時間がかかりすぎて疲れていたら介助をするか、無理して食事を続けない
●姿勢を整える
誤嚥を予防する観察ポイント
食べ始めると声がゴロゴロ・ガラガラ~放置は誤嚥につながる~
痰が絡んだような、うがいをしているときのような声は、飲食物が声帯の入り口に溜まっているサインです。そのままにすると、声帯を越えて気管にはいる「誤嚥」になってしまいます。
声帯の近くに食べ物が落ちてきたら、違和感を感じて咳ばらいをしたくなります。ただし、加齢や麻痺によって、感覚が弱くなっていると気がつかずにそのまま食べてしまうのです。気がついたら放置せず、早めに咳払いをして誤嚥を防ぎましょう。
また、黙々と食べていると声の変化に気がつけません。食べるペースを崩さない範囲で「美味しいですか?」「大丈夫ですか?」「あー。と言ってみてください」など声掛けをして、チェックするのもおススメです。
●気がついたらそのままにしない
●咳ばらいをして、澄んだ声にもどったら食べ始める
むせる
むせは、気管に入った食べ物が肺まで届かないように吐き出そうとしてとっさに起こる体を守る反応です。むせたら、しっかり強い咳をしましょう。ただし、繰り返すむせと発熱があるときは誤嚥を繰り返している可能性があるので注意が必要です。
●むせたまま食べない
●しっかりむせた後は、息が落ちついてから食べ始める
むせない誤嚥もある~むせが無いより危険~
誤嚥してもむせないことがあります。これを「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」といいます。麻痺や加齢変化、入眠中などにより喉の感覚が低下したり、嚥下反射が弱くなると不顕性誤嚥が生じやすくなります。口腔ケアを徹底し、誤嚥性肺炎の予防に努めましょう。
基本の食事介助の方法
座位
●介助者は同じ目線
●深く座る
●足裏の全体が床についている
●顎は引いて軽く前傾
●体とテーブルの間は密着しすぎず、こぶし1つくらい開ける
ベッド上
●介助者は同じ目線
●無理のない楽な姿勢に調整する
●左右に傾かないよう、クッションなどで調整する
●枕などで軽く顎を引いた姿勢に調整する(指4本くらいの隙間)
気を付けるポイント・工夫
●感染対策の観点から手袋をつけたままマスクに触れない
●食事を全て混ぜた状態で介助はしない。色が悪くなり、香りも分からなくなる
●口を開けてくれない場合、無理やりこじ開けようとしない
●痛みや筋肉の緊張、不安などで口を少ししか開けられない場合、口の周りを優しくマッサージして緊張や不安を軽減してから介助を始める、薄いスプーンを使うなど工夫をする。改善がないときにはシリンジで介助する場合も。急導入はスタッフ同士や家族・本人、と話し合い決められることが望ましい。
●シリンジは喉の奥に向けて一気に入れると誤嚥の危険性が非常に高い。舌の前方に1回少量ずつが目安
●本人が疲れない時間で終える
まとめ
介護技術で重要な食事介助。老健やデイサービスなどでは、誤嚥・窒息を予防するために日々さまざまな工夫がされています。
口から入った食べ物を飲み込むまでの流れを知ると「なぜ食べにくいのだろう?」「どうしたら食べやすくなるのか」を考えるヒントになり役立ちます。また、食事中の観察で誤嚥につながる兆候を早めにキャッチすることで、利用者さんの安全に配慮した食事介助が行えるようになるのです。
食事介助に対する苦手意識を減らし、楽しく安全に食事を楽しめるように援助していきましょう。
【参考資料】
介護職が知っておきたい食事介助の基本や注意点・観察項目がわかるおすすめ記事4選https://www.kaigo-antenna.jp/magazine/detail-14/
2011年 照林社『Expert Nurse あなたが始める摂食・嚥下・口腔ケア