介護施設などでは排泄介助を一日に何度も行うことがあるかと思います。
排泄介助は当事者に取って重要かつ欠かすことのできない行為です。
筆者は理学療法士として、病院で勤務をしていますが、場合によっては排泄介助を行うことがあります。
その際に私が気をつけている点も踏まえて、この記事では排泄介助を行う際の8つの注意点についてと正しい介助方法についてお伝えしていきたいと思います。
排泄介助を行う際の8つの注意点
排泄行為は当事者がその人らしく生活していく上で必要最低限の行為になります。
しかし、排泄というデリケートな部分でもありますので、対応には注意が必要となります。
トイレ誘導を行う
認知症の利用者さんなどでは、尿意・便意に気づけない方がいます。
そういう方に対しては、定期的にトイレ誘導を行う必要があるかと思います。
私は病院勤務で理学療法を行なっているので、リハの時間と排泄介助の時間帯やリハと離床の時間帯などを合わせられるように看護師さんと相談をしながら行なっています。
ベットに寝た状態の患者さんをトイレ誘導するためには、ベットから起こして、車椅子に乗せて、トイレに行って…という流れになります。
しかし、リハ終了後であれば、車椅子に座った状態であるため、看護師さんの業務負担を減らすことができます。
リハの時間内であれば、そのままトイレ誘導することもできるため、他のスタッフとトイレ誘導する時間帯を決めたりすることは大切になるかと思います。
「オムツだからその中にしてください」と言わない
あるあるだと思うのですが、「オムツしているからその中にしていいですよ~」ってよく聞きませんか?
排泄介助は大変な業務ですが、逆の立場になった時に「オムツの中に排泄できるか?」というのを考える必要があるかと思います。
オムツの役目は失禁してしまった時のためにあるので、あえてオムツの中に排泄させるものではないと考えています。
そのため、トイレの訴えがあった場合には、トイレ誘導する必要があると考えています。
過介助にならないようにする
排泄介助ではベットからの起き上がり、移乗動作など介助が必要となる場面がいくつかあります。
しかし、この時に時間がないからといって、全介助で動作を行なってしまうと当事者の方の身体機能は向上していきません。
少しでも当事者の方の残存能力を向上させることができるような取り組みが必要になってきます。
また、移乗動作時にズボンやオムツを掴むのも好ましくないと考えています。
当然ですが、ズボンやオムツは掴むためのものではないため、移乗動作などを行う場合には腋窩支持が大切になります。
排泄終了まで待つ
排泄にかかる時間は当事者の方によってバラバラですよね。
数分で終わる場合もあれば、10分程度かかる場合もあります。
時間が掛かればかかるほど他の業務を行うことができなくなってしまい、大変ですが、決して焦らず排泄が終わるのを待ちましょう。
もし一人行動が心配な場合には、両側の手すりにバーを設置することで、一人行動を防ぐこともできますので、そういった福祉用具の検討も行えるといいと思います。
また、真横で待っていると恥ずかしさなどから排泄がスムーズに行えなくなってしまいます。
横で待つのではなく、扉の外で待つようにしましょう。
水分摂取を我慢させない
尿意が近くなることを嫌がり、水分摂取を積極的に行わない当事者の方もいます。
水分は一日に1~2L程度は必要であるため、水分摂取を我慢してしまうと脱水症状を呈してしまいます。
できるだけ、水分摂取は促しようにしましょう。
ご本人の自尊心を傷つけない
排泄介助で最も大切なことは、ご本人の自尊心を傷つけないことです。
失禁してしまっている場合やめんどくさそうに排泄介助を行うなど、当事者の方の自尊心を傷つけてしまう可能性があります。
介助者の負担も大きいですが、当事者の方の負担もありますので、相手の思いに寄り添いながら排泄介助を行う必要があります。
正しい介助方法とは?
介助方法を誤ると当事者の方の負担になりますし、介護者の腰痛にも繋がります。
理学療法士の養成校では正しい介助方法なども学ぶため、ここからは正しい介助方法についていくつかお伝えしていきたいと思います。
力任せにしない
特に男性に多いのですが、力任せに介助を行なってしまうと、その分の力と同等の力が当事者の方にかかってしまいます。
そのため、最小の力で最大の効果を発揮させる必要があります。
最小の力で最大の効果を発揮させるためには、てこの原理を用いる必要が出てきます。
介助者自身の肘・膝などを支点にして、介助を行うと最小の力で介助を行うことができます。
また、介助者・当事者の距離が遠いと、それだけ力を必要としてしまいます。
できるだけ近くで介助を行うようにしましょう。
介助者の足幅は広めに
介助を行うときには介助者の足幅は広めにしておきましょう。
小柄な方の介助を行うときには、背の高さを合わせることもできます。
また、足幅を広めに取ることで、支持基底面が広くなり重心が安定するため、転倒の可能性も減らすことができます。
下肢を上手に使う
人は上肢の力に比べて下肢の力の方が圧倒的に強いです。
そのため、腰を曲げて腕の力だけで介助を行おうとするのではなく、股関節・膝関節を曲げて下肢の力をうまく使う必要があります。
腰を曲げて腕の力だけで介助を行おうとすると腰痛につながりますので、気をつけておきましょう。
一人で無理なら助けを呼ぶ
これも男性に多いかと思いますが、力があるとある程度の方は介助することができます。
しかし、一人で大変である場合には他のスタッフの手を借りるのも一つの方法です。
そのほうが一人の力は少なく済みますし、転倒の危険性も減ります。
当事者の方がいかに楽に移乗できるかなどが、介助では大切になります。
できることは本人にしてもらう
介助者側で全てを行なってしまうと、依存的になってしまったり、残存機能を低下させてしまう可能性があります。
そのため当事者の方ができることは、本人にしてもらうようにしましょう。
まとめ
この記事では排泄介助を行う際の8つの注意点についてと正しい介助方法についてお伝えしました。
排泄介助は入浴介助と同じくらい大変な業務の一つです。
過介助になってしまいやすいのもこの二つの業務かと思いますが、当事者の方々の残存機能を向上させるためには、できることは本人にやってもらう必要があります。
今回の注意点や介助方法を参考に、明日からの業務に活用してみてください。