入浴介助では普段チェックすることができない傷や皮膚剥離などを確認することができます。
そのため、見落とさないように注意しておく必要がありますが、どこをどう観察するべきなのか知っているのと知らないのとでは見落とし具合に差が出てきます。
そこで、この記事では入浴介助で観察するべき8つのポイントについてご紹介していきます。
入浴介助で観察するべき8つのポイント
入浴の目的は清潔の維持であったり、血液の循環改善、精神面への効果などさまざまな目的があります。
しかし、入浴を一人で行うことができない場合には、介助が必要となりますが、入浴介助時に観察するべきポイントがいくつかあります。
バイタル変動に注意する
入浴の前には血圧や脈拍などの体調チェックを行っておきましょう。
血圧が高すぎる低すぎる場合には入浴は控え、清拭などに切り替えるといいでしょう。
また、普段と異なる様子である場合には医師・看護師に報告を行いましょう。
皮膚状態のチェック
入浴介助時には全身状態の確認が必須となります。
利用者さんの全身状態を確認する機会は入浴時しかないからです。
「背中に褥瘡ができている」
「仙骨に褥瘡ができている」
など褥瘡などができている場合には入浴時以外にも確認するかと思いますが、普段生活している時には、衣服を着ているため、手先や指先の確認程度しか行うことができません。
そのため、入浴時に腹部や背部、臀部などの状態を確認します。
特に臀部は褥瘡もできやすい部位のため、発赤がないか、擦過傷がないか、など細かく確認しておきましょう。
まだ創部がある場合には、創部から浸出液が出ていないか、発赤が生じていないかも確認できると良いでしょう。
ヒートショックに注意
ヒートショックは急激な温度変化によって生じます。
特に高齢者に多く発生しやすく、冬場になると頻繁に生じるため、脱衣所などは暖かくしておくことが大切です。
ヒートショックを気を付けるタイミングは、
- 脱衣時
- 脱衣所から浴室に入るとき
- 湯船に浸かるとき
- 浴室から脱衣所に入るとき
などが挙げられます。
洗い残し・拭き残しに注意
洗い残しに気をつける
入浴介助では、洗い残しが多くなってしまいがちです。
ある程度自分で動ける方は、手指・足趾や陰部など自分で流すことができますが、全介助・ストレッチャー浴などの場合には、同部位に洗い残しが出てしまう可能性があります。
洗い残しは皮膚トラブルを悪化させる原因にもなります。
洗い残しがないかを一度確認してから、浴室から出るようにしましょう。
身体の拭き方
入浴が終わり、浴室が出たら身体を拭いていきますが、この時も拭き残しに注意が必要です。
手指・足趾や陰部、脇の下などは拭き残しが起こりやすい部位です。
拭き残しがある状態では、気化熱によって体表面の温度が下がり、寒気を感じてしまいます。
50名の健常被験者について遠藤らが行った研究によれば、清拭直後に水分を拭き取ることで皮膚温の上昇が速まり、60秒後から180秒の間は、拭き取ったほうの皮膚温が高いという結果が出ています。
また、水分を拭き取った後は、速やかに綿毛布をかけて保温することも必要です。同研究によれば、体温の保持に最も有効なのは、清拭後30秒以内に被覆することだといいます。
湯船に浸かる時間
湯船に浸かることで、お湯に浸かっている部分には静水圧という圧力がかかります。
静水圧というのは水の重さのことです。
静水圧が身体の一部分にかかることで、静脈還流量が増加し血圧・心拍数・心拍出量が増加します。
この状態が長く続くことで、心臓への負担となる場合があります。
また、静水圧がかかっている状態から、急に湯船から出ると静水圧がなくなり血圧低下や心拍数が減少し、失神・めまいなどが生じることがあります。
そのため、高齢者では湯船に長時間浸からないよう気をつけ、急激に立ち上がらないように注意が必要です。
感染症に注意
入浴介助などで利用者さんと接触する際には手袋が必要となります。
嫌がる方もいるかもしれませんが、全利用者さんに対して行っていること・感染対策が必要な旨をしっかりと説明すればクレームにつながらないかと思います。
手袋の着用は、感染症にうつらない・うつさない、という意味合いがあります。
手袋着用時の注意点
手袋をした状態で入浴介助を行うことで、お湯の温度確認が適切に行えない可能性があります。
表在感覚鈍麻をしている方や適切に受け答えができない場合など、火傷してしまう可能性があります。
そのような場合には、温度計を用いてお湯の温度を測るのも一つの方法です。
転倒に注意
水場は滑りやすく、転倒してしまう可能性が高いです。
脱衣所が濡れている場合には、水分をすぐに拭き取るようにしましょう。
また、入浴直前は、歩行補助具の支えもない状態であるため、転倒の可能性が高くなります。
大腿骨頚部骨折の多くは転倒による受傷です。
転倒に注意して入浴介助を行っていきましょう。
入浴以外の洗体方法
清拭の方法
清拭は以下のような場合に行います。
- 医師から入浴を止められている場合
- 水につけてはいけない部分がある場合
- 浴室への移動が困難な場合
このような時は、清潔維持と全身観察を兼ね、ベット上での清拭対応とするのがいいでしょう。
熱めの湯(50 ℃程度)でかたく絞ったタオルを使い、顔、耳、首、上肢、胸、下肢、 背中、腰、陰部の順に拭いていきます。
足浴の方法
足は拭くだけの対応よりも、お湯の中に入れることができれば、少しでも入浴気分を味わうことができ、汚れも落ちやすくなります。
座位を安定させ、深めの容器に、はじめはぬるめの湯を入れ、足を浸していきます。
しばらくすると湯温が下がるので、少し熱めの湯をさし湯すると足元から温まります。
充分温めた後、石鹸でよく洗っていきます。
洗い終わった後は、指の間など水分が残りやすい部分に注意して、乾いたタオルで水分を拭きとっていきます。
まとめ
この記事では入浴介助で観察するべき8つのポイントについてご紹介しました。
普段とは異なる環境で利用者さんがどのような行動をとっているのか?など、普段との変化に気づくことが大切になります。
また、インシデントの多くは普段と異なる状況下・身体的・精神的負荷の高いときに生じます。
入浴介助はこの3つ全てが揃うため、細心の注意が必要になってきます。
ぜひ今回の内容を参考に入浴介助を行ってみてください。
参考文献
遠藤芳子他:温湯清拭による前腕皮膚温変化の測定―清拭直後に乾布で水分を拭き取る科学的意義―.山形保健医療研究.2.p41-44,1999.