デイサービスでの入浴介助や訪問入浴など、介護職員が利用者さんと接触する機会が多々あります。
そのときに手袋をする必要があるのかないのか疑問に思う方もいるかと思いますが、手袋はする必要があります。
この記事では入浴介助に手袋が必要となる理由や感染症対策の基本についてご紹介していきたいと思います。
皮膚が接するときには手袋が必要
入浴介助や排泄介助時など利用者さんと接触する際には手袋が必要となります。
嫌がる方もいるかもしれませんが、全利用者さんに対して行っていること・感染対策が必要な旨をしっかりと説明すればクレームにつながらないかと思います。
手袋の着用は、感染症にうつらない・うつさない、という意味合いがあります。
手袋着用時の注意点
手袋をした状態で入浴介助を行うことで、お湯の温度確認が適切に行えない可能性があります。
表在感覚鈍麻をしている方や適切に受け答えができない場合など、火傷してしまう可能性があります。
そのような場合には、温度計を用いてお湯の温度を測るのも一つの方法です。
入浴介助の目的に全身状態の確認がある
利用者さんの全身状態を確認する機会は入浴時しかありません。
普段生活している時には衣服を着ているため、手先や指先の確認程度しか行うことができません。
そのため、入浴時に腹部や背部、臀部などの状態を確認します。
特に臀部は褥瘡もできやすい部位のため、発赤がないか、擦過傷がないか、など細かく確認しておきましょう。
まだ創部がある場合には、創部から浸出液が出ていないか、発赤が生じていないかも確認できると良いでしょう。
このとき入浴前であっても手袋を着用する必要があります。
スタンダードプリコーションとは
スタンダードプリコーションは感染症の有無に関わらず全ての患者のケアに際して普遍的に適用する予防策とされています。
他者の血液、体液(唾液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液などの全ての体液)、汗を除く分泌物、排泄物、あるいは傷のある皮膚や、粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで、患者及び医療従事者における感染症の危険性を減少させる予防策とされています。
大切なことは、「全ての患者」という部分です。
「感染症の検査結果がまだ出ていなくて、感染しているかどうかわからない。」
という状況も多々あります。
このような状況下でスタンダードプリコーションを遵守しなかった場合、感染症拡大の可能性が出てきてしまいます。
そのため、「全ての患者」という部分が大切になってきます。
また、手袋をすることだけが予防ではありません。
個人防護服の着用や手指消毒も予防策の一つとされています。
手指衛生を行うタイミング
手指衛生は全ての医療行為の基本となり、感染対策に対して一番大きな役割を果たすとされています。
手洗いについてはWHOで以下のように定義されています。
- 患者に触れる前
- 清潔・無菌操作の前
- 患者に触れた後
- 患者周辺の物品に触れた後
介護施設などでは、シーツ交換後やベットサイドの掃除後、検温前後などでも必ず行う必要があります。
なぜ手指衛生を行う必要があるのか
手指衛生を行う目的は、手を介しての医療関連病原体の伝搬を減少させるためです。
医療関連病原体の伝搬は、直接及び関節接触、飛沫、空気と一般媒介物を介して起こるとされています。
WHOの報告では、不十分な手指衛生を介して医療関連感染や医療関連感染のアウトブレイクに関連していた、と報告をしています。
手洗いがされにくい部位
an evaluation of handwashing techniquesでは手洗いがされにくい部位を報告しています。
かなり普及してきているので、聞いたことがある方も多いかと思いますが、もっとも手指衛生を損ないやすいのが、親指に後ろ側とされています。
また、手指の間や指先なども洗い損ねやすい部分であるため、意識して手洗いなどを行う必要があります。
手洗いの方法
日常的手洗い
日常的手洗いの目的は「汚れ及び一過性微私物の除去」になります。
石鹸と流水を用いて10~15秒以上洗う必要があります。
また留意点として、以下の3つが挙げられます。
- 10~15秒間、手指の表面を全てこすり洗いをする
- 母指、爪先、手首、背面は洗われにくい
- 石鹸は流水で十分にすすぎ流す
手指消毒
手指消毒の目的は「一過性微生物の除去や殺菌及び皮膚常在菌を著しく減少し、抑制効果を持続」させることになります。
速乾性擦り込み式アルコール製剤1プッシュ(3ml)を用いて10~15秒以上、手指を擦ります。
日常的手洗いと同様で、母指、爪先、手首は擦り込み忘れやすいので注意が必要です。
手袋の使用
手袋の使用に関してもWHOで以下のように報告されています。
- 手袋の使用は、いかなる手指消毒あるいは手洗いに取って代わるものではない。
- 血液あるいはその他の感染性のある物質、などに触れるときに手袋を着用する。
- 1人以上の介入・介助に同じ手袋を着用をしない。
- 手袋を着けている時、汚染した身体の部位から他のもう1つの部位に移動するなら、患者介入・介助中に手袋を交換するか外す。
とされています。
介護施設での例を挙げると、
- 傷口の確認時(入浴介助時)
- 体液に触れる可能性があるとき(入浴介助・排泄介助・おむつ交換時)
- 汚染物に触れるとき(おむつ交換・排泄介助・シーツ交換時など)
- などが挙げられます。
また、傷口に軟膏を塗るときや歯磨きの介助を行うときにも手袋の着用は必要になってきます。
マスクの着用も感染症対策となる
患者・利用者の唾液から感染する可能性もありますし、病院・介護職員が感染させてしまう可能性もあります。
そのため、マスクの着用も必要になってきます。
介護施設などでは利用者さんに常にマスクを着用していてもらうことは大変かもしれませんが、他の利用者さんや職員への感染を防ぐなど、大切なことになります。
また、適切な着用方法も必要になってきます。
マスクは鼻と口を覆うことで、その役割を果たしてくれます。
息苦しさなどから外してしまう方や顎下に移動させてしまう方、一度外したマスクを再着用される方などがいますが、本来の役割を果たしていないため、注意が必要です。
まとめ
この記事では入浴介助には手袋が必要となる理由や感染症対策の基本についてご紹介しました。
病院や介護施設などでは感染症対策がとても大切となります。
そのためにも、利用者さんの入浴介助などを行う際には、その都度手袋の着用をする必要があります。
毎回着用するのは大変ですが、感染症にかからない・うつさないということが重要になります。
手洗い・消毒は忘れやすいため、意識的に取り組む必要がありますので、少し意識してみてくださいね。
また、ガイドラインは適切な手洗い方法やこれまでの手洗いに関する報告などについて詳しく記載されているため、病院・介護施設で働いている場合には一度目を通しておくといいと思います。
参考文献
世界保健機関 医療における手指衛生ガイドライン:要約
an evaluation of handwashing techniques