入浴は人が人らしく日常を営む上で最低限の行為であり、尊厳や生活の質(QOL)を保つためにも必要となります。
入浴することで、全身の血流が改善され、筋疲労を改善させ、全身のリラックス効果を得ることができます。
入浴介助を行ってくれる介護保険サービスには訪問入浴介護と訪問介護の2つがあります。
しかしどちらも入浴介助を行ってもらえるため、両者の違いが不明瞭な場合があるかと思います。
そこで、この記事では訪問介護で行ってもらえる入浴介助についてや訪問入浴介護と訪問介護の違いについてご紹介していきたいと思います。
訪問入浴介護とは
訪問入浴介護は、名前の通り、入浴介護のために利用者さんの自宅に訪問するサービスです。
一般的には看護師1名と介護職員2名体制であることがほとんどです。
普段入浴することができない・人の手を借りないと入浴できない場合や寝たきりの方でも安心して入浴することができます。
主な業務内容
訪問入浴介護は入浴介護を主たる業務としています。
入浴に関する以下のようなサービスも提供しています。
入浴前後の健康チェック
入浴前後で血圧の変動が生じる可能性があります。
そのため、急変時のために看護師も同行しています。
洗体・洗髪
寝たきりの方などは自力で洗体・洗髪を行うことができません。
そのため、介護職員が体を洗ったり、頭を洗ったりします。
着替えの介助
洗体・洗髪に比べると自力でできる方が多いですが、靴下を履くなど、一人では大変な着替えを介助します。
入浴の準備・片付け
訪問入浴介護では浴槽を自宅内に運び入れます。
そのため、浴槽を運び入れ、お湯を張るなどの準備が必要になります。
事業所によっては、フットケアや保湿ケアなどを行ってくれる場合もあります。
フットケアについて
フットケアは足指や足の爪のケアを行うことを言いますが、フットケアが十分に行われていないと感染症や爪の変形をもたらし、痛みによる歩行困難感、転倒などを誘発するとされています。
また、フットケアを行うことが転倒予防につながるといった研究もあり、高齢者におけるフットケアは重要視されています。
定期的な週1回のフットケアでも足のトラブル改善に効果があることが報告されています。
訪問入浴介護サービスを受ける場合には、フットケアサービスがある事業所を選ぶのも一つの選択基準になります。
訪問介護とは
訪問介護とはホームヘルパー・ヘルパーと呼ばれる訪問介護員が自宅に伺い、利用者さんの身体介助や生活援助、通院支援などを行います。
ホームヘルパー・ヘルパーと通称で呼ばれることが多いですが、介護保険法では「訪問介護員」が正式名称です。
訪問介護員の仕事内容
訪問介護員の主な仕事は以下の通りです。
- 身体介助
- 生活援助
- 通院援助
身体介助
身体介助とは、利用者さんの身体に直接触れる介助全般のことを言います。
寝返り・起き上がりなどの起居動作、
立ち上がり・立位保持、歩行介助などの基本動作であるADL(日常生活動作)の介助を行います。
利用者さんの自立支援・重度化予防のために行う重要なサービスとなっています。
基本動作は何か目的があって行うため、その先の動作も介助していきます。
例えば排泄介助や食事介助、移動・移乗介助などがあります。
身体介助は利用者さんによって内容が異なります。
起居動作から立ち上がり・移乗動作まで介助が必要な方もいれば、立ち上がりまでは一人でできるけど移乗動作は介助が必要な方もいます。
そのため、利用者さんの身体能力に合わせた介助を行うことが大切になってきます。
生活援助
生活援助とは利用者さんの日常生活に必要な家事などの援助のことを言います。
あくまでも利用者さんの日常生活に必要な援助なので、本人以外の食事を作る・来客のもてなしを行うなどは生活援助のサービス外になります。
具体的には、掃除や洗濯、利用者さんのご飯の支度、買い物などが該当します。
通院援助
通院援助とは利用者さんが病院などに行く際に付き添いを行うことです。
通院援助ではありますが、行政機関にいく場合などにも該当します。
車を使う場合には車両の乗降介助やサポートなども行います。
しかし、介護保険上、病院の待合室や診察室まで付き添うことはできません。
病院の正面玄関までが訪問介護員のサポート範囲内となっています。
訪問介護員による入浴介助
訪問介護でも入浴介助を行っていますが、訪問介護員が1名で自宅にある浴槽を利用して入浴介助を行います。
そのため、利用者さんもある程度動くことができる方が対象になります。
訪問入浴介護と訪問介護どちらがいい?
訪問入浴介護と訪問介護での入浴介助、どちらを選ぶべきなのか、悩みむことがあると思います。
- 自宅浴槽が狭く、訪問介護員1名では介助が難しい
- 寝たきりなど身体機能が著しく低下している
- 体調変化がある
一例ですが、上記の場合には訪問入浴介護を利用するのがいいかと思います。
- 訪問介護員1名で介助できる
- 身体機能がある程度保たれている(体を洗うことができる、浴槽をまたぐときに軽い介助を要するなど)
- 通所サービスが苦手
上記の場合には訪問介護を利用するのがいいかと思います。
また、訪問介護員が入浴介助を行う場合には、利用者さんができることは利用者さんに行ってもらうことが大切です。
機能回復を図る
入浴介助をはじめとした身体介護では、その人の残存機能をいかに上手く働かせることができるかが大切になってきます。
介護者側が全介助で動作を行うことはできますが、それでは利用者さんの身体機能回復は望めません。
軽介助で立つことができるのに、全介助で立ち上がり動作を行っていては、むしろ利用者さんの機能低下を招いてしまう可能性があります。
どのような動作も過介助にならないように気をつけられるといいと思います。
訪問入浴介護を利用できる条件
訪問入浴介護を利用できる方は要介護1~5の認定を受けている場合かつ、主治医から入浴の許可を得ている場合のみです。
まとめ
この記事では訪問介護で行ってもらえる入浴介助についてや訪問入浴介護と訪問介護の違いについてご紹介しました。
入浴介助に特化しているのが訪問入浴介護サービスになります。
利用できる方は要介護である必要がありますが、要支援でも介護予防訪問入浴サービスを受けられます。
訪問入浴介護を受けてみたい場合にはケアマネに相談することで可能になる場合があります。
浴槽を運び入れるため、時間がかかってしまうので、簡便に入浴を行いたい場合には訪問介護員による入浴介助がおすすめです。
参考文献
新井香奈子,平間美江子,田川 由香.要介護高齢者に対するフットケアの効果.園田学園女子大学論文集 第 53 号(2019. 1).