スキル

【入れ歯の口腔ケア】入れ歯のお手入れ方法とコツ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

高齢者の多くが使用している入れ歯。入れ歯の役割や種類を紹介します。
介護のなかでは口腔ケアは効率的に行いたいものですよね。

汚れやすいポイントと、口腔ケアの手順を説明します。
自己流になってしまいがちな入れ歯洗浄や保管方法での注意点も詳しく解説!
ぜひ、参考にしてみてください。

【目次】
1.入れ歯って何だろう?
2.入れ歯で汚れやすいところは?
3.入れ歯の口腔ケア手順
4.気を付けたいこと
5.まとめ

入れ歯って何だろう?

入れ歯の役割

入れ歯は義歯(ぎし)ともいいます。
高齢になると口腔機能の衰えとともに、入れ歯を利用する人が増えていきます。

入れ歯は食べ物をかみ砕く食事には必要不可欠なものです。
それ以外にも役割があるのを知っていますか?

【入れ歯の役割】
・噛みやすくなり食生活が豊かになる
・発音をはっきりさせて、会話を楽しむことができる
・見た目に自信がでる
・口元に張りが出て、若く見える

入れ歯は咀嚼だけではなく、人と話したいと思う気持ちも支えているのですね。
また、入れ歯を綺麗に保つことは誤嚥性肺炎を減少させることにもつながります。

入れ歯の種類

代表的な種類を紹介します。

総入れ歯(総義歯)

自分の歯がすべて無い場合に使う入れ歯です。
義歯床という土台に人工の歯が埋め込まれ作られます。
義歯床は歯を支え、上あごや歯肉との接着を密にして安定させる部分です。

部分入れ歯(局部義歯)

失った歯が数本で、残っている歯がある場合に使う入れ歯です。
失った歯の場所や本数によって入れ歯の形が変わり、残っている歯に金具をひっかけることにより固定します。

金具部分が無いタイプもあります。
残存歯部分に開いた穴を歯列にはめるのが特徴です。

入れ歯で汚れやすいところは?

口腔ケアは、利用者さんの口腔内をチェックできる絶好のチャンスです。
入れ歯に注目しがちですが、入れ歯を外した状態の口腔内も観察してみましょう。
入れ歯の付け心地を利用者さんに質問することで、入れ歯の具合を知ることもできます。

ぜひ、試してみてください。

ここをチェックしてみよう

・金具や義歯床があたって、粘膜が赤くなっていないか
・入れ歯を支えている部分の歯に虫歯や、ぐらつきがないか
・会話中や食事中に外れやすい
・入れ歯の装着時に痛みがある
・汚れが残り、口臭がある

「あれ?ちょっと合っていないかもしれないな?」と、思うことがあったら歯科医に早めに相談してみると安心できますね。

入れ歯があると汚れやすい部分

・上あごや歯茎(はぐき)にあたる部分
・歯間
・入れ歯のくぼみ
・金具
・入れ歯の端っこ

歯周病の原因である細菌は肉眼では確認することができません。
見た目は汚れていなくてもブラッシングをしましょう。
触ってザラザラしていたり、ヌルヌルしていたら細菌が残っている可能性があります。

入れ歯の口腔ケア手順

あると便利な義歯お手入れグッズ

・入れ歯専用のブラシ
・スポンジまたはガーゼ
・入れ歯洗浄剤
・洗面器
・使い捨て手袋

口が乾いている場合

そのまま無理に義歯を外すと粘膜を傷つけ、痛みや出血の原因になります。

口腔乾燥があるときは、指に保湿剤をつけ口腔内に塗布するか、水気を切ったガーゼや口腔ケアスポンジを用いて口腔内を湿らせましょう。

外し方について

【総入れ歯】
・前歯の部分をやさしくつかみ、垂直方向に少し動かし隙間ができたらゆっくり外す
例)上あごの入れ歯:上に引きあげる

【部分入れ歯】
・金具部分に指をやさしくかけ、ゆっくり外す

磨き方

【入れ歯】
①入れ歯を外す
②流水をかけながら入れ歯の汚れを指でざっと洗い流す
③ブラシで細かい部分やヌメヌメしている部分を磨く

※1日1回は入れ歯専用の洗浄剤につける

【口腔内】
①歯のない部分の歯肉や上あご、頬の裏側など口腔ケアスポンジなどで清拭する
②くちをゆすぐ、または、うがい

入れ歯専用のブラシは、普通の歯ブラシより入れ歯を傷つけにくく持ちやすい形状です。
細部まで磨きやすいメリットがあります。

入れ歯を洗う際に、誤って洗面台に落として傷をつけてしまったり排水溝に落としてしまうことがあります。
洗面器の上で作業をすると安心ですね。

入れ歯洗浄剤は、手でのお手入れだけでは落としきれない細菌を洗浄することができます。
1日1回は洗浄剤に浸して清潔を保ちましょう。

装着のしかた

指でやさしく、ゆっくり押して装着します。強く噛んで装着することは控えましょう。

1日何回すればいい?

食後毎や就寝前に行うのが理想的です。
在宅での介護や、介護施設ではどうしても一人ひとりの口腔ケアに長い時間を割けない日もあると思います。
そんなときは、流水でヌルヌルを落とすだけでも細菌の減少につながりますので試してみませんか?

気を付けたいこと

これはやめておこう

・普通の歯ブラシは、入れ歯の表面に細かな傷をつけてしまいやすい
・熱湯での洗浄は変形してしまう
・研磨剤が入っている歯磨き粉は傷がつきやすい
・漂白剤は変色してしまう
・長時間の乾燥は変形につながるので避け、水に浸して保管する
・入れ歯だけ洗浄し、口腔内のケアは何もしない

日中の入れ歯の装着

人間は無意識のうちに、顎の位置が姿勢や足腰の力にも影響しているといわれています。
そして、装着していない時間が長くなるほどに歯の向きやかみ合わせなどにも変化があらわれてしまいます

利用者さんに苦痛がなければ、目覚めて活動している時間帯は入れ歯はつけたまま過ごすのが望ましいです。
どうしても装着できない場合は、義歯に不具合が生じていることも考えられます。歯科医師に相談してみましょう。

入眠中の入れ歯の装着

数時間、眠るときは入れ歯を外して水の中に浸し保管しましょう。
ただし、装着しておいた方がよい場合もあるので歯科医師や歯科衛生士に相談もしてみましょう。

寝た姿勢のままでの入れ歯の着脱

総入れ歯も注意が必要ですが、特に小さな部分入れ歯は介助者の手から落ちると喉に落ちてしまう可能性もあります。

座位や横向きに寝る姿勢をとるか、どうしても仰向けの場合は慎重に着脱することに注意を払いましょう。

入れ歯の安定剤について

会話や食べると入れ歯がパカパカしてしまい、外れやすい。
または、上あごや歯肉と入れ歯の間に食べ物が挟まって傷みがある場合もあります。
その際、密着させるために安定剤を使う場合があります。

しかし、効果的な面もありますが装着感に違和感があって不快に感じることもあるようです。
また、しっかり洗浄しないと安定剤を除去しきれず不潔になる場合もあります。

「安定剤を使わないと入れ歯が安定しない」のは、不具合がでていることを意味します。
入れ歯の状態を歯科医師や歯科衛生士にチェックしてもらい、しっかり合う入れ歯を使いましょう。

まとめ

合わない入れ歯の使用は食べにくくなるのはもちろん、発音や審美面にも影響してしまいます。
そして、不衛生な入れ歯の使用は誤嚥性肺炎の原因にもなるため、日々の入れ歯ケアはとても重要です。
入れ歯の正しい口腔ケア方法を知り、利用者さんの食生活や全身状態の維持をサポートしていきましょう。

【参考資料】
松阪地区歯科医師会:要介護者のための口腔ケアの手引きhttps://www.dental-mie.or.jp/hatokutinokenkou/pdf/kea.pdf
(2011)日本訪問歯科協会:感染症と誤嚥性肺炎の防止策https://www.houmonshika.org/oralcaremanual/m25/
日本訪問歯科協会:入れ歯をはずした後のお口のケアhttps://www.houmonshika.org/oralcare/c38/
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所:入れ歯(義歯)のケア方法https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/article/care/03.htm

  • このエントリーをはてなブックマークに追加